第五話、お嬢様は、街のうわさでもちきりになられたご様子でございます。
櫻子お嬢様は初めての敵、エリアボス、”ホーンラビット・サウザンドレギオン”に撲殺されました。
気を取り直してゲームを続けるご様子でございます。
◇
「も、もう一度ですわ」
同じ場所に行った。
「ひ、ひいいいい」
再度、ウサギの洪水に飲み込まれる。
ウサギが何回か私を攻撃すると光の粒子になった。
”殴った相手も痛いのだ”(N、A、I)の効果でダメージを反射しているのである。
しかし、全てのウサギをさばききれず、私は光の粒子になった。
「お、恐ろしいゲームですわ」
ウ、ウサギが。
視界を埋め尽くすウサギが。
「ぼ、防御力っ、防御力ですわっ」
あれだけの数で囲まれては、逃げることなど無理でしょう。
装備品の店に行きましょう。
近くの店に飛び込んだ。
「この原動機付甲冑(MA)を、最大まで頑丈にしてくださいましっ」
店の店主に叫んだ。
「ほほほうう」
「これは、これは」
女の店主がにやりと笑う。
ここは、NPCの店ではなく、PCの店だった。
彼女は生産系のトッププレイヤー、”シズク”。
腕はいいが、きわどい趣味のものしか作らないと有名だった。
「予算は?」
「これを全て、つかって下さいまし」
手持ちのDPすべてを差し出した。
計、二千万くらいあった。
鈍竜の新品が、百万DPくらいだ。
二十台は買えるDPである。
前回の収入が入ったことを櫻子は気づいていない。
「ははははは」
「いいよ、いいぜえ」
「でもよ、武装とかはいいのかい?」
押し寄せるウサギが頭をよぎる。
「とりあえず防御力を」
「わかったぜ、甲冑(MA)置いてきな」
「完成はゲーム内時間で一週間だ」
現実時間で二日強と言うところである。
「あんた、名前は?」
「黒、いえ、”クロス”です」
「そっか、フレンド登録しとこうぜ」
「わかりましたわ」
お互い登録した。
「出来たら連絡するぜ」
パシュウウ
MAの胸部が開く。
私は鈍竜を脱いだ。
すぐに普段着用の白いワンピースに変わる。
「うおっ、あんた、えらいべっぴんさんだったんだな」
身長175センチのものすごい美人が立っていた。
「?、少し街を見回ってからログアウトしようと思いますわ」
「!!、あんた、その格好で……いやいいんだ」
「?」
◇
その日街は、櫻子お嬢様(正体不明のものごっつい美人)のうわさでもちきりになられたのでございます。