仲間の絆
部屋から心配をしている声が聞こえてくる。ライガたちはすぐに入らないと言うため、エルピオンとハルルカはゆっくり扉を開ける。
「た、ただいま…」
恐る恐るやってくるエルピオンだが彼女の姿を見るとシュンサクは不機嫌な表情をする。
「エル、俺が怒っている理由はわかってるよな?」
「う、うん…」
「シュンさん、ちゃんと帰ってきたからそこまで怒らないでください」
「そうだな、これ以上は怒らない。だけど次はちゃんと言ってから出かけてくれ。心配なんだよ」
「うん、でも勝手に居なくなったのは師匠もだからね」
「そういえばそうだな」
「でもよかったね、無事で何よりだよ」
ジーナはホッとした表情をする。エルピオンの後ろからエデルもやって来てわんちゃんは安心する。しかしネールとウルファスは音を聞き分けるように耳を動かす。
「ルピ、誰か連れて来てるよね…?」
「え…」
「さっきから嗅いだ事のない人の匂いがする。誰を連れてきた…!」
「えっと、それは」
「確かにそれは俺も思っている」
わんちゃんはエデルを見つめる。エデルはそっぽ向くと違和感しかないことに気がつく。目を合わせようとしないエデルに睨みを効かせる。しかし廊下で物が割れる音がする。
「おばあちゃんかな?」
「え?」
「おばあちゃんさっき、薬草取りに林に行ったの。多分薬を作っていんじゃない?」
「てことは…」
「ちょうど目が合ってしまったのですね」
「そう言うこと。ごめんね私たちのこと隠そうとしてくれたのに」
アルタはそっと姿を見せるとわんちゃんと目が合う。アルタは嬉しそうに少しはねる。
「あ、アル…タ…?」
「そうだよ!わんちゃんくん久しぶり!!!!」
アルタは人の間を掻い潜ってわんちゃんに抱きつく。その後からリュウドラメンバーが姿を見せる。そのことにアスラはつまんでいた軽食を落とす。あの時死んでしまったと思っていたリュウドラが復活していることに理解ができないでいる。
「お久しぶりですアスラさん。お元気そうでよかったです」
アルネはアスラに言うとわんちゃんはアルタをどかして廊下に出る。廊下に居るナルネスを慰めているライガの姿に声が出したくても出せなくなる。わんちゃんの姿を見たライガはナルネスを剥がし、愛おしそうにわんちゃんを見つめる。
「ライ…ライ…ガ…!お、おで…!!」
何かを伝えたくても涙でうまく声を作れない。涙を止めたくても何度も溢れる。もう乾いて出ないと思っていた涙が、あの戦争で乾き切った涙は、今でも溢れて出てくる。ライガはそっとその大きな体でわんちゃんを抱きしめる。
「俺はお前を泣かせたいから帰って来たんじゃないんだよ。お前と、もう一度やり直したいから帰って来たのに…こんなに泣かれたら抱きしめるしかできないじゃん」
わんちゃんは声にならない声を上げる。死なせてしまったリュウドラ。自身の手で全滅させてしまった家族のように大切な仲間。自らの手で切断してしまった絆。また復元できるなら戻したいこの絆。もう、なにを伝えればいいのかわからない。
ここまで読んでくださりありがとうございます!!
次回も楽しみに




