50.なりきり師、デスフライ。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴ…』
音を立てダンジョン全体が揺れ始めた…。
「うわっ何だ?地震…?」
ダンジョンで地震?それともメテオ打ったせいか?冗談じゃないぞ…下手したら生き埋めだよ。
「ユウキ君、ホーク君、僕に捕まって!まだあのボスは諦めてないようだ…。」
「「捕まる?」」
って事はこれはアブゾープトレントの攻撃か…?おれのせいじゃなかったぁ!よかった。
おれたちは言われた通りシルバさんに捕まろうとシルバさんの手をとる。
「それだと君達が離したら落ちちゃうよ。ちょっと失礼…」
落ちる?えっ?何すんの?シルバさんはおれとホークを両脇に抱えた。
おれとホークもシルバさんに抱きつく感じになった…。
「飛ぶよ!しっかり捕まっててね。」
「えっ、なにっ!なに?うわっ…」
シルバさんはおれたちを抱えてるにも関わらずダンジョンの木の枝へとジャンプしてどんどん登っていく。
すぐに木の頂上まで登りきったがそれだけでは終わらなかった。
「影剣」
スキルのシャドーソードを出し今度はそれを足場にどんどん高度を上げていく。
そんな使い方できるの?そのスキル…
「高い!高い高い高い…落ちちゃうから!何してるんですかシルバさん!」
「ユウキ凄いよ見て!マップが一気に埋まったよ!」
「えっ?マップ?あっ、ホントだ!マッパーの能力のおかげだな…ってそんな事気にしてる場合じゃないよ!」
別に高所恐怖症って訳じゃないけど命綱なしのデスフライとなれば話は別だ…。
こんな高さから落ちたら確実に死ぬぞ。いつの間にかアブゾープトレントより高く飛んでるじゃないか!
多分上空100メートルはあるぞ!ダンジョンの構造はどうなってんだよ!
「うん、これ位まで上がれば大丈夫かな…。ユウキ君も魔法使って細いのは落としてね…。
ホーク君はその状態じゃスキル使えないよね?少しの間我慢してね。来るよ!」
来るよ?…何が!?
『ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!』
「なんだあれ…」
「あのまま下にいたらヤバかったね…」
さっきの音がより一層大きくなったあと地面からまるで剣山のように無数の木が出てきた。
「ギルマス達は!」
「大丈夫だよ。あれはトレント種の最後の悪あがきだよ。
ここまで凄いのは僕も初めて見たけどギルマス達もわかってるはずだからね。
それにほらあそこだけ生えて来ないでしょ?多分あそこに二人はいるんだよ。」
最後の悪あがき…そう言えば根っこで攻撃するってこの階層に来たばかりの時にギルマスが言ってたな…
根っこの攻撃って最後の悪あがきだったんだ…。
「そういやシルバさん?魔法で落としてねって言ってましたけど…もしかしてあれってここまで届きますか?」
「届くんじゃないかな?多分あの根っこでトレントを吸収してたんだろうしあの異常な数の発生もアブゾープトレントの根から生まれたんじゃないかな?だから根っこは相当長いと思うよ。」
この階層のトレントって竹みたいな生まれ方したの?
アブゾープトレントを親にしてトレントと根っこで繋がってて、アブゾープトレントが根っこを使ってトレントを吸収して回復……
うわっ、そう考えるとこの階層で起きた事全部説明がついてしまう…。
アブゾープトレントのスキルで吸収してたと思ってたけど案外物理的に吸い取ってたんだな…
「さぁ最後の踏ん張りどころだよ!」
シルバさんはいつも冷静だな…。ギルマス達大丈夫かな…無事なら早く倒してくれないかな…
〜グリード&ゴロズ 離脱後〜
「ゴロズ、あのスキルはもう使うなよ。ユウキやホークの前でへばってると格好つかないぞ。」
「わかってるわぁ〜。それに何度も使える技じゃないわよぉ〜。」
「それと礼を言うのが遅れたがさっきは助かった。ありがとう。」
「あの巨大な敵を一人で相手してたんだものお礼を言うのはあたしの方よぉ〜。」
『ゴゴゴゴゴゴゴゴ…』
「ゴロズ!根っこの攻撃が来るぞ!」
「そうねぇ〜。あっちはシルバちゃんがいるから大丈夫でしょうけどこれは少し急いだ方がいいわね…。」
「そのようだな。見ろ!シルバも気付いて空中に回避したようだ。」
「あら、羨ましい。ユウキちゃんとホークちゃんが抱きついてるわね。嫉妬であのトレント壊しちゃいそう。」
「なら決まりだな。おれは根の対処、お前は本体の対処だ。」
「そうね。そうしましょう。」
「「行くぞ!」」
『ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!』
「空弾烈々拳!」
拳で空気を弾き空気の砲弾を次々に敵に飛ばす技。
トレントの本体の身体がメリメリ削れていく。
「ウェポンチェンジ」
片手剣から両剣へと変わる。出てきた根を瞬間的に斬るが下から次々に出てくる…。
「キリがねぇな!仕方ねぇ。ウェポンチェンジ」
両剣から今度は大剣へと変わった。
「奥義・リッパーソード 轟一閃!」
スキルを使うと大剣が何倍にも伸び大きくなる。その大剣を横薙に斬りつける。
剣が直接当たっていない部分の根も斬撃波で切れ前方の根をほぼ一気に刈り取った。
「これで終わりよ。龍虎繚乱!」
空弾烈々拳で剥がれ落ち剥き出しになった幹に思い切りスキルを打ち込む。
右手に龍、左手に虎。闘気で作り出した龍と虎がゴロズを離れアブゾープトレントへと飛んでいく…。
「貫きなさい♪」
ボロボロのアブゾープトレントにはもう耐えられない攻撃だったようだ。
ゴロズのスキルに再び身体を貫かれ今度こそ声をあげることなく静かに消えていった。
「終わったわ。」
「そうだな。次の階層に急ぐぞ。」