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49.なりきり師、参戦する。

 〜グリード&ゴロズVS八階層ボス〜



「近付く程に馬鹿デケェな…」


「なぁにぃ〜グリード、もしかしてビビっちゃったのぉ〜?」


「はん、馬鹿言うな!それよりお前もふざけてないで気合い入れないと怪我では済まねぇぞ!」


「わかってるわよそんな事。それよりグリードあの敵に覚えはある?」


「全くねぇな。エルダートレントよりもデケェトレントなんて初めて見たぜ。

ったくこりゃボスの格が一つ上がりやがったな…ユウキの手前余裕ぶっこいて来たがこの先おれらでもどこまで進めるかわからねぇぞ…。」


「確かに今はまだいいけど先の階層を進むとなれば魔法職と回復職はほしいわね…。

他の冒険者にダンジョンを開放するにしてもちゃんとしたパーティーを組んでないと攻略自体が難しいかもしれないわね…。」


「ダンジョンに残された斬魔の炎とエンドレクイエムの奴らも無事だといいんだけどな…」


「確か彼らは両パーティー共、十三階層の素材狙いだったわね。

Dランクのあの子達には今のこのダンジョンは少し厳しいわね…。早く助けてあげないとよね。」


「そのためにもコイツをさっさと倒して次に進むぞ。アイツの攻撃はおれが防いでやる!ゴロズ本気で行け!」


「わかった。速攻でいくぞ!」


「ウェポンチェンジ!」


 おれの持っていた大剣がフラフープ程の巨大なチャクラムに変化する。



極滅極拳(ごくめつきょっけん)(ごく)


