見張りの魔族
バッファの後を追い掛け、小さな小屋の中に入る。
「この下だよ」
バッファは地下への道を開ける。古臭い音が鳴り、開かれる。梯子を使って下に降りる。
中にはたくさんの種類の武器が転がっていたり、立て掛けてあったりした。
「結構沢山あるんだな」
「うん、ほとんどの持ち主は死んでしまったんだけどね」
バッファは散らかっている床を片付ける。
「ここにおいて。ここなら大丈夫だから」
「すまないな」
アーテルスは謝りながら持っていた武器を置いて行く。
「へぇー、たくさん武器があるんだね」
「もちろんだ。もし襲われた時に防御になるからな」
「そっか…」
少し寂しそうにバッファは言う。彼の過去に何かあるのでは無いのかと思ったが、辛いものであったら聞きにくい。
◆❖◇◇❖◆
二人は地下室から出てくる。外はザワザワと声が聞こえる。
「何かあったのか?」
「たぶん奴らがくる時間なんだよ。急がないとここがバレる」
バッファは急いで地下への扉を閉める。そして絨毯を敷いて隠す。
二人は落ち着いて戻る。
「町長様、戻りました」
「おかえり、良かった間に合った様だな」
すると、突然地鳴りが起こる。
「なんだよこれ!」
「奴らが使ってる暴れ馬だよ!」
走ってくる馬は赤い色をしており、怒っているかのような顔つきをしている。その背に乗る魔族も鬼のような見た目。
勢いよく走って来る馬を避けるように人々は逸れる。そして魔族はハルルカたちの前で止まる。奴らはハルルカ達の顔を覗き込むように見てくる。
「おい、こいつらじゃないか?あのお方が言っていた奴らって」
「本当だ!こんなところにいたのかよ!」
奴らは馬から降りると、ハルルカとネーナの顔をジロジロ見る。
「こいつ意外と可愛い顔してますね!」
「そうだな!こいつら連れてっていいかな?」
「いいだろ?あいつ今いなさそうだし」
ヘラヘラ笑う魔族達。周りの民を見ると、全員が目を逸らす。やはり彼らに誰も逆らえないようだ。
すると、真っ黒なオオカミがやって来る。そして人間の姿に変わる。
「お前ら!またこんな所にやって来て!」
黒い髪をなびかけながら恐ろしい顔をしてやって来る。
「アニキ!ちょっくら獲物を取りに…」
「何が獲物だ!早く持ち場に戻れ!やつがどこにで見てるか分からないんだぞ!」
「でもよ…」
「でもじゃない!私だってお前らが死ぬのを見れるほど心は強くないんだぞ!」
「でも、見つからなければ殺したりはしないって言ってませんでした?」
「それに、まだあいつの気配だってしてませんよ?」
「アホか!あいつは気配がしないんだぞ!」
「「え?」」
二人の魔族はハルルカ達から離れると、後ろに下がる。そのタイミングで、二人の首が吹き飛ぶ。地面に黒い血液が飛び散る。魔族の血液は真っ黒な血の色をしている。
「だから言ったよな。次見つけたら殺すって」
純白の刀についた血液を降ってはらう。彼は狐のお面をつけて龍が渦巻いたような着物を着ている。
「すまない。何度も戻るように行ったんだ」
「言い訳はいい。その馬を置いてさっさと立ち去れ!」
お面をカタッと音をさせて魔族に振り向く。
「わかったよ」
魔族はオオカミに姿を変えて立ち去る。
ハルルカはお面男の目を盗んで、バッファに小さな声を出す。
「あいつは何者?」
バッファも同じように小さな声で答える。
「あいつがここを見張っている魔族だよ。恐ろしい程強いんだ。手を出さない方がいいよ」
ハルルカはバレないように透明にした杖を構える。小さな声で魔法を唱えようとした瞬間。
「お嬢さん。その杖をしまって貰えませんか?」
ハルルカは息を飲んだ。見えるはずのない視覚のところで構えていたはず。それなのに彼は見えているかのようにハルルカに伝える。
「ご安心下さい。私はあなたたちの敵ではありません」
「証明して見せて。貴方が敵ではないことを」
ハルルカは睨みつけながら彼に問う。
「久しぶりだな。魍魎の男よ」
ハルルカはえっと思いながらアーテルスを見る。
「元気そうでなによりだよ。魔王、アーテルスよ」
ここまで読んでくださりありがとうございます!
やっと回想シーンではなく本人として彼が出てきました。彼はエルピオンのことを見たのでしょうか?
良かったら次回も読んでください。




