丘に住む少女
エルピオンたちの驚きに少女は振り向く。すると彼女は笑顔になりくすくす笑う。
「ごめんなさいね。この子は私が契約している魔獣、ケルベよ。驚かせてごめんなさい」
彼女がそういうとエルピオンたちは体の力を抜く。彼女はエルピオン達を連れて彼女の家に招待される。
「ここが私の家よ」
それは丘にひっそりと佇む小さな家。家と言うよりそれは小屋に近い。しかしなぜこんな丘に家があるのだろう。
「さあ、どうぞ」
「ちょっと待てよ…」
シュンサクは歩みを止めて彼女を呼び止める。
「何か?」
「お前、この辺に住まう怨念の魔女なんだろ?」
シュンサクの言葉にエルピオンは彼女を見つめる。彼女は睨みつけるような顔をする。
あ
「バレちゃったか、まぁしょうが無いよね」
彼女は異空間から杖を取り出し、魔法の帽子を被る。
「あなた、どうして私が魔女だとわかったの?魔力なんて感じられなかったでしょ?」
「その魔獣が教えてくれたんだよ。『魔女様』て」
「ケルベ…そうだったのね」
ケルベは少し申し訳ない顔をする。しかし魔女は彼の頭を撫でる。
「いいのよケルベ。そんな顔しないで」
彼女はエルピオン達に向き直る。
「それで?この国の国王様に私を殺すように言ってきたのかしら?」
「私たちはそんなつもりではありません。私たちはただグレル草で侵された王女様を救いたく、解毒剤を探しているだけで…」
「グレル草?あぁ前にこの辺にいたあの子ね。アケレと間違えていた。それでその解毒剤が欲しいということかしら?良いわよ。中に入って」
彼女はエルピオン達を中に誘導する。中は実験室のように液体が入ったビーカーや試験管が並んでいる。液体は色々な色になっている。
「これらは?」
「触らないでね?中の液体、やばい物もあるから」
「毒とか?」
「そういうこと。ちょっと待ってて。すぐ作るから」
「君は一体?」
彼女は乳鉢を取り出し、いくつもの薬品を混ぜ合わせて行く。
「私は元々薬剤師。薬を作るなんて朝飯前よ」
「でも、なんで魔女なんかになってしまったのですか?」
彼女はハルルカの言葉に手を止める。
「私は、生贄にされたのよ。このケルベの餌としてね」
「やっぱりそうなんですね」
「そう、でもその時の私はまだ死にたくなかった。病気持ちの妹を残して死にたくは無かった。だから祈ったの。『死にたくないって』。そうしたらケルベは私を食べるどころか私と契約したの。魔女となって薬を作り続けろって」
「今でもケルベの言葉は?」
「いいえ、聞こえなくなっちゃった。もしかしたら私が祈ったからかしらね。もう一度祈りを捧げればケルベも答えてくれるかもしれないのにね」
魔女は泣きそうな笑顔を見せる。
ここまで読んでくださりありがとうございます!!
次回もお楽しみに




