家族の絆
ジーナに殴り飛ばされたわんちゃんは茫然とし、今起こったことに理解できていない。
「おい!!聞いてるのかよ!!!!」
わんちゃんはジーナの瞳を見る。今自分が何をしているのかを思い出す。今は戦争中、戦争には私情を持ち込まないようにしていたが、ネイカのことになると我を忘れている。
「悪いジーナ、どうやら俺は寝ぼけてるみたいだな」
「じゃあ父さん呼んで頭かち割ってもらう?」
「それはやめろ、俺が死ぬ」
「確かに」
わんちゃんは落ち着きを取り戻し、バンと向き合う。彼は剣に手をかけるとわんちゃんとジーナは二手に分かれる。息の合った行動にバンは少し動揺を見せるがジーナの方へ刃を向ける。しかしジーナが向かった方向にはわんちゃんの姿がある。
「いつ入れ替わって…!!!!」
バンが驚いているとジーナが背後に回っている。そのことに気づきもう一本の剣で防ぐ。
「お前、俺ら二人で渡り合えると思うなよ」
「っ!!!!」
ジーナのことを注目していたバンはわんちゃんのことが眼中にない。片腕をわんちゃんに切り取られる。刃とともに大地に落ちる。
残った片腕で傷口を抑え、後退していく。出血がひどいがすぐに血液が止まる。切断された腕はうっすらと動き、剣を持ちわんちゃんに向かって飛んでいく。
「わんちゃんさん!!!!」
わんちゃんはエルピオンの声に反応し、体勢を低くしそれを避ける。バンの切断された腕はあっさりとくっ付く。
「再生…?」
「復活させたんだ。あいつにそんな力があるなんてな」
わんちゃんとジーナはバンを見つめ続ける。しかしエルピオンは何かが聞こえてくる。男の、助けを求める声。その声はどこかバンに似ている。遠く聞こえていた声は今では耳元に聞こえる。
『助けて…!出られないんだ!!!!俺はわんちゃん・アデルを恨んでない!!!!!』
エルピオンはバンを見ると黒い影のようなモノが溢れている。黒く、悍ましい不幸の色。何かに取り憑かれているのがわかる。直感で感じる。バンを殺してはいけない。
「わんちゃんさん!ジーナさん!!少し良いですか⁈」
「なんだ?何か考えがあるのか?」
二人はエルピオンを見つめる。エルピオンはバンから黒い影のようなオーラが見えることを伝える。
「そんなオーラが…!俺には全く見えないけど…」
「エルちゃんはすごい力持ってるんだね」
「ありがとうございます…!バンを助けるためにお二人で彼の気を引いてください」
「あとは…お前がなんとかしてくれるのか?」
「もちろんです!!!私ではお二人について行くのでやっとですから」
「まぁ、目に見えてるからな」
「そんな冷たい態度…!酷いです!!!!」
「母さん、エルちゃん泣かせないで」
「泣かせてないし…」
「うえ〜〜ん!」
「ほら泣いちゃった!!!」
「それ嘘泣きだろ…」
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