鬼族の誇り
お互いが譲らない、というかベルーラが圧倒的に有利な状況にグリアは眺めていることしかやることがない。砲撃用の機材はすべて壊れてしまいやれるのはこの牙を使って人を食い殺すことだけ。だがまだ人を自身の手で殺したことはない。
だが、いずれやらなければならない。戦場に来た以上、人を殺すことに躊躇していてはいけない。エルピオンもこの戦場のどこかで血を流しながら戦い続けている。
「しゃくらせ!!!!!!」
ハンスを殴り飛ばすベルーラの姿にグリアは目を丸くさせる。何度も攻撃を食らっているはずのハンスに敗北の言葉が見えない。しかもずっと笑い続けている。逆に恐ろしくなってくる。
「ここまでやられるのは久しぶりだな…。こっからは、本気で行かせてもらうぞ…!!!!」
ハンスは頭部から鬼のような角が生え、体の骨格が変わっているのがわかる。
「きみ、鬼族だったんだね」
「そうさ、鬼族と戦うのは初めてだろ?」
「いや、鬼みたいに強い人とは、何度か戦ったことがあるので別に…」
「そんなやつらと比べ物にならないほどの強さを今見せてやるよ!!!!!!」
強い殴り技にベルーラは顔をしかめる。先ほどまでの力が嘘だったような力強さにベルーラは後方に飛ぶ。続けた蹴り技に顔に入るがベルーラはあまり表情を変えない。
口の中が切れ、口の中にある血液を唾を飛ばすように吐く。ベルーラの表情が変わり殺意の持った目になるとベルーラは上段回し蹴りでハンスの顔面に入る。その衝撃は強力で顔面に上半分が切断される羽目になる。
『ーまじでか!!!!ー』
「てめぇ…!やりやがったな」
「鬼族がこのぐらいの攻撃で死ぬなんてしないからね。その代わり回復するのにかなり時間がかかる。だからその間に…頭部を破壊する」
ベルーラはグリアを呼び寄せる。グリアはベルーラの元に向かうと彼をつぶすように命令してくる。
「大丈夫だよ。虫を潰すのと同じだからさ」
抵抗をしているとハンスは目の回復が済んでいた。
「その巨体によって俺を殺そうと思ってるのかよ!!!」
「そのほうが早いし、簡単でしょ?」
「ふざけんな!!!!俺は鬼族の誇りをもって戦っているんだ!!!!お前には無いのかよ!!!!!」
「無いというより、守る人がいないからね…誇りなんて無いよ。ただ、家族を守りたい意思は誰よりも強いと思うよ!!!!!」
両者はお互いに殴り合いを始める。お互い強者同士、力は互角と考えてもいい。だが、ベルーラは少し余裕を持っているように見える。あの時彼を踏みつぶしていれば終わっていた戦い。今度は迷わないようにしなければならない。グリアにも守りたいものがいるのだから。
「これで終わりにする!!!」
「お前には、俺を殺せない!!!ベルーラ!お前が死ぬのだからな!!!!」
ハンスの蹴りをベルーラは避けるとハンスの顔面に入る。背中を地面につけると目の前が暗くなる。グリアは躊躇しない。このままハンスを踏みつぶす。
「ちょ…!!!待て!!!まt!!!!!」
ハンスは虫のようにグリアに踏み潰される。ベルーラの足元には赤い鮮血が足を汚す。虫を潰したかのような感覚にグリアは大仕事をした感じがしない。
「お疲れ様、よく頑張りました」
グリアはドラゴン特有の音を出す。すると勢いよく爆発音が戦場に鳴り響く。
「なにごと?!」
林に近い場所で黒煙が上がっている。何があったのかわからないがベルーラは確認に向かうことにする。その時にグリアはベルーラに自身の背中に乗るように仕草を見せる。
「乗せてくれるの?!ありがとう!!!!」
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