第二百四十二話、お嬢様達は、密猟者を助けるご様子でございます。
シベルア雪原も半ばをこえたお嬢様達と外輪雪上艦。
大型のブリザードである、”コキュートス”は、人工的に発生させてられていたようでございます。
どうやら、さらに大きなブリザード、”冬将軍”に隠された移動要塞都市、”ドロンジョースカヤ”が発生させていたようでございますね。
ルシア製の、気象操作兵器、と言うところでございましょう。
レインメーカーの操る気象操作用のナノマシンで、冬将軍が晴れ正体が判明したのでございます。
無事、コキュートスの発生する地域は過ぎたのでございますよ。
◇
[メーデー、メーデー、武装艦に襲われている]
[だれか助けてくれえ]
レントと栞子の乗った群青色の飛行艇、”水無月”の無線から聞こえてきた。
「救助要請だっ」
レントだ。
後席から身を乗り出すように栞子が双眼鏡で周りを見渡す。
「10時の方向でござるよっ」
レントが素早く機首を向けた。
ドオン
大砲の音とオレンジ色の光。
「あそこだっ」
視界の先には、白い戦艦の追われる茶色く古い戦艦。
白い戦艦が大砲を撃っていた。
オレンジ色の丸い塊が茶色い戦艦に当たる。
バキイ
痛んでいた装甲に命中しはじけとんだ。
[メーデー、メーデー]
ひきつづき、救助要請は出ていた。
[こちら水無月、救助要請を受信]
[攻撃を受けている艦あり]
[助けるでござるよっ]
レントと栞子が、無線で”フォルクラム”に伝える。
[リンクスだ、わかった、そちらに向かう]
[了解っ]
「シオリコッ、キャノピーを閉じて、シートベルトを締めて」
レントが後席に叫ぶ。
「わかったでござる」
ガチャリ
栞子が後ろに下げられていた、風防を両手で前にスライドさせて閉めた。
そのあと三点式のシートベルトをつける。
「いけるでござるっ」
「いくよっ」
レントが鋭く操縦管を倒す。
ヒラリ
群青色の飛行艇が機体をひねらせながら急降下した。
一旦、砲撃を繰り返す白い戦艦の真上を、鼻先をかすめるようにフライパス(飛び越える)。
白い戦艦の艦橋の前で、翼を左右に振った。
「警告だっ」
――攻撃をやめろ
レントが叫ぶ。
タタタタ
白い戦艦にいた兵士からマシンガンで撃たれた。
「撃たれてるでござるよっ」
栞子が言った。
「ふんっ」
レントがスロットルレバーを大きく操作。
ズドオオン
アフターバーナーを吹かす。
強烈なジェット炎で、銃を撃っていた兵士を甲板に押し倒した。
飛行艇、”水無月”が一度白い戦艦から離れた。
「警告はしたぞっ」
レントが、操縦桿のセレクトレバーを、”安”から”火”に変える。
素早く機体をひるがえし、再び白い戦艦の後ろへ。
「撃つよ」
「了解でござる」
バウウウウウ
操縦席の左側の後ろから、けたたましい発射音とともに。バルカン砲の弾が吐き出される。
曳光弾が三発に一発ずつしこまれ、オレンジ色がミシンの目の様に連なった。(曳光弾(光る弾)がないと、バルカンの弾は普通見えない)
ガゴゴゴ
白い戦艦を、後から前に飛び越えながらバルカン砲で撃った。
突き出た煙突が穴だらけになる。
「あまり効果はないけど、砲撃は止められるかな」
戦艦の装甲にバルカン砲はあまりダメージは無い。
だが、
「な、なんてことをしやがるっ」
DA・RU・MAヒートシステムの煙突を穴だらけにされた兵士が叫んだ。
白い戦艦の中が、ダルマストーブの煙で充満する。
窓という窓が空いて煙が出てきた。
白い戦艦の砲撃が止まり船足も鈍った。
「よしっ」
白い戦艦と茶色い戦艦の距離が開いた。
しかし、
「ふ、古いな」
「遅いでござるよっ」
茶色い戦艦の上を飛びながら二人が言う。
見るからに年季が入っていた。
茶色い戦艦の足が遅い。
白い戦艦にすぐ追いつかれ砲撃が再会した。
ドオン
バキイ
「まずいっ」
「だめでござるよっ」
ついに、白い戦艦の砲弾が茶色い戦艦の左の外輪に命中。
一部を吹き飛ばした。
茶色い戦艦が左に進路を変えながら速度を落とす。
白い戦艦がもう少しで追いつこうとしたそのとき、
ドオン
二つの戦艦の間に白い柱が上がった。
「そこまでだっ」
外部スピーカーからリンクスの声が聞こえる。
雪上外輪艦、”フォルクラム”が追いついたのである。
「来たのですわっ」
櫻子が、後ろにナスチャをのせて雪原を疾走してきた。
他のMAは全機出撃している。
どうやら、白い戦艦にMAはのせていなかったらしい。
ほんの少しの抵抗で、櫻子やお嬢様達、モヒカンとティーガとマリアージ、NEKOMIMIの海兵隊の働きにより、白い戦艦は制圧されたのである。
◆
結局、白い戦艦は、”亡国戦線”の奴隷船だった。
艦内は、MA格納庫も含めて不衛生な状態で置かれたNPCの奴隷で一杯である。
亡国戦線の兵士たちは、近くの街の旅行者ギルドに突き出された。
NPCの人身売買にNPCの殺人。
NPCの合意なしで性的な行為を行える違法なチートプログラムの所持が確認された。
リーダーも含む亡国戦線の兵士が、このゲームから永久追放(BAN)された。
現実の中の人も、捜査及び逮捕されることになるだろう。
旅行者ギルドの酒場だ。
密猟者たちである。
頭がテーブルに座る。
テーブルをはさんで商人一家が並んで座っていた。
「かしら、かしらっ」
小さい妹が頭の膝の上に登って座った。
今回の一件で懐かれたのだ。
「俺たちは密猟から手を洗う」
「もうころごりだよ、頭あ」
「自分たちに掛かった賞金も何とかする」
頭を含めて全員が商人一家にあらためて頭を下げた。
「すまなかった……」
「俺たちが商船を壊してしまった……」
「でだ……」
「俺たちを雇ってくれないか」
「そうすれば、俺たちの艦を商船として使えるし、償いにもなる」
「ううむ」
商人の父親が腕を組んで唸った。
「あなた……」
母親が父親の腕に手を沿える。
姉が、”ポチョムキン”の操舵士の若い男性を見て、少し頬を染めた。
「かしら、かしらっ、じゃあずっと一緒?」
妹が膝の上で無邪気に言う。
「あ、ああ、とーちゃんとかーちゃんがいいと言ってくれたらな」
「ははは、良い話じゃないか、受けなよ」
祖母が笑いながら言う。
「ただし、もう密猟もNPC狩りもなしだからねっ」
「当然だっ」
「そうだ、そうだ」
「ふふっ、じゃあよろしくお願いするよ」
父親が言った。
「よしっ、PCのNPCへの商会登録は任せるんだぜえ」
「艦の船籍登録もである」
「賞金首の解除申請もですヮ」
モヒカン、ティーガ、マリー、の超世話好きギルド、”ゴロツキーズ”の活動開始である。
◇
”亡国戦線”。
現実にもいる下品なテロリスト集団でございますね。
ナノマシンである、”エイプリルフール”で、世界中にうそをまき散らした国民の末裔でございます。
おや、いつのまにやら密猟団が更生していたのでございますよ。
ふふ、PCとNPCとの結婚しかり、共に働くというのもあり、というものでございましょう。