 右手の拳に全ての力を集め超打撃の一撃を与える事の出来るスキル。そのかわり使った後は反動がある。



『ドーーーーン!!!』



 ボスのトレントの幹にはゴロズのスキルによって反対側まで大穴が空いて貫通していた。



「おいおい、普通八階層でそんな大技使うか?」


「速攻で行くって言っただろ…悪いグリード、肩貸してくれ…この技を使ったら10分近く動けねぇんだ。」


「威力がスゲぇのは認めるが相変わらずめんどくせぇスキルだな…仕方ねぇ…チッ!」


 ボストレントの枝がゴロズを突刺そうと伸びてきていた…。

 チャクラムを投げかなり太い枝を切り落としゴロズを救出し一旦その場を離れる…。



「どうなってる?あれだけの大穴が空いていて生きているはず…っな…」


 ボストレントに空いていた穴がどんどん塞がっている。



「ゴロズ、どうやらおれたちは戦い方をミスっちまったようだな。とにかくお前が動ける様になるまで少し時間を置くぞ。」


「悪い…」








 〜ユウキとホーク〜


 周りのモンスターが全て消えてしまったので今おれとホークはボスのトレントに向かい歩いている。



「なぁホーク?おれさ、なりきりチェンジに集中しててトレントが消えた所って見てないんだよ…。

あのトレント達はどんな風にいなくなったんだ?」


「うーん…おれが戦ってたら急に枯れ始めて最後はそのまま消えちゃったんだ。

で、周りを見たらどんどんトレントだけが同じ様に枯れてから消えていったんだ!」


 枯れ始めた?一体何がきっかけだ?あのボスのせいだとしてもここまで結構距離が離れてるんだけどな…。


「へぇ〜。それってドーンってなったあの大きな音の後だったりしないか?」


「言われてみればそうだね。多分すぐ後だったと思うよ。」


 って事はやっぱりギルマス達がボスと戦い初めてからだな…

 あの大きな音がギルマス達が起こしたものなのかボスが起こしたものなのかわからないけどまだあのボスを倒せて無いってのは見ればわかるもんな…。

 おれたちが行って何かできるかわからないけどじっとしてても仕方ないもんな…。



「ホーク、モンスターもいないみたいだし少しだけ急ごうか。

あっ、ちゃんとパーティーマップは出しとくからホークもモンスター見つけたら教えてくれな。」


 いくらギルマス達が強くてもあんな大きなモンスターが相手では何があるかわからない。

 それにモンスターが一斉に消えるなんてきな臭い事は相手の能力としか考えられないもんな…。



「うん、わかった!行こう。」









 〜ギルマス達VSボストレント〜



「くそっコイツ、ゴロズばかり的確に狙ってやがる…。」


 ボストレントの葉が、枝が、実が、おれが抱えてる左側のゴロズを狙いとめどなく飛んでくる。

 武器をチャクラムから少し大きめの片手剣に変えて斬り刻み守っているがそのせいで攻められない。



「ギルマス、ゴロズ所長!」


「シルバいい所に来た!ゴロズを頼む!アイツはゴロズ狙いだ!守るか逃げるかして時間を稼げ!」


「えっ、ちょ…嘘だろあの人…言いたい事だけ言って行っちゃったんですけど…。

で、ゴロズ所長はなんでそんな事になってるんですか?」


「ちょっと大技を使ったんだが決めきれなかったみたいだ。

シルバちゃん、ホークちゃんとユウキちゃんは大丈夫なのか?」


影剣(シャドーソード)。そんな状態のゴロズ所長なんて初めて見ましたよ!回復までどの位かかりそうですか?

