76.なりきり師、痩せる。
そんなこんなで上がってきた六階層。階段を登りきって出たばかりの所でおれはある事に迷っていた…。
「なぁホーク、それから皆さんにも相談があるんですけど…いいですか?」
「なんだどうしたんだ?」
「どうしたのユウキ?」
「うん…非常に言いにくいんだけどおれ弱くなってもいいかな?」
「弱くなる?どう言う事だいユウキ君?」
「そのぉ…奴隷になろうかと思って……。」
言葉にすると物凄く嫌だ…。正直奴隷になんてなりたくない。だけど今しかチャンスが無いと思う。
「あたしのぉ〜?」
「違います。職業です。仕事です。ジョブです。ロールです。なりきり奴隷です!」
マーガレット所長の奴隷になんてなったら何をされるかわからない…全力で否定させてもらう!
「奴隷か……確かに弱くなるどころか戦えないな…。」
「はい…実はさっき階段で奴隷を完全鑑定してたんですけど、かなりキツイ条件があったんです。
それで今なら皆さんもいるし厚かましいお願いなんですけどマスターするには今しか無いと思うんです…。」
「あぁ確かに鑑定士に転職してたな。そんな事してたのか?」
「はい、ちょっと気分を変えて新しい職業に転職してみようと思って…で、前から気になってた奴隷を調べてみたんです。」
「ねぇユウキ、キツイ条件ってなんなの?」
「あっ、ごめんそうだよなちゃんと説明しないとな。簡単に説明すると
・主に絶対服従。
・ステータスが著しく下がる。
・攻撃スキル封印。
・攻撃禁止。
・マスターするまで転職不可。
この5つが鑑定結果で出たんだ…。」
前に何気なく奴隷に転職しようとしてた事があったんだけどあの時転職しなくて本当によかった…。
あんな八階層で奴隷になんてなってたら間違いなく死んでいただろうな…。よく留まったあの時のおれ!
「じゃあユウキは奴隷になったらモンスター倒せないの?」
「うん…だからホークに熟練度上げを任せっきりになっちゃうんだ…
それでおれの事情を知ってるギルマス達がいる今じゃ無いと今後転職できるチャンスがあるかわからないからちょっと相談してみたんだ…。」
「へぇ〜奴隷って大変な職業なんだね。」
「奴隷が職業ってのも怪しいんだけどな…一応サポートスキルや回復スキルは使えるみたいなんだけどステータスも下がっちゃうから回復量も回数も減っちゃうんだ…
だからダメならダメで別にいいんだけどね。」
「おれは別にいいよ。ユウキの事守ってあげる!それにモンスターもいっぱい倒して熟練度上げも頑張るよ!」
「ホーク…」
「まぁおれも特に反対する理由はねぇな。おれたちがいる間に安全に終わらせるってのも賢明な判断だと思う。
ただ心配なのはダンジョンを出るまでにマスターできるのかだな。」
「それはわかりません…でももしマスターできなかったらホークには悪いけどまた四階層位まで戻ってもらって経験値稼ぎをお願いすると思います。
あの階層ならホーク一人でも危険は無いですから。」
「ボスが去った後の階層ならどれでもホーク一人で余裕だと思うぞ。」
「あっ、そっかホーク一人で十階層のボスを一撃で倒してたんだ。」
ついダンジョン活性剤を使ってる時を基準に考えてしまう。
「あたしもいいわよぉ〜♪奴隷のユウキちゃんも見てみたいもの!」
「僕も問題無いですね。」
「マーガレット所長…シルバさん…ありがとうございます!」
これで全員の許可が取れた。足手まといにはなりたくないけどなっちゃうだろうな…できる限りのサポート面で頑張ろう。
「じゃあ後はお願いします。なりきりチェンジ!」
【なりきる職業を選んでください】
★戦士 剣士 格闘家 ★魔法使い ★ヒーラー アーチャー テイマー 鍛冶士 ★鑑定士 ★マッパー 空間支配者 重戦士 ランサー シーフ ギャンブラー 契約士 料理人 奴隷 魔導師 道化師 サポーター 商人 結界師 ウォリアー 図鑑士 鞭使い サイキッカー プリースト 調合士 荷物持ち
「奴隷!」
結界師の格好から奴隷の衣装にチェンジする。
ボロボロに破れ、所々穴の空いたペラペラ生地の袖のない土色に黄ばんだ服にボロボロの短パン。
首と両手を二本の鎖で繋がれ両足には鉄球。嫌と言うほど奴隷のテンプレだった…。
「えっ?ユウキ大丈夫!?」
「大丈夫とは何がでしょうか?」
あれ?なんでこんな話し方になってるんだ?
