死にたくない
死んだ女性を見たエルピオンはむせかえりそうになる。
「エル!大丈夫ですか?!」
「ルピどうしたの?!」
「死んだ…女性を見た」
「エルでもそんなことあるんですね…」
「昔を思い出すんだ…人がたくさん死んでいくあの光景が…」
エルピオンは本当に吐きそうになる。エルピオンの脳内にあのトラウマが砂嵐の中から薄らと見えてくる。
「おい!到着だ…あばよ魔女」
エルピオン達は兵士の人たちに腕を掴まれて荷馬車から降ろされる。
彼らの誘導に文句を言わずに連れられる。焦げ臭い匂いがする木材の柱の前に立たされて足元には焚き火をするかのように石油が染み込んだ木材が置かれている。
その光景に完全に殺しに来ていることが分かる。
「やだやだやだー!!やめてよ!」
ネールは暴れて抵抗するが兵士に腹を殴られて大人しくなる。
「おい!ネーニャはまだ未成年だぞ!」
「そんな者、魔女には関係ない!」
「はぁー?!」
エルピオンは大暴れをしようと試みるが足に痛みが走る。足元を見ると毒蜘蛛がエルピオンの足に噛み付いている。
「この蜘蛛…魔女の審判か?」
「そうさ!魔女には持ってこいの処刑蜘蛛さ!」
エルピオンたちの足元を蜘蛛が徘徊する。エルピオンは足から来る激痛に力が入らなくなってくる。
「紳士の皆様!今から魔女を火刑に処す!火を持っている皆様!前に」
兵士と一緒に松明を持った男たちが出てくる。その瞳には憎しみや恨みの色が見える。その姿にエルピオンは昔の自分が見えてくる。
動揺と恐怖に今すぐにも逃げ出したい。腕に力を入れようとしても毒が身体中に回っており、力が入らない。
「やめ…て……やめて…くだ…さい!死にたくない!!!」
エルピオンは叫ぶと火が投げかけられる。足元に火がつきエルピオン達の体を炎が焼いていく。
「痛い!痛い!痛い!痛い!!!」
ハルルカの叫びにエルピオンは彼らに復讐を誓う。
「呪ってやる!お前ら全員!同じ目に遭わせてやる!」
エルピオンの瞳が狼のように鋭くなる。すると途端にエルピオンとハルルカ、ネールの体をおおっていた炎が消え去る。火が消えた処刑場にはエルピオンの光り輝く瞳が鮮明に見える。
「何が起きてるの?!」
「火をつけろ!明かりを灯せ!」
兵士達が松明に火をつけようとする。
「松明なんて必要ないよ…」
会場に聞こえる声に全員が恐怖を覚える。松明に火を灯した兵士。だが、その炎は彼の体を追い尽くす。
「ギャァァァァァア!!!熱い!熱い!熱い!!」
青い炎が彼の全身を焼き尽くす。それを見た人たちは絶叫する。すると他にも人々が焼かれて行く。
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