再会するために
この空間には自分たちしかいないと思うと恐怖が煽り立てられる。
「ルピ、戻ってきたのかな…?」
「あいつなら大丈夫だろ。ものすごい強いわんちゃんが居るんだからな」
するとラルカたちが出ていった場所から勢いよく扉が開かれる音がする。鎖で引きずられながら何かを話している。
「お前に魔王の力がないなんてさ、うんざりだぜ!!!」
「全くだ。両腕切り落とされただけすんでよかったな!」
「下顎切り落とされなかっただけ感謝しろよ!」
「もう砕けてるから話すのは難しいけどな!ほれ!!!お前は見張りだ!!!!」
投げられる一人の青年は身を守るようにうずくまる。両腕が無く、頭を抑えようとしても何も掴めない。奴らがいなくなると彼は立ち上がる。腕から滴る鮮血は止まることを知らない。
「お前は…」
彼は檻の中にいるアーテルスを見ると酷く慌てた仕草を見せる。蝋燭の灯りで顔が見えるとそれがマヌスだとわかる。
「お前…!マヌスか⁈」
「あ…あが…」
マヌスは下顎の骨が砕けているためにうまく声が出せない。マヌスは魔力を使ってテレパシーで話すことにする。
『アーテルス様…声が聞こえていますか?』
「お前、魔力で」
『はい、直接脳内に届けています』
「マヌス、お前はあのラルカに仕えているのか?」
『自分がお仕えているのはテル様だけです』
「ならなんであの女と一緒にいる⁈お前はテルさんを裏切って魔王の力を奪ったじゃないか!」
ヘルガは怒りをマヌスにぶつけるがアーテルスに止められる。
『あの時、テル様の魔王の力を奪いました。それはリオン国にいるある少女を助けたかったからです』
「少女?」
『あの子は、人から迫害を受け続けている僕を、助けてくれた子なんです。その子は食事すら与えてくれない環境で、お兄さんからもらった飴玉を、譲ってくれた優しい子です。だけど、あなたの力を奪った後、リオン国は崩壊をしました…。なので僕は魔王の力を返そうと帰ろうとした時に…あの女に捕まりました』
「ラルカにか⁈」
『そうです。あの女の拷問の末、僕の体にあった魔王の力が取られてしまい、あの女によって多くの魔族や魍魎、別に種族に渡ってしまいました。唯一残った魔王の力を使って逃げました。そこで、みなさんと出会いました』
「あの時か⁈」
『その時に、えーちゃんもいて、ほっとしました』
「ちょっと待て!お前の言っているあの子って…エルのことか⁈」
シュンサクは戸惑った声を出すが、マヌスは静かに頷く。
「そうだったのか…」
「でも待ってください!エルは彼のことを覚えていませんでしたよ⁈」
「それが、あいつの忘れてしまった記憶なんだよ。記憶の改ざんか?」
「ルピ…記憶戻ったのかな?」
『えーちゃんは強い人です。きっと大丈夫です。あなた方をあの世界に流した後、世界の王の住んでいる洞穴に向かい、願いました。えーちゃんを守ってもらうように』
すると上から扉が開く音がなる。警戒をしているとラルカがもう一度やってくる。
「どうしたの?そんなに警戒して。でも最終的にあんたたちは人柱になってもらうわ。だけど、一人だけ死んでいる人がいるから、今から処刑するわね」
ここまで読んでくださりありがとうございます!!
次回も楽しみに




