72.なりきり師、決着が着く。
「シールドスロー!」
戦士の熟練度6で覚えたシールドスロー。大分前に覚えたスキルだが使う場面がなく今まで保留していた戦士の最後のスキルだ。
重戦士になっていた事もあって使ってみたのだがなかなか使いやすい。
おれが狙った敵に思った軌道で当たりそしてまるでブーメランのように盾がちゃんと手元に戻ってくるのだ。
リトルデススパイダーのように弱い敵なら一撃で数体倒せる。
MP効率もよく初級魔法を下回る4しか使わない。
重戦士の大盾もダメージが入りやすい理由の一つだと思うがこれならもっと早く使っててもよかったな…
【重戦士の熟練度が3に上がりました】
【スキル ヘイトキャッチを覚えました】
「おっ、今回は覚えたな。」
熟練度2ではスキルは覚えなかった。なりきり師で転職して初めての経験だったがあの時はホークの奥義に目を奪われていた。
まぁ中級職だしそんな事もあるのだろう…。
もしかしたら重戦士は熟練度が10以上あるのかもしれないな。
日本のゲームでもレベル上限はレア度が高い方が高い。なんてのは当たり前だったもんな…。
また育ててみないとわからない事が一つ増えたな…
それからさっき覚えたヘイトキャッチは敵のヘイトを集めて離さないと言うまさに重戦士みたいなタンク職にはもってこいのスキルだった。
ただおれはなりきり師であってタンク職では無い。
どちらかと言えば守るより攻めていたい。よっぽどの事が無い限り使いたくないな……
まぁ今回はちょうどいいから使うんだけどね…
「ホーク少しここで待ってて!ちょっと新スキル試してみるよ。」
「わかった!頑張ってね!」
ホークから少しだけ離れ先に一人で進む。
「この辺でいいか。ヘイトキャッチ!」
前方180度、10メートル内にいたリトルデススパイダーがどんどんこっちに来る…。
元々はおれに気付いてなかった奴もヘイトキャッチの効果でおれに憎悪がうまれてるんだろうな。
「ユウキ!モンスターがいっぱい来てるよ!大丈夫なの?」
3メートル位後ろで見ていたホークが心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫!そう言う効果のスキルだから!」
リトルデススパイダーがいくら集まろうともう怖くない。アイツのスキルは糸噴射だけ。糸さえ無効化してしまえば数が多いだけの雑魚だ。
「ガトリングウォーター!」
まるでシューティングゲームでもしてるかのように、飛び出してきたリトルデススパイダーをガトリングウォーターで撃ち抜く。
「ガトリングウォーター!」
これで経験値がうまかったらトレントに次ぐ優良フロアだったんだけどな…
「ガトリングウォーター!」
まぁ少なくても経験値は経験値だ。ありがたくおれたちの養分になってくれ。
『ドドドドド…』
「…ドドドドド?この音って…」
このフロアに来て嫌な思い出しかないこの音…。
それがまたおれの元に向かって来ている。
〈ギシャアーーーー!!!〉
ギルマス達にやられたのか、ボロボロになりながらもおれの元にやって来るデススパイダー。
ヘイトキャッチの効果内にいてしまったのか脇目も振らず一直線だ…。
「やべっ…デススパイダーの場所確認してなかった…」
考えてみればそうだよな…最初にデススパイダーと戦ってた所から20メートル先に鎮静場所があった。
敵を倒しながらさっきの道を戻って来て結構進んでたもんな…
半円上に10メートル先まで届くヘイトキャッチを使えばデススパイダーに届いてしまうのは必然だ…
最後の最後に大ミスをしてしまった…。
「戦いの最中に逃げてんじゃねぇぞ!!!」
マーガレット所長がデススパイダーの横から蹴り飛ばした。
『バンッ、バキッ、バッ、ドーーン!!』
デススパイダーは木を何本も折りながら吹き飛ばされやがて地面に身体を叩きつけられ止まった…。
ヤベーよ破壊の権化が目の前にいるよ…もうクネクネの時の方がましに思えてくる程マジで怖いんだけど…
「あらユウキちゃん。」
「はい!なんでしょうか?マーガレット所長!」
「どうしたのぉ〜?そんなに緊張しちゃってぇ〜!あたしに惚れたのかしらぁ〜?」
「……ぇ…」
惚れてません!って言ったらどうなるんだ?目の前であんなの見せられてそんな事言う度胸も勇気もおれは持っていない…。
「ユウキ君を困らせないでください。ゴロズ所長!どう見たって怖がってるでしょう!」
そうなんだけどそんなにハッキリ言わないでシルバさん!
