王女
セリコは自分の名前をエルピオン達に打ち明ける。その反応にどう答えていいのかエルピオンは戸惑う。
「偽名を使っていたことに文句が言いたいとか?」
「そんなこと言ってない。ウルベルトが師匠とどういう関係なのかがまだよくわかってないだけ」
「詳しくはまた後でね。このバカげた処刑を止める。ただそれだけさ」
ウルベルトは青い炎を手に宿し、兵士を焼き尽くす。彼の顔は歓喜に満ち溢れている。
「エル、変なやつだと思うけどあまり気にするなよ。元からそういう奴なんだよ」
「師匠は彼について詳しいの?」
「詳しい訳じゃないけど…ただ俺と互角に戦えるやつだと言うこと、俺と昔次期長を争ったやつだということかな?」
シュンサクの言葉にエルピオンは彼の見る目が変わる。彼の動体視力、動き、筋力…全てを見て完璧。エルピオンに足りないものばかりに、愕然とする。
しかしエルピオンはあることを思い出す。彼とはじめて会ったのはあの場所で、エルピオンがシュンサクの弟子であることを伝えた時、彼は「逃がしたい」と言った。エルピオンが弱いとは一言も言わなかった。もしかしたら言えなかったかもしれないが、彼の瞳にそんなこと書かれていない。
「ついでに言うが、あいつはどんなに弱い戦士だろうが馬鹿にするような言葉は言わない。強い者には賞賛するけど弱い者には強く慣れるようにアドバイスを言う。あいつはそんなやつだよ」
「そうなんだ…」
エルピオンは彼のことをジッと見つめる。彼のように強くなりたいと思うのだ。シュンサクのような力と彼のような強き心を。
「それよりエル、貴女足の毒大丈夫ですか?」
「そういえば…」
エルピオンは足を見ると毒蜘蛛に噛まれた後が無くなっており、綺麗な足になっている。
「古傷まで無いし…そこまで治さなくても…」
「レディーの足は綺麗な方がいいだろ?」
突然戻ってくるウルベルトにエルピオン達は驚く。
「お前は本当に突然戻ってくるよな」
「お前には言われたくないよ」
二人の言い合いに喧嘩が起こりそうになり、慌てて引き離す。しかし兵士は減ることがない。さらに増えていく。
「これじゃあ、らちがあかないぞ!」
「燃やすか?」
「これ以上殺す訳には行かないだろ!」
「魔女の仲間を殺せ!」
「殺ってしまえ!」
襲いかかる兵士に鶴の一声が響き渡る。
「お止めなさい!」
突然乱入してきたのはこの国の王女、アルテであった。
「アルテ様…」「王女様…」
住民は慌てて白馬に乗った王女を間に入れる。顔を赤く染め、今にも倒れてしまいそうな彼女。その脇にはヘルズとサンデスが寄り添っている。
「君たち大丈夫そうだね…良かった」
「これは一体どういうことです!父上!」
アルテは国王に詰め寄って行く。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
ついに王女が登場!ここから急展開です!
次回も読んでください!




