天空人
景色の変わらない真っ白な空間。地上とは少し違う風景。植物もなければ魔獣もいない。そしてふわふわとした地面に、違和感しか感じない。
「違和感しかないんだけど…」
先を急ぐエルピオンだが、エデルが追いついていないのがわかる。彼からは大量の汗が吹き出して居るのがわかる。いつも済ました顔をしているエデルとは全くの別人だと感じてしまう。
「エデル、武器化できる?」
「はい…」
エデルは瞬時に武器の姿になるとエルピオンはそれを持って腰につける。
「このままでいて、私が持って行くから」
『申し訳ありません…』
『エル、お前は大丈夫なのか?』
「うん、エデルよりはマシだよ」
エルピオンは先を急ぎながら、もこもこした地面を歩く。向かう先に朽ち果てている廃墟が見えてくる。苔なども生えていないが、誰も住んでいないのが見るだけで分かる。
「この屋敷、なんだろう?」
『これ…!アスラさんの家だ!!』
「アスラさんの⁈」
エルピオンは見つめていると背後から気配が感じる。振り返ると真っ白な衣を着た娘が居る。金髪に近い髪色をして居るが、白味がかかっているため金髪とは言えない。
「もしかして、エルピオン・ガーネルス?」
「なんで…私の名前を…」
彼女は喜びで涙をこぼし出す。その瞬間エルピオンに飛びかかり、彼女を抱きしめる。
「よかった…!!生きていたんだね!!!」
「えっ⁈どう言うこと?????」
突然抱きついた少女は自身の名をアカネと言う。この場所は天空人が暮らす都市だという。
「そう、エルちゃんはその鏡に引き摺り込まれたんだね」
「それと、私の名前をどうして知ってるの?」
「あなたのことは、大巫女様がいつもお話しするの。『あなたは新たな私たちの長になるのだ』って。そうだ!こんなところで話して居る場合じゃない!大巫女様に伝えに行かないと」
「あ…!でも私…!帰らないと」
「大丈夫だよ!きっと大巫女様がなんとかしてくれるから!!!!」
アカネはエルピオンを連れてどこかに急ぐ。腕を引かれるエルピオンは一瞬だけ何かを思い出す。ボロボロの、男性の手に強い力で引かれながら、抵抗をしている自分の記憶。だけど、どこか鮮明な記憶。
◆❖◇◇❖◆
たどり着いたエルピオンたちは大きな城門にやって来る。警備して居る人たちにアカネは何かを話し、入れてもらえるようになる。
「ほら、入って!大巫女様に会えるよ」
中に入ると真っ赤なカーペットが敷かれた部屋に通じて居る。その道を歩くとすだれによって姿を隠している人の場所にやってくる。周りには敬を見せる人達がいる。
「大巫女様、エルピオンを連れてきました」
「よくやりました、アカネ。下がりなさい」
「はい」
アカネは頭を下げるとどこかに行ってしまう。するとすだれが開き、大巫女は姿を見せる。純白の髪色で、気品に溢れるその姿と優しい瞳に胸が高鳴る。
「ようこそいらっしゃいました。私はネーリ、天空人であり大巫女です」
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次回も楽しみに




