オーパーツはお菓子に入りますか?
「先生、すみません、質問ですけど、オーパーツはお菓子に入りますか?」
クラスで1番真面目な田中くんが遠足のしおりを見ながら先生に質問した。
「…ん?ん?田中くん?…オーパーツってなにかのお菓子の名前ですか?」
先生は一瞬目を点にして田中くんの顔を見つめる。しかし、田中くんは分厚いメガネを持ち上げて呆れ顔で首を振った。
「…先生、オーパーツも知らないんですか?」
「失礼な!田中くん!先生だってオーパーツくらい知っていますよ!―――あれでしょ?最近小学生の間で流行っているっていうアニメの…」
先生が当てずっぽうでオーパーツの説明を試みるが、否、外れである。小学生の間でオーパーツなんて言葉が流行ったことはない。
「違います。発見された場所や時代とはまったくそぐわないもののことです」
田中くんがため息をつきながら説明してくれる。「それはそもそも遠足のお菓子としてそぐわないものなのでは?」というつっこみは野暮というものだ。
「オーパーツはアメリカの動物学者アイヴァン・サンダーソンの造語で『Out Of Place ARTifacts』の頭文字を取って「OOPARTS」と呼ぶのです。例えば、有名なのは航空写真で見なければ全体像がわからない巨大な『ナスカの地上絵』、高山に作られた石造都市の『マチュ・ピチュ』、巨大地下都市『カッパドキア』なんかがありますね。…この辺は全部ウィキペディアに書いてありますよ」
「…田中くん。田中くんのオーパーツへの情熱は認めますが、田中くんは遠足に巨大建造物をお菓子として持っていくつもりなのでしょうか?」
「先生…僕は先生に失望しました。こんな人に勉強を習っていただなんて…。巨大建造物なんてどうやって遠足に持っていくつもりなんですか?」
「うぐぐ…じゃあ何のオーパーツを持っていくつもりなんです?」
「…なに、大したものじゃありませんよ」
そういって田中くんは古い木箱を取り出す。
「これはかなり古いものですね」
「先生、開けてみてください」
「…?」
木箱を開けると中には令和に発売されたお菓子が大量に入っていた。
「なんということだ…こんな古い木箱に…あ、新しいお菓子が入っているなんて…。これは間違いなくオーパーツ!!!」
「先生…認めてくれますね、これがオーパーツだと」
「ええ、これは認めざるをえませんね。しかし、300円と決まっていますから、先生はオーパーツの持ち込みは認めません」
「うぐぐ!!!」