あとホーク君なら今頃ユウキ君と合流してるはずです。

彼らはマップで自分達の居場所がわかりますからね。この近場にしかモンスターもいなかったですしもしかしたらここに向かうかもしれませんね…。」


「面目ない…あと5分で動ける様になると思う。

モンスターが近場にしかいない?それはどう言う事だ?」


「僕もよくわからないんですけどホーク君のレベル上げに付き合ってたらトレントが急に枯れ始めたんです。

ちょうど大きな音がした後ですね…話を聞いた感じゴロズ所長の大技の後だと思います。」


「枯れ始めた?」


「はい、それであなた達に何か起こったと思いこちらに向かったんです。

向かってる途中もどんどん枯れていくトレントがいましたね。多分外側から内側にって感じで今も同じ様に枯れてるんじゃないですか?」


「どう言う事だ?シルバちゃん、アイツは鑑定できないのか?」


「無茶言わないで下さいよ!あなたを守るので精一杯です!あなたが回復して動けるようになるまで待ってて下さい!そしたら鑑定しますから…。」


「そうだな、悪い…少しの間だけ頼むシルバちゃん。」


「ったく、らしく無いですね!いつもと性格が真逆じゃないですか!まぁそれ位大人しいほうが僕は楽ですけど。」


「シルバちゃん……それは告白ととっていいのか?」


「いいわけ無いでしょうが!」


「ポッ///」


「あぁもう守るの辞めようかな…」








 〜ギルマスVSボストレント〜



「コイツ斬ったそばから再生しやがる…なんなんだこのトレントは…」


 ボストレントの大きい枝を斬っても次の瞬間には切り口から新しい枝が生えてくる…。


 今おれは空中にいる状態だがそんな中でもボストレントの攻撃は止まない…。

 ボストレントに生えている無数の葉がマシンガンのようにおれを狙う。



「ウェポンチェンジ!」


 持っていた剣が大きな盾に変わる。


 盾の外周には12本の剣が飛び出していて攻めも守りもできる盾だ。



「ぐっ…」


 身体は隠せたが空中なので踏ん張りが効かない。

 ボストレントの攻撃に押され地面に突っ込んでしまった…。



「はぁーーーー!!!!」


 気合でボストレントの攻撃に耐え抜きなんとか葉をしのぎ切った。



「はぁはぁはぁ…まさかこんなに手こずるとは思わなかったな。

早くコイツの再生の秘密を見付けないといつまでたっても終わらねぇぞ…」


 その時、頭上から影がおれを包み込んだ。



「しまっ…」









 〜ユウキとホーク〜



「あっ、また消えたよ!」


「確かに消えたな…。今のはおれも見たよ。」


 おれは気付かなかったのだがホークがさっきマップに反応があったのに消えたって教えてくれてた。

 なので今度はおれもマップを見ながら走っていたが、ホークの言う通りモンスターマップに反応はあったのに赤い点が消えてしまった…。


「って事は全部が枯れたんじゃなくてまだモンスターはいるみたいだな…

戦う前に消えちゃってるけどそれは恐らくあのボスが原因だろうな…。」


 冒険者は今このダンジョンにはいない。だからモンスターが消えるって事はおれたち以外だとボスしか考えられない。


 取り残されたパーティーはいるみたいだが出発日時から多分もっと先にいるってギルマス達が予想してたもんな…。



「ねぇユウキ?これってあのボスが他のトレントを吸収して強くなってるんじゃない?」


「あっ!ホークもそう思った?多分そうだと思うよ。

だけどそれはおれたちだから分かる事だ。ギルマス達は気付けない…。」


「どうして?」


「シルバさんがあそこに到着して説明してれば気付けるかもしれないけど、戦ってる最中に遠くのトレントが枯れて吸収されてるなんてギルマス達がわかるわけないだろ?」


「あっ、そうだね!」


「意味もわからずに時間が経つごとに強くなったり回復してるって思ってるかもしれない…。

早くこの情報を教えてあげないと精神的に辛いはずだ…。」


 あのボストレントまであと少し。急げば2分もかからない。



「じゃあ早く教えてあげないとね!」


 だけどその時ボストレントが地面に向かって枝を振り下ろした。


「ヤバい!ホーク木に隠れるぞ!物理結界」


 凄い爆風が周りに吹き荒れる。身を小さくかがめ風が収まるのを待つ。

 10秒程たってようやく風が止んだ。


「ふぇ〜。凄い攻撃だね…ユウキありがとう。」


 周りの木々は吹き飛ばされ更地状態になってしまっていた…。

 物理結界でたまたま守っていたおれの後ろにある木は結界で守られた部分以外は吹き飛んでしまっていた。



「ギルマス達は?大丈夫なのか!?」


 見晴らしの良くなった森でギルマス達の姿を探す。



「ユウキ、あそこ!よかった皆無事だよ!」


 ホークが指差すそこには確かに3人がいた。


 ボストレントの振り下ろした枝は無くなり多分ポッキリと折れた?ような見た目をしている。



「って事はあれマーガレット所長の仕業だよな?マジで化け物だあの人…」


 絶対怒らせないようにしないとマジで命に関わる…さっきのゲンコツもギルマスでよかったと心の底から思うよ。



「流石マーガレット姐さんだね!スッゲーパワーだ!」


 姐さんとスッゲーパワーは本来繋がらない言葉の筈なんだけどな…

 ってかホーク今更だけどあれを姐さんって認めていいのか?

 めっちゃムキムキのゴリゴリオネェだぞ?パワーの化身たる超生物の化け物だぞ?



「ってそんな事は今はどうでもいい。この距離ならいける!なりきりチェンジ 魔法使い!」


 せっかくシーフに転職したがあの大きさに最も有効な攻撃は魔法使いでしかできない。



「皆さ〜ん!離れてくださ〜い!」


 大声で叫ぶとちゃんと聞こえたようで全員がここに集まった。



「ユウキ、お前らの敵う相手じゃねぇ!ここはおれたちに任せて離れてろ!」


「まぁ見てて下さい。ちょっと試したいスキルがあるんです。この機会を逃すと打て無さそうなんでここでやってみます。」


「ユウキ君、君何をするつもりなんだい?」


「まずは防温結界。そして行きます!メテオーーー!!」


 防温結界を使ったのは一応安全の為だ。

 メテオが熱くておれたちが死んでしまったら意味が無いもんな…。


 ボストレントの頭上から巨大な燃えた隕石が落ちてくる。

 このダンジョンに天井は見えないけど一体どんな原理になってるんだろう?


 まぁ使えたしいっか…。



「えっ?受け止めるの?」


 ボストレントは葉や枝を燃やしながらもメテオを受け止めた…。

 だがメテオ自身が燃えている為ダメージ自体は入るしいくら受け止めたとはいえ隕石には重さだってある。これはもう動けないんじゃないか?



