火刑
上から降りてくるのはエルピオン達を捕まえたあの男だった。
「あっ!壁すり抜け男!」
「なんだそのあだ名は?!」
彼は驚いた表情をするが咳払いをしてエルピオン達に向き直る。
「それで?最後の晩餐は決まったか?」
「そんなものいらないよ!私たちを早く解放しろ!」
「そんなことするわけないだろ?笑えてくる。ないなら処刑の時間までここで大人しくしてろよ?見張りを続けろ」
「了解した」
彼はすぐに立ち去る。彼が出ていったことを確認すると見張りの彼がエルピオンと向き直る。
「自分はセリコと言う。昔にシュンに世話になった者だ。まさかあの人が魍魎になってしまうなんてな…」
セリコは落ち込むかのように鉄格子を掴む。
「どうにかして君たちを逃がしたい。だがこの上にも見張りがいる」
セリコが悩んでいるとエルピオンは声をかける。
「とは言ってもどうせ私たちは処刑として外に出される。その時に仕掛ければ…」
「無理だ!そこでは上官の目が届く。下手な動きをすればその場で串刺しの刑だ!難しいぞ」
そんな話をしていると上の扉が開かれる音がする。
「セリコさん!魔女達を処刑所に運びますよ!」
「今行く!」
セリコは返事をすると牢の鍵を取り出す。
「しばしの辛抱だ。もう少しだけ耐えていてくれ」
セリコは檻の扉の鍵を開けてエルピオン達を連れて行く。
◆❖◇◇❖◆
外に出たエルピオン達は焦げ臭いと嗅いだことの無いような独特な臭いにエルピオンは鼻をつまみたくなる。
「何この匂い!」
「人の焼ける臭いと死臭の臭いだ…」
「あんたは大丈夫なの?」
「慣れた…」
「あぁ…」
エルピオンは唖然と小さな言葉が零れる。エルピオンたちと他に絶望した顔をした女性たちが荷馬車に次々乗り込んで行く。中には小さな子どもの姿も。
「あんな小さな子まで…!みんな殺されるんですか?!」
「そうさ、こっからは自分との話は終わりだ。これ以上は気づかれる」
セリコはエルピオンたちから離れる。押し合うように荷馬車に押し込まれて行く。
「これ…狭い!!」
「苦しいです〜!!」
「うぎゃ〜!!」
身動きが取れないまま、荷馬車は出発する。
「こんなんじゃ誰か落ちるだろ?!」
「魔女は黙ってろ!」
「だから魔女じゃないし!」
輸送者はエルピオンの言葉を無視してそのまま走る。荷馬車が止まると酷い悪臭が漂う。
女性が荷馬車から降ろされて一列に連れて行かれる。
「その三人は火刑に処すから別の場所だ!連れて行け!」
エルピオンたちだけ取り残されて荷馬車は発車する。遠くなっていく彼女たちがいる場所。ほかの人たちが見えない死角の場所に首の無い女性たちがゴミを捨てるかのように投げ捨てられて行く。
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