第三話、お嬢様は、空腹でお倒れになられたご様子でございます。
ズシュン
ズシュン
櫻子お嬢さまは街道を歩いておられます。
[チュートリアル、隣の町まで行ってみよう]
を進行中のご様子。
目的地を示すマーカーに従って歩いておられました。
◇
青い空。
白い雲。
いい天気ですわ。
チチチ
街道沿いは林が続き、鳥の鳴き声が聞こえる。
「気持ちいいですわねえ」
ズシュン
ズシュン
隣の町まで半分くらい歩いた。
「あらっ」
櫻子お嬢様の纏う重原動機付き動甲冑(MA)、”鈍竜”に警告灯が光る。
自動で、ステータス画面が立ち上がった。
状態異常?
「……空腹……?」
いわれてみれば、お腹がすいたような。
VRゲーム内で、空腹や痛みはかなり少なく設定されている。
例え巨大なハンマーで吹き飛ばされても、”マッサージチェア”レベルの痛さである。
[空腹]も警告されるまで気づかなかった。
「……食料……」
最初の街で食べた肉の串を思い出した。
「確か……」
空中に指先で操作する。
インベントリを開いた。
「まあ、当り前ですわね」
空っぽだ。
「帰りますわ」
Uターンして歩き出した。
空腹値の設定は、きっかりHPと同じに設定されている。
隣の町まで”半分”歩いて空腹値が零になった。
あとは、HPがじわじわと減っていく仕様だ。
進んでも帰っても、食料を買っていない限りHPは零になるのだ。
「門が見えましたわああ」
辺りが光に包まれた。
◇
櫻子お嬢様が[空腹]により、HPが0になりました。
櫻子お嬢様は、光の粒子となって消えてしまいました。
◇
[チュートリアル、食料の重要性]が終了しました。
ディスカバリーポイント(DP)を50,000入手しました。
[初めての死亡]
ディスカバリーポイント(DP)を10,000入手しました。
私は始まりの場所に帰って来た。
「肉の串はいらんかね?」
屋台の人が声を掛けてくる。
「…………」
私は何とも言えない表情でそれを聞いた。
◇
櫻子お嬢様はこの世界で初めて死亡されたのでございます。