殺戮の悪魔
キュリカは不敵に笑う。
「マヌスの野郎…!魔王の力をどうしたいんだよ?!」
「そういうこと…あのお方はとても優しい人だわ。人間に襲われている弱かった私たちをあのお方が力を分けてくださったのよ。だからあの人のために働かないとね」
キュリカは笑顔になる。アーテルスは憎しみを持った顔をする。
「しかし、あんたの兄弟はどこに行ったのかしらね。全然戻って来やしない」
「確かにソウダ。ドコデ何してるのか?しかし、姐さんが気にするコトデハ無いですよ」
「確かにそうね…!」
キュリカが落ち着いた顔をすると前方から何かが飛んでくるため彼女は体をかがみ避ける。
「なんなのよ!」
横たわるそれはキュリカの部下の男と同じ仮面をつけた血だらけの男。その姿に彼は絶叫し、仮面を外す。
「クリケラ!どうしたんだ?!なんで?!」
「兄…さん……あいつ…やばいよ……ごめんね…」
彼は力尽きたのか動かなくなる。
「クリケラ!しっかりしろ!クリケラ!!」
「そいつ…クリケラというのかよ」
エルピオンたちの後ろから殺気に似た気配がする。エルピオンが振り返ると赤い瞳を持った青年が暗闇から姿を見せる。
「ヘルガ…お前…」
ヘルガは静かにエルピオンたちの前に立つ。彼は尖った牙を見せて不敵に笑う。
「お前は何者なんだよ!」
「俺?俺は魔王を護る騎士ー殺戮の悪魔ー、ヘルガだよ!」
ヘルガは焦げてしまっている翼を広げて彼らに向かう。鋭い爪で彼らを引っ掻くが、それは空を斬る。
「クリケット!あんたは弟を連れて隠れてな!」
「こいつを倒したら埋葬する!こいつも道ずれにしてな!」
クリケットは高速で動き、背中にある片手剣を取り出してヘルガに向かう。その剣はヘルガの腕を切断する。
「ありゃ?」
「もう一本!」
クリケットは剣を振りかざすが受け止められる。彼は絶句する。先程切り落としたはずの腕が再生を果たしている。
「腕が、元に戻って…!」
「残念だったね。俺は死ぬ事がないバケモノでよ?理由は昔に不死の鳥と呼ばれた鳥を捕食したことでこうなっちまったんだけどな。今じゃ、瞬時に取れてしまった腕でもすぐに再生できるんだよ」
ヘルガの笑顔は不気味に見える。その瞬間、ヘルガはクリケットの首に噛み付く。彼は叫ぶがビキビキと骨が砕かれる音がする。完全にヘルガはクリケットの首の骨を噛み砕く。
そして彼の肉を貪り食う。滴る血液をすすりながら首周りの血肉を喰らい続ける。
「お前…私の部下を…よくも!」
キュリカはヘルガに爪を突き刺す。しかしヘルガはそれに動じない。ヘルガの瞳から赤い涙が零れ落ちていく。
「限界だ!ヘルガ!下がれ!」
アーテルスは叫ぶようにヘルガに声をかける。キュリカは爪を引っこ抜きヘルガから距離を取る。
「無駄だー悪夢の囁きーこれで終わりだよ」
彼女に向けられた魔法だが、キュリカは動揺を見せない。
「何よそれ?効かないわよ…!!」
彼女は目を見開き、血管がボコボコと浮かび上がる。
「こいつは毒魔法さ。いくら不死身でも、こいつだけは逃れれない。さようなら、小さな吸血鬼さん」
キュリカは苦しみながら地面に転がる。彼女が死に絶えたのはそれから10分後だった。
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