表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/214

56.なりなり師、ワガママを言う。

 普通のタックルカブトでこれだけ苦戦したのに今はボス戦なんてやってる余裕ないぞ…。


「まだ距離はあるのか?」


「そうですね…まだ今なら階段の方が近いです。でもどんどん近付いてます!」


 当然の事ながらボスも空を飛ぶのだろう…。一切ジグザグに進むことなく一直線にこちらに向かっている。



「そうか、仕方ねぇな…逃げるか!ユウキ他のモンスターはどうだ?」


「階段までの間に一体だけいます!でも少し回り道すればかわせると思います!」


「わかった。それなら階段までおれたちが連れて行ってやる!バイホーンゴートと戦った時の陣形で行くぞ!」


 シルバさんとマーガレット所長が頷く。



「ホークちゃんいらっしゃい!」


「はーい!」


 ホークが何の躊躇いもなくマーガレット所長におぶさる。

 そんな無防備に信用して大丈夫なのか?あの人平気で人間投げるぞ!おれは忘れてないからな!!!



「ユウキお前はこっちだ。ボスの事は逐一おれに報告しろ!それから索敵も任せたからな!シルバお前は道中のタックルカブトを殲滅だ。」


「「わかりました!」」


「よし、急ぐぞ!」


 おれもギルマスにおんぶしてもらい階段へと急ぐ。

 戦ったばかりで体力なんてほとんど残っていなかったので非常に助かる。


 おれはモンスターマップを確認しながらボスの動きをしっかりとチェックする。



「シルバさん!もうすぐタックルカブトとぶつかります!」


「わかった。ありがとうユウキ君。」


 そう言い残しシルバさんはスピードを上げた。

 あのタックルカブトを一人で倒すってそんな事できるのかな?


 いくらシルバさんが強いと言ってもあの回転してくる攻撃をどうやって防ぐんだろう?



「ギルマス、シルバさんは一人で大丈夫なんですか?」


「当たり前だろ!現におれたちはさっきタックルカブトを一人で一体ずつ倒している。心配する必要はねぇよ!」


 えっ?おれたちの知らないところでそんな縛りプレイみたいな事してたの?

 一人で一体って…皆で協力して倒せばいいのに……



「そうなんですね…あっ、シルバさん戦いますよ!このままいけば追いつけます!おれたちも戦いましょう!」


 ギルマス達の足の速さのおかげで開いていた差はすぐに縮まった…。

 全員で戦えばシルバさんが一人で戦うより早く戦闘を終えてボスから逃げれるだろう。



「だから大丈夫だって言ってんだろ!よく見てみろ!」


「は?なにあれ…」


「シルバさんすごーい!」


 地面から黒い影の棘が現れタックルカブトを串刺しにする。

 その棘が枝分かれのようにどんどん広がりタックルカブトがまるで(はりつけ)の刑のオブジェのように宙に留まった…。


 シルバさんの攻撃はそのままでは終わらず今度はその棘が動いたり太くなったりしてタックルカブトは何もできないでいる。


 最後は棘自体が体内で回転したのか主柱になっている一本以外がタックルカブトを切り裂いてバラバラにした。



「うわっ、めっちゃグロイ…」


 強さに感動するよりも気持ち悪さの方が勝ってしまった……



「そんな事言っててどうする!ソンビ系のモンスターなんかもっとグロイし気持ち悪いぞ!」


「あーおれゾンビとかは全然大丈夫です。あった事は無いですけど、虫程抵抗は無いと思います…。」


 日本にいた時にゾンビ映画とったな…あの時は最後まで生き残れず、終盤でおれもゾンビになっちゃって主人公に頭を撃ち抜かれたんだっけ…懐かしいな…。



「お前の基準がわかんねぇよ!やっぱ街に帰ったら虫特訓やっとくか?」


「絶対にやりません!タックルカブトと戦ったんですからそれはもう終わった話です!!!」


「ったく…それより、シルバの戦闘ばかりに気を取られてたがマップはちゃんと見てるのか?」


「よく見てみろってギルマスが言ったんでしょう!あの速度ならまだ追いつかれませ…左から来ます!避けてください!」


 あれだけあったはずの距離がいつの間にか無くなっていた。



『ドゴーーーーン!!!』



「チッ、そう簡単にはいかねぇか…」


 物凄いスピードの砲弾のように地面へとぶつかり地面には大きなクレーターができた…。



「ヤバすぎるだろ…なんだよこれ」


「ユウキ!鑑定だ!とにかく相手の情報を引き出せ!」


「は、はい!鑑定」



クリスタルカブト


レベル28


HP206/206

MP228/229

攻撃43

防御862

魔攻35

魔防374

俊敏883

幸運170



「嘘だろ…」


 防御特化過ぎる…こんな敵にダメージを入れる事なんてできるのか?