「どうしたのその喋り方…それに目の下の隈が凄いし急にガリガリに痩せちゃったし本当に大丈夫なの!?」
目の下の隈?ガリガリに痩せてる?
「大丈夫です。ご心配ありがとうございますホーク様。」
あぁこれも奴隷の副作用みたいな物か…主の設定は多分ホークなんだろうな…同じパーティーだし。
普通に喋ろうと思っても敬語になって口から出てしまう。
「ホーク様って……ねぇギルマス!こんなユウキ嫌だ!どうしよう…」
「申し訳御座いませんホーク様。どうすればよろしいでしょうか?」
「ホーク、今のユウキは多分お前の奴隷なんだろう。最初に言ってたろ主に絶対服従だって。
だから普通に喋れって命令してみろ。多分それで話し方は元に戻る。」
「わかった!ユウキいつもみたいに普通に喋って!」
「…わかった。これでいいか?」
「よかったぁ…元に戻ったぁ!ねぇユウキなんでそんなにガリガリになっちゃったの?」
「わかんない。多分おれなりに奴隷になりきってるんだと思う…正直自分でも引いてるよ…。でもどこも具合いが悪いとかはないから大丈夫だよ。」
まさか転職しただけで体型まで変わってしまうとは思ってなかった…。
今までは衣装のチェンジはあったけど体型まで変わった事はなかったもんな……
「そっか、よかった……うっ、ユウキ凄い匂い…心配で今まで気付かなかったよ…クリーンで綺麗にしないと…」
えっ?臭いの?自分じゃわかんないんだけど…ちょっと待ってそれはめちゃくちゃ嫌なんだけど…。
「不潔なる汚れに清潔を、クリーン!」
ホークが生活魔法クリーンをかけてくれた。服と短パンが麻の色になり元の色を取り戻す。
元々こんな色の服だったんだ…もう臭くないんだよね?
「ごめん、ホーク様ありがとう。」
「ホーク様じゃなくていつも通りホークって呼んでよ!」
「…ごめんホーク。もう臭くないか?」
「うん。大丈夫!」
「ユウキ君、凄いね…なりきり師ってそこまでなりきるんだね…。」
「………」
あれ?シルバさんと会話する気が全くおきない…。どうなってるんだ?
「ユウキ?」
「ホーク、ユウキにおれたちとも会話するように命令してみろ。」
「えっ?そんな事まで?…ユウキ皆とも喋って。」
「わかった。…シルバさん、無視してごめんなさい。何故かさっき話す気が全くおきなかったんです。」
「全然気にしなくていいよ。ただの確認みたいなものだったからね。ところでユウキ君、ステータスはどうなってるの?」
「ステータスですか?ホーク、ステータス見たいんだけど見ていいか?」
「? いいよ。おれにも見せて!」
「わかった。オープンステータス」
ユウキ
15歳
奴隷
レベル6 熟練度1
HP291/291
MP262/262
攻撃36
防御38
魔攻32
魔防33
俊敏31
幸運34
スキル
なりきり師▶
戦士▶
格闘家▶
魔法使い▶
ヒーラー▶
アーチャー▶
マッパー▶
重戦士▶
鍛冶士▶
鑑定士▶
契約士▶
結界師▶
空間支配者▶
奴隷▶ 悪食
伝授▶
EXスキル
創造神の加護 無詠唱 鑑定阻害 熟練度10倍 ドロップアップ 生産率上昇
称号
転生人 なりきり初心者 異常に抗いし者 嗜むなりきり なりきり好き なりきる心得
マスター称号
戦士 魔法使い マッパー 鑑定士 ヒーラー
◆ステータス整理
「うわ、めちゃくちゃ下がってる…冒険者登録した時とほとんど変わんないステータスだ…」
「どれどれ…?攻撃禁止って事は戦闘奴隷じゃねぇからな。それでこのステータスの奴隷を買おうと思うと結構高いぞユウキ。」
「おれは売り物じゃありませんよ!…売らないよねホーク?」
「当たり前だよ!売るわけないじゃん!もうギルマス変な事言わないでよ!」
「悪い悪い、因みにユウキどの位ステータスが下がったんだ?」
「えぇと…全部10分の1になってますね…」
短い期間で鑑定士とヒーラーをマスターした事でなりきり師のレベルが2も上がった。
これでHPMPは1100、それ以外は110上がった。その他に鑑定士1ヒーラー5重戦士6分のステータスも上乗せされていた。
そして増えた称号のなりきる心得…効果は
なりきる心得…なりきりチェンジで転職した職業を5つマスターした。
効果:消費MP軽減(小)
