アンドロイド
翌日の朝、部屋から出てきたヘルズとサンデスはどこか距離が近くなっていた。ヘルズは口癖のように『お婿にいけない…』と嘆いている。その二日後にエルピオンは目を覚ます。
「私って、そんなに眠っていたんだ…」
「起きないから心配したんだよルピ」
エルピオンに膝枕をしてもらい、眠ろうとしているネールだが、肉を焼く匂いに反応する。
「美味しそうな匂い!!!!」
「外からだな…それよりわんちゃんどこだよ…」
わんちゃんはエルピオンが目覚める前にどこかへ散歩に出掛けている。しかしこの香ばしい肉の匂いに勝てずに全員の腹の虫は泣きわめく。
「外に行こう…」
外に出ると街では屋台を出しながら祭りを行おうとしている。
「なんだこれ…?」
「ネーシアを倒した祝勝会だって」
骨付き肉を食べるわんちゃんはそう伝えてくる。空腹で理性を保てないエルピオンはわんちゃんが持っている骨付き肉に釘付け。その目線にわんちゃんは笑い出し分けてくれる。
「そんなに物欲しそうな目で見られたら誰だってあげたくなるよ」
「そんな風に見えてた?」
「うん、ほら冷めないうちに」
エルピオンは肉を受け取るとその肉に齧り付く。肉本来の脂身にエルピオンは目を輝かせる。
「ウッっっっっま!!!!!!!」
「だろ?」
部屋から出てきたアーテルスは切断された足を見つめる。ネーシアに引きちぎられたはずなのに、その形跡が跡形となく綺麗になっている。
「意外と綺麗になってるでしょ?」
アーテルスの背後からサルトは姿を見せる。しかし彼にとって気がかりなことがある。
「それと、前から気になっていたけど…この街に人たち、本当に生きてる人なのか?」
そのことにサルトはにっこり笑う。
「ここで生きている人は、私たちと城にいるごく一部の人だけ。みんな、データで生きている人たち。言わばアンドロイド」
「あんたが作ったのか?」
「違うよ、馬鹿とも言えるガリ勉で、私たちのためにたくさんのことを犠牲にして作ってくれた優しいやつだよ」
「ここにいるすべての人を、一人でですか?」
「そうよ。本当に、そんなに犠牲にしなくてもよかったのに」
サルトはどこか遠くを見つめる。風に乗って大きな鷹が通り過ぎて行く。それに手を伸ばすように、見送るように優しい顔をする。愛おしいその者に送るように。
「あの、その人って…」
「私たちの昔の仲間。ジームくんの理解者で、彼の片腕。それなのに、私を守るために命を落とした。私の医療技術は、未来に必要だからって。こんな私を守って…たくさんのアンドロイドを作ってさ」
サルトの目にはうっすらと涙が浮かんでいる。ここまで優しい人が流す涙は辛く感じる。
「なに、うちのサルト泣かせてるのかな?」
背後からアイグが脅すように声を掛けてくる。アーテルスは弁解をしようと必死だが、彼の持った斧を見た瞬間逃走を図る。サルトはやめさせようと後を追いかけるが、二人のスピードには追いつけない。
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次回も楽しみに




