火の山
使い方を聞きそびれたエルピオン達はアリーゼを呼ぶが応答が無い。出てくるのは気まぐれのようだ。
「貰ったはいいですけど、本当にどうしましょう」
しょげるハルルカにエルピオンはなんとかなると励ます。
最後にお世話になった集落のみんなに声を掛ける。
「皆さん、お世話になりました。私たちはこれから火の山に向かいます」
「気をつけて行くんだよ。あそこは本当に危険だからね」
「はい!気をつけます」
すると、奥から武装をしたエルスがやってくる。
「エル、俺も君たちに同行させてくれ。きっと役に立とう」
「エルスお兄ちゃんも行っちゃうの?」
バッファはエルスに駆け寄る。
「バッファ、お前はもう一人じゃない。俺が居なくてもお父さんと上手くやるんだよ」
エルスはバッファと目線を合わせて言う。バッファは涙を堪えきれず泣き出す。エルスは優しくバッファの頭を撫でる。優しいお日様のような優しく大きな手。その大きな手でバッファは泣き止む。
「お兄ちゃん、この争いが終わったらまた来てよ?約束だよ」
「あぁ、そうだな」
二人は指切りをしてまた会うことを誓う。
そしてその集落を離れたエルピオンたち。彼女たちは暴れ馬に跨り、馬を集落のみんなから借りた。
目指すは火の山。
◆❖◇◇❖◆
長く移動したエルピオン達は暑さと疲れが見えてきた。
「師匠……まだつかないの〜?」
「まだまだ先だ。これでもまだ涼しい方だぞ」
「嘘ですよね?」
ハルルカは額から汗が滝のように出る。
「これなら違うところから行けばよかった…」
「エル、お前何か言ったか?」
「いえ何も…」
シュンサクは人より耳が良かったため、エルピオンから地獄耳と呼ばれていた。
「それならこの薬を飲め、少しは涼しくなるぞ」
水色の液体が入った小瓶をエルピオン、アーテルス、ハルルカ、ネールに渡して行く。
「ありがとう」
エルピオン達はそれを飲み干す。すると、先程までの暑さがなくなる。
「あれ?涼しい」
「これにはヒエチョウという冷たい蝶のエキスを使った一定の間だけ体を冷やしてくれる薬だ」
「虫の…エキス。ですか…?」
ハルルカは少し顔が青ざめる。
「なんだ?薬が効きすぎてるのか?」
キョトンとするエルス。エルピオン達は苦笑いをするしかない。
「お前ら、着いたぞ。早く来い」
シュンサクは山の麓から見下ろしてくる。エルピオン達は早足で向かうと、クールン族が群れを生して人のように暮らしている。出入口と思われる場所には見張りをしている者がいる。
「師匠、あれ見張ってるの?」
「そのようだな。奴らは仲間以外この場所に入れないようだな」
「そういう事だ!」
エルピオンたちの後ろからクールン族がハルルカ達を取り押さえている。
「何者かがこちらに向かってることは知っていた。まさか森の守り神の場所からとはな」
彼はエルピオンとシュンサクを槍で突きつける。
「仲間が殺されたくなければ一緒に来てもらうぞ」
エルピオン達は仕方が無く、奴らに従った。
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