真実の鏡
周りが蝋燭で照らされているだけの部屋にやって来ると中央に鏡が置いてある。神物のように置かれている鏡にエルピオンは中に入る。
「これが、真実の鏡なんですか?」
「見えるのなら、そうだよ」
「えっ?どう言う意味ですか?」
「その鏡は真実を知りたいと願う者にしか姿を表さない摩訶不思議な鏡さ。実際に言うと、俺にはただの部屋にしか見えていない」
『俺も同じさ。それよりエデル、お前もついてくるのか?』
武器の姿でいるエデルだが、すぐに武器の姿を解いてジームの元に行く。
「え、なんで?」
「真実の鏡は酷い光の力を使います。悪ければ、自分は浄化されてしまうので」
「そうなんだ…」
エルピオンは鏡を見つめ続ける。大きく深呼吸をして、鏡に触れる準備が整う。
『行くか?』
「うん、ジームさん、エデル。行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
「お気をつけて」
エルピオンは鏡に触れると吸い込まれる感覚がある。意識が遠のき、気を失う。長い時間眠っている感覚になりながら、エルピオンは目を覚ます。その場所はたくさんの鏡がある場所。前も後ろも自分が映っているために、今の自分ですら、本物なのか分からない。しかし一つの鏡だけわんちゃんが映っている。
「ーいつ人の姿になったんだろう?ー」
その鏡に映るわんちゃんはエルピオンに言葉を伝えてくる。
「まやかしに騙されるな…。目に映る物が全てだと思うな」
一瞬わんちゃんの言っていることがよく分からなかったが、気を確かに持とうと思える。一回深呼吸をすると周りにある鏡は無くなっている。あるのは目の前にある鏡だけ。その鏡には悪魔のような姿をしたエルピオン。一度睨んでくるが、恐れる物ではないと思える。エルピオンは鏡に触れる勢いよく割れ、わんちゃんの腕が伸びてくる。それを掴むとわんちゃんの焦った声が耳に入って来る。
「おい!!!起きろ!!!エル!!!!!!」
「はっ!!!!」
目を覚ますとわんちゃんの姿が目に入る。焦っている様子のわんちゃんだが、目を開けたエルピオンに安堵の表情をする。
「よかった…お前なかなか目を覚さないから、真実の鏡に魂だけ取られたかと思ったよ…」
「すみません、でも…ありがとうございます」
「あれ?俺何かしたか?」
「私に教えてくれたじゃないですか。『まやかしに騙されるな』って。おかげで戻って来れたんです」
「それはたぶん……まぁいいか。先を急ぐぞ。周りがずっと真っ暗なんだよ」
わんちゃんはドラゴンの姿になり、エルピオンの頭の上に乗る。すると奥の方で誰かの話し声が聞こえる。エルピオンはその方向に足を進める。自分が忘れてしまった記憶を取り戻すための冒険のように歩みを進める。
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