復讐の旅
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エルピオンが国を出た後、雨が降って来た。防水性のローブを買っておいて正解だったと、彼女は嬉しく思う。しとしと降る雨が10年前のあの時を思い出す。リオン国から運び出される死体から父、母、兄を探していた時も、このような雨が降っていた。だが、家族の遺体は見つけられない。周りではすすり泣く声がある。だが、エルピオンは泣くことは無かった。目の前で自分の最愛の姉を失ったのだ。これ以上の悲しみなんて無いはずだ。自分に言い聞かせるように胸に着けているロケットペンダントを握りしめる。その中には家族みんなで撮った写真がある。それが唯一の彼女の心の支え。ふらついた足取りで歩き回る。そのせいでか、周りをよく見ていなかった。彼女の死角から涎をダラダラさせながら鬼のような人間のような生き物が現れる。奴が口を開いた瞬間、エルピオンは死を連想した。そして心の中で、姉の元へ行くことを想像しながら目を瞑る。だが、痛みが来ない。不思議に思いながら目を開けると、奴は口を開けた状態で槍が貫通している。後ろを見ると、髪を金髪にした金色の目の若い男が奴を刺している。奴の口からボタボタと青い液体が垂れている。若い男はゆっくり息を吐き、体に血管を浮かび上げ真剣な表情で奴を持ち上げ投げ捨てる。グォッ!と奴は声を漏らしたが、彼は奴の首を切断する。
「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
エルピオンは何も答えない。彼女の目には光が宿っていないのだから。彼は呆れたのか、それ以外なのか、ため息を吐く。
「その命、無駄にはするなよ」
彼は布切れで奴の青い液体を拭き背中に着けて立ち去る。
当初のエルピオンには意味の分からないことだった。
あの後に、住民の人達に彼の事を聞いたら、軽々答えた。彼は世界を一周しようと旅に出たらしい。彼は五年をかけて帰ってきた。彼は「広い水の大地があった」と言って、帰って来たらしい。彼の名前は、エルスだそうだ。また会えたら、あの時のお礼を言いたいものだ。
◆❖◇◇❖◆
走行しているうちに、雨足が強くなる。水が蒸発する影響なのか、霧が発生して視界が悪くなる。雨の匂いで鼻も上手く機能しない。後ろから物音がして、エルピオンは左に寄る。
後ろから馬車が走って来るとエルピオンの前の方で止まる。
何事だとエルピオンは馬車を見る。すると中から幼女が降りてくる。テクテクとエルピオンに近づく。
「お姉さんどこまで行くの?」
「街までさ」
「良かったら乗らない?もう時期暗くなるよ。それに、この
辺には悪い魔物が住んでるからとても危険だよ。うちにおいでよ」
ペラペラとたくさん話す幼女。エルピオンは周囲に耳を傾ける。確かに彼女の言う通り、近くで何かが引きずるような音がする。これは尾がある魔物の音だろう。エルピオンはここで戦闘をする訳には行かないと目を細め、幼女の気遣いに感謝をして、馬車に乗せてもらう。馬車にはミルク樽が六個あり、やや狭いが座れないことは無い。馬車を動かしていたのはかなり歳のいった老人だった。
「一人旅の時に済まないな。娘がどうしても乗せたいと言っ
て聞かないからの」
老人は優しく申し訳なくゆっくり話す。
「大丈夫だ。少しだけ乗せてもらうよ」
「なんなら泊まってよ。その方が断然いいよ!」
幼女はエルピオンにしがみ着きながら言う。
「これこれ。旅人さんが困っているよ」
ほっほっと老人は笑いながら言う。同時に不安そうな声もする。エルピオンは笑顔を作る。
「いや、そうさせてもらうよ。泊まれる場所が無ければ野宿
するつもりだったから」
エルピオンは愛想笑いをする。
「ヤッター!」
幼女は大いに喜ぶ。後から幼女は自己紹介をしてアンナと名乗った。老人はボーマンと名乗る。エルピオンは小さな集落へ招かれた。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
エルピオンが国を出て、旅を始めましたね。今回の作品は自分的に、長くなりそうな予感です。
学校も無く、暇を持て余していたので作品が進みに進みまくってしまい、週一で良いのだろうかと思い始めました。( ˊᵕˋ ;)
良かったら次回も読んでください。