思い残しがない世界
ラルカの返答にエルピオンは目を丸くする。彼女はこの計画に対してなにも感じていない。
「そんなもの、いらないわ?エル、あなただっていつかは死ぬものなのよ?人は産まれて、そして老いに苦しみ枯葉の様に朽ちていく。そんな楽しみの無い人生やっていてなにがいいの?」
ラルカは苦笑しながら話していく。彼女には人生の楽しさを知らない。それはエルピオンも同じ。人に恨まれながら産まれて、誰からも祝福を受けずに育ってきた。エルピオンもできるのなら誰かに愛されて産まれたかった。
「だからね、誰も老いることのない化け物に変えてあげたの?あなたも願えば何も感じなくていいあのエイリアンになれる。あなたの願いは何?」
「私の願いは…」
エルピオンは思わず『愛されたい』と答えそうになる。しかしシュンサクの顔や仲間たちの顔。それとわんちゃんの顔が浮かんでくる。今、彼らと生きることが一番の楽しみになっている。
「私は……今すぐにあなたに死んでほしい」
エルピオンは最高の笑顔で答える。その返答にラルカは顔を歪ませる。完全にわんちゃんの仲間になっているため今何言っても彼の耳には入らない。
「そう、あなたが女神としての力が目覚めたから…味方につけようと思っていたのに…。残念ね」
ラルカは騎士長から剣を抜き取る。その剣はエルピオンの首元に突きつける。絶体絶命だと思うがエルピオンは笑ったまま。
「なに?それで私を殺そうと思ってるの?」
「あなたには失望したわ。女神が偽物の王に仕えるなんて、本当の王はここに居るのに」
「あなたこそ、いつまで王様になった気でいるの?あなたのやっていることはただの悪逆非道の国王だよ」
「それならわんちゃんも同じよ…!あの子は、あの子の目的は…人を消滅させること」
「それでも、私はわんちゃんさんについていく!もう決めた、それに…わんちゃんさんは人として殺す。あなたは人を人じゃなくして、永遠に生かしている。これがわんちゃんさんとあなたの違い」
「そんなもの、変わらないじゃない!どう殺そうが私たちの勝手なのだから!!!」
「人の命を、簡単に消そうとするな!!!!」
エルピオンは胸の思いを打ち明ける。今を生きるのは彼ら人間の生き方。赤の他人の勝手にはできない。
「そういえば、まだ私のアデルの力を見せていないね。私の力は呼び出し、まだ完璧じゃないけどある道具の力を利用して発動できるようにしてる」
「なんですって…⁈」
「とくと見な。お前が必死こいて欲しがった私のアデルの力、『呼び出し』をね」
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次回も楽しみに




