師匠
狐お面の男はアーテルスに少し近づく。だが、すぐさまハルルカは攻撃の態勢をとる。
「ルカ、大丈夫だ。こいつは味方だ」
「そうなの?」
「お姉ちゃん!騙されちゃだめだよ!」
すぐに声を荒らげてバッファは言う。
「そいつは僕の父さんを殺したんだ!母ちゃんだって…!」
悔しそうに俯くバッファにハルルカもどうしていいのか分からない。誰の言葉を信じればいいのかを。
「ーどうしよう。誰を信じれば…!ー」
頭を抱えたい程悩むハルルカ。
「信じれるものがないなら、自分を信じろよ」
ぼそっとアーテルスは言う。ハルルカはアーテルスを見るが、目を合わせてくれない。
ハルルカはアーテルスの言葉を胸に止める。信用できるものがないなら、自分を信じる。ハルルカはその時にエルピオンの言葉を思い出す。魔王城でヘルさんが言っていた話の時、エルピオンは「師匠」と言葉を漏らしていた。そして彼の姿を見る。
「ーえっと確か、狐のお面をつけていて、龍が渦巻いた着物を着ているー」
彼の姿とエルピオンの師匠と同じ姿をしている。
「彼は、敵じゃない…」
ハルルカは持っていた杖を下ろす。
「お姉ちゃん。そんな…」
悲しそうに言うバッファにハルルカは申し訳ない気持ちで彼を見る。
「まさか君たちがこちらの世界にやってきてしまうなんてな。驚いたよ」
「それはこっちのセリフでもあるよ。あんた、エルには会ったのか?」
「ああ、ヘマをしたようだな。だが、大丈夫だ。すぐ目が覚める」
「目が覚めるって?」
すると、風が走るように草木の音が近づいてくる。
「ほらな。少し伏せていなさい」
アーテルスとハルルカは体勢を低くする。
そのタイミングで、人影が飛び出してくる。煉獄の炎が飛び交い、狐のお面の男と剣を交える。
攻撃を止められ、少し離れると、誰だか分かる。
「師匠、久しぶり!会いたかったよ!」
嬉しそうにするエルピオン。彼は呆れるように息を吐く。
「エル、もう少し落ち着きなさい」
「落ち着けないよ!もうワクワクしてたからさ」
「お前な…」
脱力する狐のお面の男。
「そういえば、あんた名前は?」
「私か?私はシュンサク。シュンでいいよ」
「これからよろしくな、シュン」
◆❖◇◇❖◆
あれからここに居た人々にシュンサクは説明をする。ここに居た人々が生きていること。監視はしているが、別に報告をしている訳では無いことを。
「なら父さんはどこ?ここに連れてきてよ」
「もちろんだ」
シュンサクはワープゾーンを生み出し、そこから人達が出てくる。
バッファはその中にいる中年の男性に抱きつく。
「父さん!」
「バッファ!無事だったか」
親子の感動の再会に、ハルルカ達も喜びを見せる。
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