「そうよね。ユウキちゃん、怖いわよね…。」
「あ、あの…」
「最初に踏み出すのは怖いかもしれない…だけど超えてしまえば後は溺れるだけよぉ〜。さぁ怖がらずあたしの胸に飛び込んで来なさぁい♪」
腕を広げ待っている…どうしたらいいの?助けを求めシルバさんを見るとため息をついて眉間に手をやり目を瞑り首を振っている。
どう言う事?どう対処すればいいのかわかんないんだけど…
〈ギシャアーーーー!!!〉
吹き飛ばされたデススパイダーがまた帰って来てる。デススパイダーが今だけは味方なんじゃないかと思えたよ。
「ま、マーガレット所長!デススパイダーが来てます!ちゃんと戦いに集中しましょう!」
その時おれたちの周りの木が一斉にバタバタと倒れ始めた。
今度は何だ?次から次に起こる出来事に追いつけない…
「これで少しは戦いやすくなったな!」
聞こえてきたのはギルマスの声だ。ギルマスがこれをやったのか?さっきまでいなかったけど、どうやったんだ?ってか今どっからきたの?
「ユウキ、ホーク!鎮静剤は使えたのか?」
「あっ、はい!使いました!もう大丈夫だと思います!」
「そうか、ならアイツを倒して終わらせるぞ!お前らも手伝え!」
「「はい!」」
「全員行くぞ!」
最後は全員出し惜しみなしだ!
「鑑定!」
デススパイダー
レベル34
HP282/1545
MP329/526
攻撃623
防御510
魔攻438
魔防406
俊敏492
幸運271
弱点 火
耐性 毒
スキル
ポイズンブレス
パラライズネイル
糸噴射
ポイズンファング
いくらステータスが強くても
いくら状態異常のスキルを持っていても
いくら糸で地形の邪魔をしようとも
おれたちはもう全部に対応できる。残りのHPも少ないデススパイダーはもう終わりだ!
「ウェポンチェンジ!」
ギルマスも大盾を出した。だけどおれの大盾より大きく盾なのにトゲトゲした刃物が付いている…。
「うぉぉぉぉ!」
『ガーーン!』
デススパイダーの突進を大盾で受け止めた…。
「スカイアッパー!」
ギルマスが受け止めた隙にマーガレット所長がすぐさま回り込みデススパイダーを空中へと打ち上げた…。
「奥義・影捕縛!」
今度はシルバさんが奥義を使った。シルバさんの影が人形になって出てきたぞ…えっ?大丈夫なの?影が無くなってシルバさん消滅するんじゃないか?
影はそのままジャンプして空中のデススパイダーに絡みつく。
糸を出せないように尻も塞いでるし足も固めている。あれじゃ動けないだろうな…捕えるスキルか…流石アサシンだな…。
「ユウキ!焼いてしまえ!」
「あっ、はい!メガフレイム!」
周りの木は無くなっている。糸も切られている。今ならメガフレイムを使っても燃え移る物は無い!
〈ギシャーーーー!!!〉
弱点である火を受け他の魔法では反応しなかったデススパイダーが叫び声をあげる。
「最後はホークだな!仕返しするんだろ?」
「えっ、いいの?」
「当たり前だろ!凄いあの奥義で決めてやれ!」
「うん!わかった!ヴィブラブレード!」
ホークはヴィブラブレードを使い攻撃力を高める。
「ホークおれの剣に!」
「ありがとうユウキ!行ってくる!」
重戦士の大剣の腹を使い思い切り大剣を振りホークを飛ばす…。
「ぅおるらぁぁぁぁ!行けー!ホーークーー!」
「奥義・スパイラルストライク!!!」
空中でうまく動けていないデススパイダー。
そこにスパイラルストライクを使い細い竜巻に乗ったホークが突っ込んで行く。
「はあぁぁぁぁ!!!」
〈ギシャアーーーー〉
おれがスマッシュバスターを使ってやっと戦えたデススパイダーにホークがスパイラルストライクでぶつかる。
〈ギギギ…〉
防御力が高いデススパイダーは耐えているが明らかに劣勢だ。
「これで終わりだぁぁー!!!」
ホークの叫びと共に周りの竜巻が更に鋭くなった。
〈ギャーー…〉
ホークがデススパイダーを貫きデススパイダーに大きな風穴が空いた。
断末魔の叫びをあげたデススパイダーはそのまま消え去った…。
【重戦士の熟練度が4に上がりました】
【重戦士の熟練度が5に上がりました】
【スキル 防御上昇を覚えました】
【重戦士の熟練度が6に上がりました】
【スキル 地流斬を覚えました】
【重戦士の熟練度が7に上がりました】
「やった!倒したぞ!ホークスゲぇ!!!」
ホークが決めた事が自分の事のように嬉しくて飛び跳ねて喜んでしまった。
「あぁぁぁ…落ちるぅぅ…」
そんな中、空中で勢いが無くなったせいでホークが落下している…。
「ホーク!!!」
どうしよ受け止められるかな?でも受け止めないとホークがヤバい!
そんな事考えてる場合じゃない!受け止めないと!
「全く、最後まで世話のかかる奴らだよ…」
ギルマスが空中のホークをキャッチして地面に無事着地する。
「はぁ、よかった…。」
なんとも締まらない最後だけどおれたちの勝ちだ!
後は残りのリトルデススパイダーを倒せばこのフロアの攻略は終了だ!




