人狼の定め
コロに向かって突進するウルファス。だが、彼は風のように消える。
「どこに?!」
コロは当たりを見渡す。はっと目を目を開く。
「上か!」
空を見上げると、ウルファスは高く飛び上がっていた。
「馬鹿なヤツ!空中戦で私に勝てると思ってるのかしら!」
コロはナイフを投げつける。だが、それはウルファスに当たらない。
「なぜ!」
驚いているのも束の間、決着は着く。ウルファスはコロが投げたナイフを咥え、首を切り裂く。彼女の顔は瞳孔が開いた状態で地面に転がり、灰になって消えて行く。
ウルファスはナイフを落とし、人間の姿に戻る。少し薄くなっているような気がする。
「ウル!お前…」
「バカヤロー!」
エルピオンが声をかける前に魔王は声を荒らげる。
「急に大きな声を出すな。びっくりするだろ?」
「お前、なんて馬鹿なことをしたのかわかってるのか?」
「わかってるよ。人狼が狼に戻ることは死を意味することぐらい」
「死?何?ウル、お前死ぬのか?」
エルピオンは今の状況に頭が追いつかず、混乱をしている。
ウルファスは静かに頷く。すると、彼の体が光の粒子と化する。彼は歩いてネーニャに近づき、身体の傷を癒す。だが、もう足音すら聞こえない。
「だから言っただろ?ネーニャのことを頼んだって」
ウルファスは笑って言う。
「そんな、笑えるようなことじゃないよ。まだちゃんと話も出来てないのに」
「そういえば、エル。君は家族を殺したあいつらを倒すって言ってたね」
「そんな話!また話せるよ!だから今は…!」
エルピオンの言葉を無視する形でウルファスは続ける。
「君ならやれるよ。エル強いもん。絶対倒せよ」
ウルファスは涙を零しながら精一杯の笑顔を見せる。
「お兄ちゃん…」
「ネーニャ。一人は寂しいかもしれないが、お前なら強い子になるよ。エルピオンたちについて行けよ。それじゃ、またな!」
ネーニャは抱きつこうと立ち上がるが、その前にウルファスは消えてしまう。手に掴んだのは彼のつけていた自身の名前が書かれたチェーンペンダントのみだった。
ネーニャはそのまま転び、大泣きをする。エルピオンの目にも大粒の涙が零れていく。自分の無力さと悲しみを胸に、自身は次の一歩を踏み出せるのであろうか。
◆❖◇◇❖◆
あの後、魔王が墓を立ててくれた。
「ネーニャ、本当にそれ持っていくの?」
ネールは鼻をスンスンさせながら頷く。
「お兄ちゃんの…大切にしなくちゃいけないから」
ネールはギュッとペンダントを握り締める。
「さて、そろそろ行くぞ。こいつのことは忘れろとは言わない。彼の屍をバネにして超えていくしかない」
魔王は悔しそうに目を瞑る。
「それと、少し聞きたいことがある」
「なんだ?」
「人狼は、なぜ狼に戻ると死んでしまうんだ?」
「そいつはな、やつら一族の定めみたいなものだ」
「定め?」
「そうさ、あいつら一族は太古より進化した一族さ。だから狼に戻らないようにしていたさ。だが、やつらが狼に戻ったしまったら、裏切りになるから死ぬのさ」
魔王は悲しそうに言う。
「そろそろ行こう。どうせあいつも暇してるだろうし」
「誰が暇してるのかな?」
調子に乗った男の声が言う。振り返ると、金髪の髪を靡かせてニコッと嘲笑うかのように笑う。
ここまで読んでくださりありがとう!
ウルファスが死んでしまいました。(ó﹏ò。)自分はこれを書いていた時、わかっていたのに泣いていました。やはり自分で作ったキャラクターだからなのでしょうか?
良かったら次回も読んで下さい。
 




