77.なりきり師、隠れる。
『ガシャン…ズズズズ…ガシャン…ズズズズ…』
「ゼェゼェゼェ…」
「ユウキ…本当に大丈夫なの?」
「大…丈夫!ゼェゼェ…」
鎖が重い…重さの設定間違ってないか?こんなんじゃ奴隷なのに雑用仕事すらできないぞ…
ってか奴隷って足枷ついてたっけ?足枷は犯罪者じゃなかったか?ただ歩いてるだけなのに今までダンジョンに潜って一番しんどいぞ…
「奴隷になっていいとは言ったもののここまでペースがさがるとはな…まだそんなに歩いてないぞ…」
「仕方…無い…でしょ…ゼェゼェ…これが…重いん…ですよ…」
「どうせ来ても戦えないしここで待っとくか?」
「嫌です!ふぅー…それだと除け者にされてるみたいじゃないですか!
それにもし襲われたらおれじゃ倒せないんですよ!いくら相手が雑魚ゴブリンだとしてもおれは今それ以上の雑魚なんですよ!」
「ったくわかったよ…仕方ねぇな!シルバあの鉄球浮かしてやれ!」
「わかりました。ユウキ君手伝ってあげるから歩くのは自分で頑張るんだよ。」
「ありがとうございますシルバさん!やっぱりギルマスと違って優しいですね!」
ギルマスの方を向きながらジト目で嫌味を言ってやった!
「ほぅ、ならおれがその鉄球を持ってやろうか?お前がどんなに歩き辛くても離さねぇぞ!いいのかそれで?」
歩き辛くても?もしギルマスが鉄球を持って歩いた場合ってどうなるんだ…?
もし後ろを歩かれると鎖が突っ張り歩幅がかなり制限される…。そして食い込んで痛い。
前を歩かれるとギルマスのペースに合わせて引っ張られ付いていかなきゃいけない。そして痛い…。
シルバさんのシャドーソードなら地面に触れない程度に浮かせて貰えて鎖にも余裕ができて自分のペースで歩ける…絶対シルバさんの方がいいじゃん!
「ご、ごめんなさい!調子に乗りました。シルバさんにお願いします。だからギルマスは持たないでください!」
「はぁ…冒険者なら先の事をちゃんと考えろ!いや、冒険者に限らずそんなんじゃいつまでたっても立派な大人にになれねぇぞ。」
「はい…気を付けます…。」
おれ前世では立派な大人だったんだよ?ギルマスには1言ったら10で返されてばっかりだ…
そんなこんなでやってきたゴブリンの群れ地帯。
ダンジョンは鎮静したはずなのにどんな繁殖力してんだよ…これならトレントも一杯いていいだろ…
「ホーク、奥義はここぞって時に取っておくんだぞ!あとポーション類も渡しておくからMPも自分で回復してくれよ。」
「わかってるって!ユウキは本当に心配性だね。熟練度上げはおれに任せてユウキはちゃんと隠れててね。防御のスキルはちゃんと使うんだよ。」
「わかった。気をつけて…。」
「じゃ、行ってきまーす!」
元気に行ってしまった…ギルマス達がついているとは言え心配は心配だ。いくらゴブリンが弱くてもボスは格が違うもんな…。
マップ内検索も完全鑑定も出来ない今ボスの情報を教えることすら出来ない…。
「あ〜あ奴隷になったの失敗だったかな…」
「そんな事無いわぁ〜ユウキちゃん!今感じてるそのもどかしさもきっといい経験になるはずよぉ〜。」
「…で、なんでマーガレット所長がここに残ってるんですか?」
「か弱いユウキちゃんを一人にしておけないでしょ〜。それにゴブリンって女から狙う習性があるのよぉ〜。あたしが行ったらホークちゃんの邪魔になっちゃうでしょ〜?」
「ならねぇよ!ゴブリン達も怖がって真っ先に逃げちゃうよ!」
しまった!つい我慢できなくてツッコんでしまった…
「ゴブリンも逃げちゃう?……あたしの美しさって罪ねぇ〜。あたしを前に我を忘れちゃうのが怖いのねぇ〜。」
よかった…ズレた解釈をしてくれたみたいだ。この人以上にポジティブな人っていないんじゃないか?
「と、とにかくホークに言われてるんでおれは隠れます!マーガレット所長はどうするんですか?」
「もちろんあたしも一緒に隠れるわよぉ〜。ユウキちゃんが怖いなら抱きしめてあげるわぁ〜!」
「大丈夫です!隠れるっていってもミラージュバリアなんで。それにマップも見れるので敵の接近もちゃんとわかります。なので怖くないです!全然怖くないです!」
「そう…遠慮しなくてもいいのに…それじゃあ、添い寝でもして待ってましょう〜!」
もうヤダこの人…皆早く帰ってきてぇーーー!!!
〜ホークside〜
「ユウキはちゃんと隠れたかな?」
「ゴロズもついてるし大丈夫だろ。」
「それが逆に心配なんですけどね…」
ユウキと別れて今回はおれが戦うんだ!ユウキは奴隷になって戦えなくなっちゃったからね。
でもちょっと嬉しくもあるんだ。だってユウキの為におれにできる事が増えたんだもん!
