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4ターン目:失策

【ゲームの流れ】

①参加者は0から100の中から整数を1つ選ぶ。

②目標値=(全員が選んだ数字の平均)×0.8 に最も近い数字を選んだ人が1ポイント獲得。

③ ①②を6ターン繰り返し、最もポイントが高い人が勝利。

④ただし目標値が16以下(16含む)となったらバースト。

 そのターンでゲームは終了し、最もポイントが低い人が勝利。



【参加者】

・理想の上司    仏井正蔵(部長)

・とりあえず様子見 流矢重軟(課長)

・ゲーム理論の人  蛇島理人(課長)

・株大好き     桐株金治(課長)

・巻き込まれた若手 若葉萌



【現在までの結果】


ターン 1  2  3

仏井  35 33 40

流矢  40 50 50

蛇島  43 77 33

桐株  35 60 10

若葉  30 50 45

目標値 29 43 28


仏井 0ポイント

流矢 1ポイント

蛇島 1ポイント(win!)

桐株 0ポイント

若葉 2ポイント



=======================



<Side:若葉萌>


(えぇ……今度は下がるんだ)


 3連続得点を狙っていた若葉はその結果に思わず顔をしかめた。他の参加者が選んだ数字が予想のはるか下だったのである。


 3ターン目、彼は45を選んだ。目標値がそのあたりになると考え、ポイントを得るつもりでその数字を選んだのだ。


 最下位戦略には当然若葉も気づいていた。そして、各人が0ポイントを維持するために大きい数字を選ぶことで、目標値はまた50周辺になると予想していた。


 最下位(0ポイント)は3人。目標値は16のはるか上。バーストが起こることなどそうそうないと考えた彼は、自身の勝利を確実なものにするために、できればあと1ポイント手に入れたいと思っていたのだ。


 結果はこの有様であるが。


(蛇島課長と桐株課長、数字の上下激しすぎだろ)


 蛇島は43→77→33、桐株は35→60→10。もはや結託してゲームを荒らしているとすら思える打ち筋である。他の参加者が翻弄されているのは、間違いなくこの2人が原因だった。


(どういう狙いかは分からないけど、蛇島課長が得点したのは悪くないな。これで最下位は仏井部長と桐株課長だけになった。バーストになる可能性はさらに低くなったな)


 これはもしや勝てるかもと、若葉はこの時はまだそう思っていた。




<Side:蛇島理人>


(ふふ、狙い通り目標値が下がりましたね)


 急上昇した目標値が今度は急降下した。その結果に蛇島はしめしめとほくそ笑んだ。なぜなら、目標値が高い事は蛇島にとって都合が悪かったからである。


 彼の戦略は最下位戦略。ただし流矢のような受け身の最下位戦略などではない。大きな数字を選びながら0ポイントを維持する点は同じだが、バーストを待つという部分が流矢と異なっていた。


 彼の狙いは、目標値が十分下がったタイミングで選ぶ数字を0に切り替え意図的にバーストさせるという攻撃的なものであった。


 ただし最下位戦略にはある大前提が存在した。一つ目は最下位である事。そして二つ目は、目標値が下がり続ける事である。


 自分以外の参加者がポイントを得るために数字をあてに行く。結果目標値が毎ターン下がっていく。この想定があるからこそ最下位戦略が成り立つのだ。


 しかし蛇島以外にも最下位戦略を取る者がいた。大きい数字を意図的に選ぶ者が複数いれば、目標値は下がらない。


 そのため蛇島は、何としてでも目標値を引き下げたかった。ゆえに3ターン目は77から33へと解答を一気に下げたのである。


 得点するためには他人が選ぶ数字の平均を予想してそれより少し小さい数字を選ぶ必要があるが、小さすぎる数字を選んでも得点はできない。蛇島は、0ポイントを維持するために大きい数字を選ぶのではなく、小さすぎる数字を選ぶことにしたのだ。


 また蛇島の狙いの実現を後押しした要素に、桐株の存在があった。蛇島は43→77→33、桐株は35→60→10とこれまで数字を選んで来た。数字の違いはあれど、桐株もまた同じ考えだったのである。


 結果、目標値は蛇島の目論見通り下がった。ただ一つの想定外を除いて。


(得点、してしまいましたねえ……)


 蛇島は自分の戦略が露呈することを嫌っていた。一度0を選んでしまえば今後も0を選ぶことを警戒されてしまう。そう考え、さりげない数字を選ぼうとしてしまった。


 その結果、予想よりも目標値が低かったために、彼は最下位ではなくなってしまっていた。致命的である。最下位戦略は破綻した。


(おのれ、こうなればここから2ポイント取得して逆転する! せめて1ポイント。そうすれば1位に並べる!)


 現在1位の若葉萌の点数は2ポイント。残り3ターンでの逆転の目はまだあった。


(お願いですから若葉さん、これ以上得点しないで下さいよ?)


 彼はそう祈りながら数字を選んだ。





『えー、はい。4ターン目の結果はこちらでーす』


ターン 1  2  3  4

仏井  35 33 40 40

流矢  40 50 50 38

蛇島  43 77 33 46

桐株  35 60 10 20

若葉  30 50 45 25

目標値 29 43 28 27


仏井 0ポイント

流矢 1ポイント

蛇島 1ポイント

桐株 0ポイント

若葉 3ポイント(win!)




(おっふ……)


 またもや若葉の得点。最悪の結果に、蛇島は天井を仰いだ。




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