思念体
転送したエルピオンたちは馬車を置いた場所にやってくる。
「ここって…」
『馬車を置いた場所だ。お金を使わなくてよかっただろ?』
「確かにな」
「それじゃあリオン国に行こう!」
エデルは馬の姿になり、馬車を引いて行く。遠ざかって行くカルデロン国をエルピオンは見つめて行く。わんちゃんはドラゴンの姿でエルピオンの頭に乗る。
『また会える。安心しろ』
「そうじゃないの。もしも、この鏡のことがわかれば…私という存在もわかる。そうなるとあの人たちにも迷惑になるのではと思ってしまうの」
『あいつらは強いから狙われたとしても返り討ちにあうだけだ』
「そうだといいね。私たちは先を進むだけ」
リオン国に向かう道中、辺りが暗くなってくる。休憩としてハルルカのテントで眠ることにする。ベッドで眠るエルピオンだが、誰かに呼ばれる声に起き上がる。しかしその者は何処にもいない。外からは月夜の光が入り込んでくる。しかしそこにはいるはずの無い人の影ができている。
思わずエルピオンは起き上がるとその影は扉から外に出て行く。エルピオンも外に出ると階段を降りる音を立てる。それを追いかけながら外に出るとその影は月夜の光に照らされて姿を見せる。
「お前は…!」
「久しぶりだね、えーちゃん。いや、エルと呼んだほうがいいかな?」
その場に居たのはマヌス本人、しかし何処か薄く感じる。
「マヌス…どう言うつもり…!私に姿を見せてくるなんて…!!!」
「…ッ!覚えてないか…」
「???」
マヌスの言葉がよくわからないエルピオンは短剣を取り出す。エルピオンが敵意を持っていることにマヌスは絶望する表情に変わる。するとエルピオンとマヌスの間にわんちゃんが中立のように立つ。
「わんちゃんさん!」
「エル、落ち着け」
「こいつは…!この出来事の元凶なんです!」
「ここで体力を使うな。こいつは思念体だ」
「思念…体」
「そう、だから攻撃するだけ無駄なんだよ」
わんちゃんは横目でマヌスを見ると彼は一礼をする。
「お前、本体は何処にいる」
「本体は…今は言えません。だけどこれだけは言わせてください。エルを…えーちゃんを…!どうか」
「わかってるよ。それをお前の願いとして持っておくよ。だから…死ぬんじゃないぞ!!!」
「はい」
マヌスは感謝をするように笑顔になると腹を抑えて消え失せる。その姿にわんちゃんは苦しそうに顔を顰める。しかし一瞬にしてエルピオンの気配が変わり瞬時にわんちゃんは壁を張る。
「おや、防がれましたね」
「お前、アルデモンか…?」
「お久しぶりですね、わんちゃん!」
ここまで読んでくださりありがとうございます!!
次回も楽しみに
 




