猛毒
壁に叩きつけられたエルピオンは地面に落ちてもピクリともしない。そこに偽マヌスは近づいてくる。
「エルに近づかないでください!」
ハルルカは魔法を発動させる。水と炎の融合魔法を発動させ煙幕を作る。
「今頃目眩しをしてなんの意味があるんだ?」
「意味ならあるぜ!」
煙幕の中からエルスとアーテルスが勢いよく突っ込んでくる。奇襲をかけたつもりだが偽マヌスは風魔法を発動させて煙幕が晴れる。エルスの槍は偽マヌスに当たらず蹴り飛ばされる。アーテルスは剣を振るが上手く避けられ肘がみぞに入る。
嘔吐しそうな痛みだか偽マヌスは休む暇なんて与えてくれない。後頭部を捕まれそのまま地面に叩きつけられる。
「陛下よ。あんたにはこれをプレゼントだ。たっぷり味わいなよ?」
偽マヌスは針の付いた蔓をアーテルスの首に差し込む。得体の知れない液体がアーテルスの体内に入り込むと鋭い痛みが体を巡る。身体中から赤い湿疹が浮き上がる。
エルスは危険な気配がして槍を使って蔓を斬り、アーテルスをハルルカの元へ運ぶ。
「これは一体?!」
「それは俺が配合した致死性の猛毒さ。毒性に強い悪魔でさえ自己回復ができないやつだから注意してね?」
「サチエペの毒か?」
「サチエペ?なんですかそれ?」
「サチエペはこの世界にしかない猛毒を持った花さ。その花の周りには草木が一本も咲かない」
「それやばいじゃないですか?!」
「えっ!テル死んじゃうの?!ネーやだよ!」
「でも解毒剤が無いわけじゃないよ。エルペレンという花の樹液があれば助かるよ」
「もっと難しいじゃないか!」
「話に追いつけません」
「お前、それも知らないのかよ」
「はい…」
「エルペレンは奇跡の花だよ。100年に一本咲けばいい方だよ」
「それじゃあ、テルさん助からないのですか?!」
「ルカ!」
シュンサクは高速で動いてハルルカの前に小さな小瓶を見せる。
「これって?!魍魎!どこでこれを?!」
「何かあってもいいように採取しておいたんだ!使え!」
シュンサクは刀を持ち、偽マヌスに向かって行く。
「シュンさん!」
ハルルカは叫ぶがシュンサクには聞こえていない。それより彼自身には歓喜のような喜びが込み上がってくる。
いつも以上のスピードを出し、偽マヌスとの間合いを詰めていく。
「シュンさん、いつもより早いような…気がするのですが、気のせいでしょうか?」
「気のせいじゃない。あいつ、急にどうしたんだよ」
「それよりその樹液使ったら?テル死んじゃうよ」
「そうですね。リーダーお願いがあります。エルをこちらに運んでもらえないでしょうか?」
「それは構わないよ、待ってろ」
エルスはぐったりしているエルピオンを抱えてハルルカの元へ運んでいく。
シュンサクの速度を見たエルスは足でまといになるので近づくことすら出来ない。何とかシュンサクが勝つことを祈ることしか出来ない。
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