 それに攻撃力がないのにこんな威力で突っ込んでくるんだよ…?ここまでくると防御力が攻撃になってるよ…



「どうした!ステータスは見えたのか?」


「あっ、はい!防御力が862、俊敏が883あります。」


「ステータスはまぁまぁだな。」


 まぁまぁ?どこがまぁまぁなんだ?立派に化け物やってるじゃないか!



「倒せますか?」


「それはわからん。」


 どっちだよ!まぁまぁなんじゃないのか?砂煙が落ち着き姿を表したクリスタルカブトはこちらの様子を伺っているようだ。



「メス?」


 普通のカブトムシからすればかなり大きいがタックルカブトよりも相当小さい。

 全身がクリスタルでできているのかキラキラしていてツノは無かった。多分メスのカブトムシなのだろう…。



「お前達を背負いながらだとおれたちは戦えない。だが、お前達を降ろした所でその俊敏の高さの敵にお前達が敵わないのもわかってる。」


「じゃあどうすれば?」


「ユウキ、シルバと二人で協力して魔法でアイツを倒せるか?」


「ダメージが入るかわかりません!さっきは言ってませんがおれの魔攻よりアイツの魔防は全然高いです。」


「ステータスで全てが決まる訳じゃねぇ!とにかく試してみろ!」


「わかりました。ライトニングボルト!」


 クリスタルカブトに上空からライトニングボルトが襲いかかる。



『ピュン……ドガーーン!!!』



「へ?………」


 ライトニングボルトが直撃したのにあろう事かクリスタルカブトは魔法を反射してしまった…。

 ライトニングボルトが跳ね返され周りの木にぶつかり爆発を起こした。



「クソ面倒臭ぇ特性もってやがるな…ダメだここは逃げ一択だ。シルバ!ユウキを頼む!」


「待ってください!ギルマスまさか残るつもりですか?」


「ゴロズ!先に行け!」


「わかったわぁ〜。ホークちゃんしっかり捕まっててねぇ〜!」


「は、はい!」


「ユウキ君、早くこっちにくるんだ。」


「ちょっと無視しないでください!ギルマスを残して行ける訳無いでしょ!」


「さっきの攻撃でわかっただろ。君がここにいても何もできないんだよ。」


「そんな事無い!さっきのは…そう、たまたまです!たまたま当たりどころが悪くて……」


「ユウキ!邪魔なんだよ!ガキのワガママで残られても実力が無い奴はいても迷惑なだけだ!

足手まといはいない方がいいに決まってるだろ!それ位わかれよ!」


「でも…」


「わかったらさっさとシルバに連れて行ってもらえ。」


 魔法が反射された時点でおれの攻撃手段がなくなったのは確かだ。

 相手の防御力を考えれば物理的な攻撃はもっとダメージを入れるのが難しい……



〈キューーーーー〉



 その時、クリスタルカブトが甲高い声で鳴いた。



「何か仕掛けてくる!早く行け!」


「ユウキ君!急いで!」


「ッ…わかりました。階段で待ってますからね!絶対に来てくださいよ!」


「あぁ約束する。行け!」


「捕まってユウキ君!」


 おれはシルバさんに捕まり4人でその場を離れる…。


 なにが転生人だ…チート能力を持っていたって全然戦えないじゃないか!



『ドーーーン!!!』



 おれたちが去り数秒ですぐにギルマスの戦闘が始まったようだ…。



「ギルマス大丈夫ですよね…」


「もちろんさ!普段は君に軽口を言ったりしてるけどあの人はれっきとしたギルドマスターだよ。

過去に死戦をいくつも乗り越えてきた冒険者だ。心配しなくてもいい…」


「そうですよね……」


 シルバさんはそう言うけど相手は情報のないボスだ。シルバさんだって心配していないはずがない。おれに気を使って毅然とした態度でいてくれてるんだろう。



「階段で僕達は休憩して待っていよう。君達もちゃんとポーションを使って回復するんだよ。次の階層は本命のボス戦なんだからね。とにかく身体を休めるんだ!」


「わかりました…」


 後ろの戦闘が気になるけど遠目を使った所で木が邪魔で見えない…。


 元々階段の近くまで来ていたのでそれほど時間もかからずにおれたちは十階層へ続く階段へと到着した…。

2020年最後の投稿です。

2021年も引き続き「なりきる職業、なりなり師。」をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