幻覚の蔓
エルピオンが驚いているとシュンサクがあるものを見つける。
「エル!お前が持ってる光の結晶…。ここで使えるのじゃないか?」
シュンサクが指差すのは頑丈に閉じられた扉。そしてその穴には光の結晶を埋め込む形をしている。エルピオンは袋を開けると光の結晶が吸い込まれるように穴に嵌っていく。
全て揃うと扉が開かれる。みんなが集まると目を閉じないといけないほどの光に目を眩ませて全員が倒れる。
◆❖◇◇❖◆
体が濡れる感触にエルピオンは目を開ける。小さな割れ目から水が漏れだしている。この地域は砂漠一択なので水がこんなに沢山あるはずないと頭で考えながら体を起こす。体はびしょ濡れになって髪まで水浸し。
「ここは…一体?」
周りを見渡すが人がいる気配がしない。横並びで二人しか歩けないほどの広さしかないその一本道を見つめる。ひび割れているが崩壊する程ではない。しかし壁を蔓が絡みついている。
「私たちは確かあの扉で…みんなを探さないと…」
エルピオンは歩き出す。水が溜まっているのは一箇所のようだ。濡れた身体は水分を吸っているのか何故か重たい。光が見えてきてエルピオンは手を伸ばす。
道を抜けるとそこは霧で視界が悪くなっている。
「何ここ?!」
エルピオンが後ろを振り向くと先程歩いてきた場所が無くなっている。
エルピオンが疑問に思っているとその先に声が聞こえる。エルピオンは武器を構える。しかし霧から鮮明に見えてきたのは信じられない人だった。
「お兄…ちゃん?」
エルピオンが驚いていると兄ーセセルーはエルピオンに驚いた表情をする。
「ルピ、何してるんだ?飯の時間だぞ?」
セセルはなんの躊躇もなく不可解なことを言う。
「何言って…?!」
「ほら、今日はお前の好きなシチューだぞ。母さんが腕によりをかけて作ったんだぞ」
「私も一緒に作ったんだよ」
後ろからエルピオンの姉ーエシリーが顔を見せる。
「お姉ちゃん…!生きてたの?」
「何言ってるの?私は最初から生きてたでしょ?どうしちゃったの?」
エルピオンは驚きながらも周りを見ると先程の霧が晴れて生まれ育った街が見えてくる。
「私…夢見てたの?」
「ほら飯だよ。この歳になってもお兄ちゃんが居ないといけないのかよ」
セセルがエルピオンに手を伸ばす。エルピオンは戸惑いながらもその手を掴む。セセルのてから体温が感じられる死者の手とは違う。思わず涙が溢れそうになる。
「ーあっちが夢なんだね!ー」
エルピオンが掴んでいるのは蔓でできた手。エルピオン達はあの光で目をくらまし、幻覚を見せる蔓に絡まれているだけ。
「意外と簡単だったな捕まえるの♡あとは…あの魍魎だけだ。いらっしゃい…シュンサク♡」
愛おしそうに笑うのはマヌス本人。シュンサクを誘うように誘う蔓にシュンサクは目を光らせる。
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