神を裏切る者
物陰に隠れたエルピオンはじっと息を潜める。人が通り過ぎるのを待って移動する。
「わんちゃんさん、ありがとうございます」
『お前、あんな馬鹿馬鹿しい言葉に騙されてるんじゃねぇーぞ』
「ごめんなさい。だけどあの部屋の匂いが甘ったるくて…」
『確かにそうだな。たぶん幻覚剤なのか、洗脳薬だろうな。俺の鼻が曲がりそうだよ…!』
わんちゃんの仕草にエルピオンは少しだけにやけてしまう。
「でも、これからどうしよう!!このまま逃げてもいずれ捕まっちゃうよ!」
『どうしようにも、この場所から脱出しないと』
「この地面から飛ぶの?」
『いや、無理だ!地面が途切れて居る場所から結界が張られている!外に出るのは無理だ!』
「じゃあどうするの⁈」
「いた!!!あそこに居るよ!!!」
アカネの声に後ろを振り向くと矢がエルピオンの左腕に突き刺さる。バランスを崩すエルピオンだが、体制を立て直して左腕を庇いながら走り出す。何本も矢が飛んでくるが、なんとか物陰に隠れる。しかし追い詰められたエルピオンたち。ほとんど反応がないエデルを使うわけにもいかず、どうするかを考えてしまう。
「ごめんなさい。足を引っ張りました」
「腕を見せろ…!一旦応急処置だけはしておく」
わんちゃんは人の姿に戻り矢を抜き、自身の服を破り止血をしてくれる。またドラゴンに戻り、エルピオンの頭に乗る。次第に追い詰められるエルピオンたち。ゆっくり、ゆっくりと歩み寄ってくる足音に覚悟を決めるしかない。
「エル、出てきて。大丈夫だよ、もう辛いことなんてないからさ」
「そうやって甘い声で誘ってもダメだよ!どうせ殺そうとして居るのは分かってるから!!!」
エルピオンの声にアカネは舌打ちをする。初めからエルピオンを殺すつもりのアカネは銃撃隊を構えさせる。
「こうなるのは分かってた。だからあなたを殺して、無理矢理にでも長にさせる!!!」
アカネは合図を出そうとするとどこからか白い煙が出ている弾が投げられる。辺りを見回しているとその弾が弾け、白い煙が辺り一面を白くさせる。
「これは…!!!」
「なんだこの匂い!!!」
「目が染みる…!!!」
銃撃隊は煙幕の煙にやられ咳き込むものや目を抑える人でパニック状態になる。
「大変だーーーー!!!ガルデロットだ!!ガルデロットが出たぞ!!!!」
男の声で騒ぎ始める天空人にエルピオン自身もパニックになる。
「ガルデロット…?」
『神の裏切り者…。元信者のことですね…』
「エデル起きてたの⁈」
『いつから寝ていると思っていたのですか?』
エルピオンが驚いているとエルピオンの腕を誰かが掴む。顔を向けると藁で全身を隠すようにしている見知らぬ人が立っている。それはエルピオンを引っ張ると一気に走り出す。風邪を切るように、しかし周りの景色がスローモーションのようになっているだけの感じしかない。
それに連れられて、壁までやってくるとそれは壁に手を触れる。眩い光を放ちながら煉瓦の隙間に光が宿るように光ると、一気に動きだす。中に入ると一気に閉まってしまう。奥に進むとそれは辺りを見回す。
「ここまでこれば、大丈夫だな」
男の声でそういうと、被り物を脱ぐ。取り外しができるようになっているようで、一瞬驚くが、出てきた顔は黒髪の超絶イケメンが出てくる。
「きみ、どうして生きているのに、ここにいるんだ」
ここまで読んでくださりありがとうございます!!
次回も楽しみに
 