「まだまだ行くぞ。メテオ!」


 すかさず2発目を打ってみた。また頭上から巨大な隕石が降ってくる。

 今度はボストレントのてっぺん部分に直撃した。



「えぇ…まだ終わんないの?どんだけしぶといんだよ。

ならもう一発…は辞めとこうか。経験値勿体ないもんな…

なりきりチェンジ シーフ。」


 魔法使いからシーフにまたチェンジする。



「ユウキちゃんあなた、本当にやってる事がめちゃくちゃね…」


「ユウキ、何故転職した?いつも油断するなと言ってるだろう…。

アイツは回復するんだぞ!おれたちも何回か瀕死にはさせてるんだがその度に全回復してしまうんだ!」


「でしょうね。でも多分もうアイツ回復しませんよ。

その証拠にほらマーガレット所長が折ったあの枝まだ折れたままですよ。」


「何?」


「もう回復源が無いですしもうアイツの回復はおしまいです。」


「どう言う事だ?」


「言葉の通りですよ。さっきの爆風で残りのトレントが全部消えちゃいましたしこれだけの範囲が更地になってたら向こう側のトレントも残ってないと思います。

この階層に残ってるのはあのボストレントだけだと思いますよ…。」


 このボストレントはザコ敵から倒さないといけないボスだったみたいだ…。

 ギルマス達が先に攻撃してしまったのでザコのトレントはあのボストレントに吸収され色々面倒な効果をもたらしてしまったのだろう…。



「それと倒す前に…鑑定!」



アブゾープトレント


レベル22


HP???/???

MP???/???

攻撃???

防御???

魔攻???

魔防???

俊敏???

幸運???



「あぁ…やっぱりこう言うモンスターが出て来ちゃったか…鑑定士も上げないといけなくなったな…。」


 それに、レベル22か。ガッツリ下がってるよ…ここ八階層だぞ!

 だけど前のアイアンスコーピオンの時とは違ってこれは納得できる。

 フロアも岩場から森に変わったし六階層からモンスターの初期種族値が上がったんだろうな…



「シルバさんはアブゾープトレントのステータス見れますか?」


 おれには見れなくてもシルバさんならおれより強いし見れるかもしれないよな。



「僕も見れるのは名前とレベルだけだよ。もしかしたら鑑定レベルは君と変わらないのかもしれないね。」


 そうかスキルレベルと職業レベルはまた別なのか…。

 シルバさんの鑑定はスキルの書で取ったスキルだって言ってたし鑑定士が職業じゃないと鑑定レベルは上がらないのかもな。



「そうでしたか…それなら、なりきりチェンジ!」



【なりきる職業を選んでください】


★戦士 剣士 格闘家 ★魔法使い ヒーラー アーチャー テイマー 鍛冶士 鑑定士 ★マッパー 空間支配者 重戦士 ランサー シーフ ギャンブラー 契約士 料理人 奴隷 魔導師 道化師 サポーター 商人 結界師 ウォリアー 図鑑士



「鑑定士を選択!」


 育てようと思ったシーフは一旦保留だ。鑑定士の重要度がここにきて跳ね上がってしまった。


 持っているダガーナイフが虫眼鏡に変わり白いYシャツのような生地の服にチェック柄のベージュのベストとスラックスに変わった。



「鑑定士の装備は虫眼鏡か…攻撃要素皆無だな。」


 非戦闘職はそんな装備ばっかりだな…ペンとか虫眼鏡とか腕輪とか。

まぁ戦うことが目的の職業じゃないからしょうがないか…。



「さて、敵ももう死に体寸前です。今回はギルマス達に譲りますので今までの鬱憤をぶつけて倒してきてください。

ホーク、新スキルはまた次の階層で見せてくれ…。」


 ダメージ自体はおれが入れた。トドメを刺さないがこれでおれたちにも経験値が入れば熟練度が上がるだろう。

 もし入らなくてもトドメを刺さないと経験値が入らないってわかるしどちらに転んでも今回は別にどっちでもいい。


 ギルマス達が弱らせた敵を横取りするつもりもないからね。



「わかった!ギルマス達頑張ってね!」


「ったく本当にクソ生意気な新人だよ。だが鬱憤が溜まってたのは事実だ。ここはお言葉に甘えてやらせてもらおう。」


「ユウキちゃん、ホークちゃん、あたし達大人が手間取ったせいで気を使わせちゃったわねぇ〜。チャチャッと倒してきちゃうわねぇ〜。」


 そう言うとギルマスとマーガレット所長はまたアブゾープトレントの元へ向かった。



「シルバさんは行かなくていいんですか?」


「僕は大丈夫だよ。それに最後まで何があるかわからないからね。君達を守る事にするよ…

ほらっ生き物って死に際が一番危ないんだよ。」


 

 死と身近な職業のアサシンであるシルバさんが言うんだもんな…多分経験談なのだろう。



「そうなんですね。じゃあ一緒に待ってましょう。」


 後はギルマス達が倒してくれればこの階層も終わりだな。

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