討伐完了
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エルピオンは子供の火山龍を撫でていると、剣士が話しかけてくる。
「おい貴様!」
エルピオンは不思議そうに、その剣士を見る。
「俺は北に位置する王国、エルンガーナ国に住む貴族、マル
ッシュ・ガルネリアと言うものだ。今パーティーの者たちと
冒険をしている」
「それがどうしたんだよ」
エルピオンは睨むようにマルッシュを見る。
「お前、そのドラゴンは俺たちと共に倒したことにしてくれ
ないか?もちろん、褒美はちゃんとする。いくら欲しい?」
揺するように彼は言ってくるが、エルピオンにはどうでもいい。
「何言ってるんだ?こいつは私が倒したんだ。お前らはそこ
でボーッとしていただけだろ?それに金なんていらない。私
はそんな汚い金で買えるような物じゃない」
エルピオンはもう一度睨みつける。
「なんだと…?!」
「エルッ!」
空から薄紅藤色の髪をした少女がエルピオン目掛けて降りてくる。
「ルカ?!どうしたの?宿屋にいるんじゃなかったの?」
「エルがなかなか帰ってこないから心配になって…」
ハルルカは錫杖をカタカタ震わせながらエルピオンを見る。
エルピオンは震えるハルルカの頭を魔法帽子の上から撫でる。
「エル、なんで撫でるの?」
「いや、なんとなく?」
「何となくで撫でないで」
ハルルカはトゲのある言葉でエルピオンに突き刺す。
「おい!この俺を無視するな!」
マルッシュはエルピオン達に叫ぶように言う。
「何?あの男…」
ハルルカは汚いものでも見るかのようにマルッシュを見る。
「なんか、このドラゴンを自分たちも一緒に倒したことにし
て欲しいそうだ」
「何それ、横取り?」
「横取りでは無い!一緒に倒したことにして欲しいだけ
だ!」
マルッシュは地面を蹴る。
「面倒臭いやつだな」
「そうね」
ハルルカは相手のパーティーにいる魔道士を見る。
「貴女、エリスじゃない?」
「もしかして、ルカ?」
二人ははしゃぐように喜ぶ。
「何?知り合い?」
「ええ、エリスは魔法学校で一緒だった同級生よ」
二人は近づこうとしたが、それをマルッシュが阻止する。
「お前、何人間みたいな反応をとっているのだ?下がれ!」
「ひっ!も、申し訳…ございません」
エリスは体を縮こまらせる。
「エリス、なんで?」
ハルルカは困った顔をする。
「なるほど、そういう事か」
エルピオンは地面を蹴って、高速で移動する。マルッシュが驚いていると、体制を低くしたエルピオンが目の前に現れ、みぞおちを喰らう。そこであばら骨が何本か折れる音がする。彼は血反吐を吐き、数メートル飛び、気を失う。
「弱すぎ。そんなんでよくここまで生きのびたな。いや、仲
間が強かったお陰か」
エルピオンはマルッシュのパーティーに声をかける。
「さあ、もう大丈夫だよ。首に着いているそれを見せて」
パーティー達は上着のボタンを外す。そこから何かしらの機械が現れる。
「エル、それって…」
「奴隷の首輪だよ。だろうかと思ったよ。今外してやるから
ちょっと待ってて」
「外すって、どうやって?」
「すぐだから、動かないでね!」
エルピオンは赤い刀身の短剣を取り出し、三人の首目掛けて
斬る。首輪は紐のようにポタリと地面に落ちる。
「はい、お終い。もう楽にしていいよ」
エルピオンはそのパーティーに笑顔を見せる。彼女らは力無くして崩れる。
「あ、ありがとう…」
「エリス!」
ハルルカはエリスに抱きよる。
「お取り込み中悪いんだけど、私は火山龍の首を持っていくね」
エルピオンは自分の身長と同じぐらいの火山龍の首を持とうとする。
「エル、重くない?」
ハルルカはエルピオンに近寄る。エルピオンは笑って「大丈夫だよ」と言う。
「頭はそこまで重くない。問題なのはこの巨大な体だよ」
エルピオンはパシパシと火山龍の体を触る。もう死んで数分経っているのにまだ暖かい。
「これは私が持っていくわ。後は…」
ハルルカは火山龍の親子を見る。見た感じ、こちらを襲う様子は無い。
母親はじっと子供を見つめ、帰るように誘導する。子供は
キィーキィーと鳴き、母親の元に飛び立つ。
「待ったな〜!」
エルピオンは火山龍の親子を見送る。
「これでよしっ!それよりルカ?この火山龍をどうやって運
ぶの?」
「こうするのよ」
ハルルカは詠唱魔法を唱えて、火山龍を消し去る。
「どこに行ったの?」
「異空間よ。魔道士は一人ずつ異空間を貰えるの。荷物はい
つもそこに閉まっているの」
「便利なものだね」
エルピオンは思わず、感心する。
「エル、早く行かなくっていいの?」
「そうだね。それじゃまた後でね」
エルピオンは火山龍の首を持って下山する。
◆❖◇◇❖◆
山を降りたエルピオンは街の人々の注目の的となった。そんなこと気にせずに、エルピオンは組織に向かう。
そのまま組織内に入った為、中の人はギョッとしていた。
「すみません、火山龍の討伐終わりました」
空いている受付の人に話しかけると、震えながら「は、は
い…」と応える。そして、裏へと消えていく。
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