ユウキはいつもなんでも自分でやっちゃうからね…今回はおれが頑張るんだ!
「ねぇギルマス!ゴブリンを見付けたらおれが倒していい!?」
「おー倒せ倒せ!そしたらおれたちはサポートに回ってやるよ。」
「そうですねゴブリンはホーク君も一度戦ってますし大丈夫でしょう。だけどホーク君あんまり突っ走っちゃダメだよ。」
「わかったぁ!ありがとうギルマス、シルバさん!」
よーし頑張るぞ!えっと確か鎮静剤を使ったからジェネラルとウィザードが出てこなくて、えぇっと出るのが普通のゴブリンとナイトとマジシャンとアーチャーとソルジャーだったっけ…?
ソルジャーが一番強くて、マジシャンとアーチャーが遠距離攻撃してくるんだったよね?あぁ頭がこんがらがりそう…
「そうだホーク、奴隷になったユウキみたいにお前も縛りを付けてみるか?」
「しばり?」
「そうだなぁ…普通のゴブリンはスキルを使わずに倒すってのはどうだ?MPの節約にもなるし戦い方の練習にもなる。一石二鳥だろ?」
「そういえば前にユウキ君もやってましたね。格闘家でマジシャンゴブリンとアーチャーゴブリンをスキルを使わずに倒してましたよ。」
「へぇ〜ユウキそんな事してたんだ?わかったやってみる!普通のゴブリンだけでいいの?」
「あぁ、だけど普通のゴブリンは数が多い。自分で危ないと判断したらスキルを使ってもいい。あくまで戦い方を学ぶ修行だと思え!」
「修行……なんだかカッコいいね!よーし頑張るぞ!敵はこっちだよ!二人ともついてきて!」
ユウキがパーティーマップを使ってくれてるからおれでもモンスターの居場所がわかる。おれが二人を案内するんだ!
「うわぁ〜すっごいいるね…」
「まさに集落だな…丁寧に伐採までしてやがる…」
「上から見た時は周りの木が邪魔でわかりにくかったんですが、まさかここまで大きいとは…」
ゴブリン達の近くに行った時にギルマスがまずは様子を見ようって言ったから木に登って高い所からゴブリン達を観察してる。
マップに表示されてる赤い点は重なっててわかりにくかったけど実際に見ると見えてるだけでも100体はいるんじゃないかな?
でもボスは見付けられない。一緒にいないのかな?
「ねぇギルマス、ボスはいないの?」
「いや、いる!ダンジョンってのは1日経てば元の状態に戻る。恐らくだがあれは今日切り広げられた場所だ。
通常ゴブリンはそんな行動はしない。命令されてやってるんだろう。多分もっと奥でふんぞり返ってるんだろう…。」
「あっ、そういえばそうだね。ダンジョンって元に戻るんだった!って事は毎日あれやってるの?」
「そこまではわからん…おれも初めての経験だからな。だが逆に開けた場所はおれたちにとっても有利に働く。ホークまずはあそこにいる奴らを倒すぞ!」
「わかった!」
木から降りてゴブリンの群れに向って行く。
「ホークわかってるな?スキル無しで倒すんだぞ。」
「うん!わかってるよ!」
「遠くのアーチャーとマジシャンは僕達が倒すけどすぐに全部は倒せない。ちゃんと回避をする事も頭に入れとくんだよ。」
「わかった!」
「それじゃあ討伐開始だ!」
「「はい!」」
おれは真っ直ぐにギルマスは左シルバさんは右に別れて戦いが始まった。
ギルマスとシルバさんが遠くのアーチャーとマジシャンだけを倒してくれるからおれは近くの敵に集中するんだ。
ゴブリンのパーティーはどれも普通のゴブリンとナイトが合わせて3〜5体とアーチャー、マジシャン、ソルジャーが1体ずつの編成みたいだ。
前にユウキと倒した時とほとんど同じだ。あの時の編成にソルジャーゴブリンが追加されてるだけ。数は多いけど焦らず1体ずつ倒していこう。
「斬撃連波!」
〈〈ゴッ…〉〉
まずは敵の遠距離攻撃を減らさないとね。ギルマスと約束したスキルを使っちゃだめなのは普通のゴブリンだけだ。他のアーチャーとマジシャンゴブリンも斬撃連波で倒しちゃおう。
〈ゴブゴォー!!!〉
ソルジャーゴブリンがおれに気付いて声を上げた。そのせいで周りにいた他のゴブリンのパーティーも一斉にこっちを向き襲いかかってきた。
〈〈〈〈〈ゴブー!〉〉〉〉〉
「ヘヘ〜ん、遅い遅い!そんなんじゃ当たんないよぉだ!それっ!」
近付いて来たゴブリンを斬りつける。よし、スキルを使わなくても倒せるぞ。動きも遅いしこれなら数が多くても大丈夫だね!後はアーチャーとマジシャンとソルジャーに気を付ければ問題ないね。
「待っててユウキ経験値一杯稼ぐからね!」




