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3ターン目:幸運

【ゲームの流れ】

①参加者は0から100の中から整数を1つ選ぶ。

②目標値=(全員が選んだ数字の平均)×0.8 に最も近い数字を選んだ人が1ポイント獲得。

③ ①②を6ターン繰り返し、最もポイントが高い人が勝利。

④ただし目標値が16以下(16含む)となったらバースト。

 そのターンでゲームは終了し、最もポイントが低い人が勝利。



【参加者】

・理想の上司    仏井正蔵(部長)

・とりあえず様子見 流矢重軟(課長)

・ゲーム理論の人  蛇島理人(課長)

・株大好き     桐株金治(課長)

・巻き込まれた若手 若葉萌



【現在までの結果】

ターン 1  2

仏井  35 33

流矢  40 50

蛇島  43 77

桐株  35 60

若葉  30 50

目標値 29 43


仏井 0ポイント

流矢 1ポイント(win!)

蛇島 0ポイント

桐株 0ポイント

若葉 2ポイント(win!)



=======================



<Side:若葉萌>


(あっぶな! 今のはマジでヤバかった!)


 若葉は自身の運の良さに胸をなでおろした。


 その理由は、“同着だがなんとか連続正解できてよかったから”などではない。


 “うっかり正解()()()()()()が、自分以外にも得点した者が居てよかったから”である。


(もし単独正解してたら詰んでたかも)


 流矢と若葉はともに50を選び、その結果2人ともポイントを獲得した。単独正解ではなく同着。そのことが自身の命運を分けたと若葉は考えていた。


 なぜか。


 それは、若葉がルール④の意味を正しく理解できていたからである。



④ただし目標値が16以下(16含む)となったらバースト。

 そのターンでゲームは終了し、最もポイントが低い人が勝利。



(わざわざ“16含む”って強調されてたおかげで気づけた。この16の意味を。まったく、本当によく考えられたゲームだ)


 バーストの基準は15でも17でもなく16。これの意味する所とは。


(5人中4人が0を選んだら、残りの1人が100を選んでも平均は20。目標値は0.8倍して16! 最下位4人が結託すれば、1位の負けが確定するようにこのゲームは作られているんだ)


 初手2連続得点による単騎独走。それこそがその者にとっては最大の窮地となる事を彼は理解していた。


(だって2ポイント差がつくと、もう追い越すのはかなり難しいからね)


 このゲームは全6ターンである。今回のような例外を除けば1ターンごとに1人づつポイントが与えられ、最終的には合計6ポイント。この6ポイントを5人で奪い合う事になる。


 残りは4ターン。(0ポイント)の参加者が若葉に追いつくためにはその4ターンで2回勝つ必要がある。追い抜くなら3回だ。


 そのため2点差からポイントで逆転するのは非常に難しいと言わざるを得ない。となれば、参加者の意識は当然、ルール④(バースト)による逆転へと向かう。


(だから2ターン目は得点しないように50を選んだんだけど、まさか目標値が上がるなんて。流矢課長も50を選んでくれてたおかげで首の皮一枚繋がったからよかったけど)


 流矢もポイントを得た事で、最下位(0ポイント)は3人に減った。若葉が引きずりおろされる可能性はかなり低くなったと言えるだろう。


(でも、なんで他の人も大きい数字を選んだんだろう?)





<Side:流矢重軟>


 流矢もまた、このタイミングでのポイント獲得は全くの想定外であった。


(くっ、まさか得点してしまうとは……)


 1ターン目を様子見に費やした事でゲームの理解度を深めた彼は、このゲームは最下位の方が有利であると結論付けていた。


 ポイントを得るためには他人より小さい数字を選ばなければならない。ターンが進むごとに目標値は下がり続け、いずれ16以下(バースト)となると彼は予想したのである。


 得点しない程度の大きさ数字を選びながら最下位を維持し勝手にバーストするのを待つ。その戦略に従い、彼は得点しないために十分大きい数字を選んだ、つもりであった。


(最下位狙いが露見しないようにそこそこの大きさに留めたのは中途半端だった。今思えば70位は選んでおくべきだった)


 彼は桐株と蛇島の選んだ数字を見て後悔した。桐株は60を、蛇島は77を選んでいる。


(間違いなくあの2人も最下位からの逆転狙いだ)


 あるいは3人で協力する展開がありえたのかもしれない。しかし今となってはもう遅かった。


 なぜなら、このゲームは一度得点してしまうと最下位に戻る事が難しいからである。残り4ターン。最下位は仏井・桐株・蛇島の3人。彼らが都合よく1ポイントずつ得点しなければ流矢が最下位に並ぶ事は無い。というより桐株・蛇島が最下位戦略を取っている以上あり得ない。


(バーストでの逆転はもう無理だ。ならばポイントで逆転する以外に道はない)


 流矢は戦略の変更を余儀なくされた。そのため、次の目標値を予想するためにそれまでの結果を再確認した。


ターン 1  2

仏井  35 33

流矢  40 50

蛇島  43 77

桐株  35 60

若葉  30 50

目標値 29 43


仏井 0ポイント

流矢 1ポイント(win!)

蛇島 0ポイント

桐株 0ポイント

若葉 2ポイント(win!)



(仏井部長はさっきの結果に驚いていたな。あの人だけだ。素直に前回より小さい数字を選んだのは。だがさすがに今回で最下位戦略に気づいたはず)


 流矢は、最下位戦略が今後も多数派を占めると予想した。


(ならば、目標値は43.2から大きく変わらないはず。むしろ増えるのではないか?)


 流矢同様うっかり得点しないように、さらに大きい数字を選ぶ参加者が出て来ることは十分ありえると彼は考えた。


(50だ。さっきと同じ50。もう一度ポイントを得て、まずは若葉に追い付く!)





 そうして迎えた結果発表。



『はい、それでは3ターン目の結果はこちらです、どん!』


ターン 1  2  3

仏井  35 33 40

流矢  40 50 50

蛇島  43 77 33

桐株  35 60 10

若葉  30 50 45

目標値 29 43 28


仏井 0ポイント

流矢 1ポイント

蛇島 1ポイント(win!)

桐株 0ポイント

若葉 2ポイント



 目標値は、大暴落していた。

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