男になるために男を捨てる
一日ずっと眠っていたサンデスとヘルズはサルトに男に戻る方法を聞きに行った。
「魔法の影響で女になったけど、元に戻れない…。だけどヘルズくんは魔力を持っていない」
「魔法をかけたやつは死んでる。これは魔法なのか?」
サンデスのコートを羽織ったままのヘルズはサルトに聞きまくる。しかし彼女からは頭を傾げるだけ。
「もしかして、ヘルズ元に戻れない⁈」
「それ、魔法では無いのかもしれないね」
「魔法じゃない…」
「ならなんだというの?」
「呪いよ」
「「呪い⁈」」
「そう、この世の中になる前、『呪い』と呼ばれる力を持った者たちがいるの。私もその一人。元々私も男だった」
「え…」
「なに?意外?」
「いや、元々男なのに、女らしい振る舞いできるんですね…」
二人は思わず苦笑いをしてしまう。サルトは少しばかり怒りを見せる。
「初めはかなり苦労したよ。間違えて男便所に入ったことあるから」
「俺も、今さっきやりました…」
「僕が、ちょうどいたからよかったのに…。男のシンボルないのに、探していたよね」
「寝ぼけてるんだよ…!」
「話戻すけど、その『呪い』を持った異能力者は、自身の身を削る代わりにその力を発動できるの。だけど、人より早くに亡くなる。そんな人たちが居たの。私もあまり聞いたことなかったけど、女体化させる人は初めて」
「男体化はあるの?」
「性別転換はある。だけどもうその人はいない」
「でも、一応俺には呪いって言われるものなんだろ?薬とかないんですか?」
「一時的に戻す方法はあるけど、効果は数時間程度ね」
「てことは、薬は無いってことですか…」
「うん、だけど戻る方法はある」
その言葉にヘルズは喜びを見せる。サンデスは少し残念そうにする。
「その方法を教えてください!!!」
「あるんだけど、ヘルズくんが絶対に嫌がることなんだよね…」
「俺が嫌がるですか?」
「それでもいい?」
「訊くだけ聞きます…!!!!」
そして聞かされたのが、男の性を受け入れること。どこのエロ本の知識なのだろうか。サルトはそのことで男に戻ることができたそう。今女の姿しているのはサルトという男は死んだことにしているらしい。
「まさか、こうなるなんて………………」
「そんなに落ち込まないで!男の性を受け入れるだけじゃん!!!」
「それ、俺に男を捨てろと言っているんだぞ…」
「ただ処女喪失するだけだよ」
「童貞の非処女ですか⁈ふざけんな!!!!!」
よほどショックなのか顔を上げられない。世の中に絶望をしている素振りにサンデスはかける言葉がない。しかしヘルズは突然立ち上がる。どこかに行こうとするヘルズを思わず止める。
「どこに行くつもり…?」
「俺のことを知らない奴らのところに行く。それなら誰も構わずに抱いてくれる」
「外はダメ、梅毒に侵されたらどうするの…!」
「サンデスって、そういうの詳しいよな。いつでも女を抱けるようになるためか?」
「そうじゃないよ」
「俺は、ずっと気掛かりなところがある。お前は、どうして俺を助けた。なんで貴族の身分を捨てたんだ…⁈」
サンデスはとある伯爵家のご子息。それなりの裕福で、次期伯爵の名前を持てるぐらいになっていた。しかし研究所からヘルズを救い、伯爵の息子を辞めた。今ではその家族はみんな死んでいる。そこまでしてサンデスは自分の未来を崩してヘルズと共に生きると考えたのだろう。
「僕はヘルズと一緒に生きていたいんだ。貴族子供なんてめんどいもん!」
サンデスは嬉しそうにするが、ヘルズを俵かつぎをするとベッドに連れて行く。理解ができずにヘルズは固まる。
「ぼくさ、意外と怒っているんだよね?ヘルズは僕のものなのに、別の男のところに行くなんて…。こんなにも愛しているのに」
サンデスはそっと頬を撫でる。しかしヘルズには嫌な予感しかない。
「サ、サンデス…?」
「かわいい声で泣いてね♡」
「ちょ!!!!」
この日、ヘルズは男を捨てる羽目になった。
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次回も楽しみに