と、初めてのMP軽減の能力が出た。これは地味にありがたい。
そして肝心の元のステータスの数値はこうだった。
HP2914/2914
MP2628/2628
攻撃365
防御381
魔攻323
魔防336
俊敏316
幸運341
重戦士とヒーラーどちらも防御職を上げたので攻撃よりも防御の方が高くなってしまった。まぁすぐにステータスなんて変わるから気にはしないけどね…
「90%ダウンか相当だな……ってか90%ダウンでそのステータスって…お前どんだけステータス上がってんだよ!」
「そう言えばギルマス達に見せてから3もレベルが上がってましたね。あの時説明したじゃないですか!熟練度アップじゃなくてレベルアップはステータスが一杯上がるって!」
「上がり過ぎなんだよ!今はともかく元のステータスが新人なんて誰も信じねぇぞ!」
「それはほら、転生人のアイデンティティーみたいなもので…」
「ったくおれはお前に後何回驚かされなきゃいけねぇんだよ!」
「ところでギルマス90%ダウンとか言ってましたけど、何か他の奴隷と違うんですか?」
「ん?あぁ、奴隷のステータスダウンは最初に奴隷商と主人で設定するんだ。戦闘奴隷で90%もダウンしてたら誰も買わねぇだろ?」
「戦闘奴隷?そういやさっきもそんな事いってましたね。奴隷にも種類があるんですか?」
「もちろんだ。あ〜なんだ、お前らにはまだ早い…もう少し大人になったら教えてやるよ。」
「あっ!そうですね、その時はお願いします。」
おれは転生人で中身は23歳だったからある程度の知識は持っている。だけどここにはホークもいたんだ…
日本でも一部のマニア以外に奴隷制度なんてなかったけどリーイン村にも奴隷はいなかった。
まだ成人したばかりのホークには刺激が強い話だもんな…
「理解が早くて助かるよ…。さて、それじゃあそろそろ攻略を再開しようか。」
「そうですね、あっ、マッピングしてから奴隷に転職すればよかった…」
まさかこんなに自由を奪われるとは思ってなかったからな…この足に付いてる鉄球は一体何キロあるんだろ?
こんなのぶら下げてシルバさんにお願いするのも悪いよな…
「心配しなくても大丈夫だよユウキ君。僕がちゃんと手伝ってあげるからさ。」
「シルバさん…ありがとうございます!お願いします!」
いつも通りシルバさんにおぶさり捕まり飛んでもらう。
「あっ、ダメだ力が全然入んない…」
鉄球が地面から離れた途端におれの力が鉄球に負けた。
「痛い痛い痛い痛い痛い…」
シルバさんがしっかり支えてくれていたので落ちることは無かったが足が千切れそうな程痛い…。
そんな状態なので一度降ろしてもらった。
「ごめんなさい…鉄球の重さに耐えれそうに無いです…」
まさかここまで弱くなるとは…
「ユウキ、インベントリに直してみたら?いつも武器とか直したりしてるでしょ?」
「それだ!ホークありがとう!やってみる」
言われた通りインベントリに鉄球を直してみる。
「あれ?できない…」
インベントリから物は普通に取り出せる。だけど奴隷の鉄球はインベントリに入れられない…
えっ、これ取り外し不可なの…?インベントリに直せばいいって思ったせいで余計に邪魔に感じてきたぞ…
「それも君の奴隷の仕様なのかもしれないね。仕方無い僕が鉄球の方もなんとかしてあげるよ…。」
そう言うとシルバさんは鉄球を持ち上げシャドーソードに乗せおれをお姫様だっこの要領で持ち上げた。
めちゃくちゃ恥ずかしい…
「あっ、シルバちゃんズル〜イ!」
「ユウキ君、少しだけ我慢してね。行くよ!」
マーガレット所長が訳のわからない嫉妬をしていたがシルバさんは無視して空へと向かう。
鉄球はシャドーソードが持ち上げてついてきてくれてるのでさっきみたいに痛くない。
「シルバさん、これならマッピングできそうです!」
「そうかい?よかった。君のマッピングは僕達にとっても大事なんだしっかり頼んだよ。」
「はい!」
こうして六階層のマッピングも無事終わりモンスターが異常に集まっている所を見つけた。
マップ内検索はできないけど多分あそこにゴブリンのボスがいるんだろう…。
さぁ次は奴隷になって初めての戦闘だ。つっても戦えないからせめて皆の邪魔にならないようにしないとな…。




