表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/298

大火災

 村ではキャンプファイヤーをするかのようにタワーを作り、火を焚く。集落のものは火種を木材に近づけるが、火が燃え上がらない。


火よ燃え上がれ(ファイヤー・インル)!!」


 アーテルスは豪快に炎を上げて、火柱のように燃え上がる。


「ちっと強すぎたか?」


「これ集落燃えませんか?」


「大丈夫だよ。家の木は簡単に燃えたりしないよ。()()()の時でも大丈夫だったから」


「大火災?ですか?」


 ハルルカが聞き返す。バッファはハルルカ達に説明をしてくれる。


「ここから西に真っ直ぐ進んだところに火の山(ファイヤーマウンテン)という山があるんだ。そこはとても暑くて普通の人は住むことが出来ないんだ。だけどクールン族っていう暑い環境でも居れる一族がいるんだ」


「クールン族?どこかで聞いたことのある一族だな」


「ネー知ってるよ!リザードンのような姿をした一族でしょ?」


「そうだよ。よく知ってるね」


「竜人族と犬猿の仲だったって聞いてるから。お母様から」


 ネールは少し悲しそうに話す。ネールにはもう居ない家族なのだから。


「話を戻すよ。あの一族には守り神が居るんだ。フェニックス様って言う神様がね。君たちが倒れていた場所にも守り神が存在するよ」


「フェニックス様?もしかしてあの空を飛ぶ火の鳥の事?」


「そうだよ。昔からクールン族が讃えていたんだ。だけど魔族の奴らがここを支配し始めた時、フェニックス様は変わってしまったんだ。突如、人を襲うようになってしまったんだ」


「人を?まさか…!」


 アーテルスは嫌な予感をする。


「テルさんが想像した通りだと思うけど、あの魔族たちに悪に染められてしまったんだ。フェニックスは暴れ出し、各集落が炎に呑まれ、大火災が起きたんだ」


「多くの人がお亡くなりになられましたね」


「うん、僕の母さんだってその火災で死んだんだ。集落の長のあの人だってあの火災で家族がみんな死んだんだ。僕は全て物に絶望したよ。でも家だけは無事だったんだ。それだけでも救いだと思うよ」


 バッファは少し笑って見せる。しかしその笑顔は悲しそうにも見える。


「強いんだね」


 あまり聞かないネールの声にハルルカは驚く。


「そんなことないよ」


「ううん。バッファは強いよ。ネーはお兄ちゃんが死んで、動揺していたんだ。それなのに君は強く生きようと頑張っている。ネーも大人にならなくちゃね」


「無理して大人にならなくて良い」


 エルピオンと共にシュンサクが戻って言ってくる。


「生き物は年齢や見た目だけで大人だと認識される。それと他に上の者が居なくなったら大人になる。そんなことして無理して背伸びをしなくても良い。無理すればするほど心は壊れてくる。そんなに焦らなくても良い。ゆっくりでいい。今はまだ子供でいなさい」


 何気ない言葉なのにネールの心にそっと触れて来る。


「君、ここに来るまでにちゃんと心から笑えていたか?」


「…」


 ネールは少し黙って笑顔を崩す。


「笑えてないな。ずっと作り笑顔をしていたようだな」


 アーテルスはそっとそう言う。


「そうだね。ネー、笑えてないかも。それより笑い方忘れちゃったかもしれない」


「大事な人を失うのは、自分にも影響が出てしまう。辛く、悲しいものなんだ」


 表情は分からないが、優しくネールに声をかける。


「泣きたい時には泣きなさい。それが、我々言葉を話す種族に与えられた者なのだから」


 その言葉を聞き、ネールは大粒の涙を零す。ウルファスが死んだ時よりも多く。エルピオンはネールの姿を見て、自分もあのように泣ければ、辛くないのだろうと思う。エルピオンもあのようにまた泣けるのだろうかと、空を見上げる。

 空は天の川のように静かに流れていて、何も答えてはくれなかった。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

次回も読んで下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