あの事件の前の話
これから語られるのは、ヘリが見たことを話すことになる。
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アーテルスが魔王になってから人間との争いが消え、リオン国との和平を結んだ。それを好まないものが一人居た。
「陛下!何故です!なぜ人間なんかと和平を結んだのだ!」
彼はマヌス、愛称マヌ。彼は魔王に仕える忠実な部下。だが、今回の彼は違うようだ。
「マヌ、そんなに大声を出すなよ」
魔王もこの時は軽く流していた。
「大声だって出したくなりますよ!陛下は人間共のことをよくお知りになってないから和平を結べるんです!人間はすぐに立場が逆転しようとすると、平気で他人を売るような奴らです!今すぐ和平を取り消してください!」
何度も叫ぶマヌスに魔王は相手にしていなかった。このことはあの事件が起こる半年前のこと。
それから彼はずっと同じことを魔王に言うようになって居た。「いつかでは遅い」や「今になって戻れなくなる」などと言うようになっていた。
そして、あれから何ヶ月かたち、彼はある行動に出た。それが魔王から力を奪い取ることだった。
魔王の力は先代から受け継がれる力であり、奪い取ることはできないはずだった。
「陛下、もう俺は耐えれません。先代魔王の力は俺が使う」
そう言うと、彼は陛下の魔王の力を奪い、姿を晦ました。魔族である我々は、全力でやつの行方を探した。だが、髪のひとつすら見つけることが叶わなかった。
その後、魔王は発作を起こした。心臓に根が生えたかのように赤い物がうにょうにょと出て、魔王を苦しめた。昔の諸説を調べた結果、魔王の力を奪われる、誤った使い方をした場合、心臓から出る根によって苦しめてその者の命を奪うとされている。我々には何も出来ない。諦めかけていたその時に、ある魍魎が魔王城にやって来た。
襲いかかる魔族に傷一つ付けずに魔王の元へやって来た。すると、我々に青い炎を見せて、魔王の体に吸収させた。
すると、たちまち発作が治まり、いつもの様子に戻った。
「今の炎は、魔王の力というやつだ。それを返しに来ただけだ。私には要らないものでな」
そう言ってきた。どういうことかと聞いてみると、
「この力は、ある男から貰ったやつでな。この炎のおかげで、私は本当の自分を思い出すことが出来た。だが、もうこれは必要の無いものでな。お前たちに返すんだよ。だが、この力は色々なところに散らばっているようでな。そう簡単に取り返せる代物では無い。そうだ、私の弟子をここに呼び込もう。そうだな?女にしよう。女の弟子をここに来させる。異論は無いな?」
我々は同意することした。今の我々には無力な者たち。彼に従うしかない。
それからして、同盟を結んだリオン国が消滅した。
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「との事です。お分かりになられましたか?」
「あのさ、少し聞いていい?」
「もちろんです」
「魔王の力を返しに来た魍魎の特徴を教えて欲しい」
エルピオンは震える手で聞く。
「狐お面をつけて、龍が渦巻いたような着物を来た魍魎だ」
エルピオンは嬉しさと驚きに感情が揺らめく。
「師匠だ、私の師匠だよ!それ…」
エルピオンはそっと吐き出すように話す。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
今回は昔話みたいな感じになりました。良かったら次回も読んでください。
もう少ししたら第一章が終わります。番外編として何かを作ろうと考えています。




