少しの休息
ネーシアの遺体をわんちゃんに任せたエルピオンたちだが、疲れが出たのかみんな部屋に入ると倒れるように眠ってしまった。戻ってきたわんちゃんが呆れるほど早く。その後、目を覚ましたのは二日後の朝だった。
「まさか、そんなに寝ていたなんて…」
先に目を覚ましたシュンサクはボサボサになった髪を整える。それを見つめるわんちゃんは吹き出しそうになりながらもくすくす笑っている。
「そうなんだよね…!ぐふっ!!!!」
「笑いすぎだろ…」
「すまない、悪気は無いんだ」
しかしわんちゃんは笑いを堪えきれずかすかに揺れている。どこが面白いのかわからないが、シュンサクはため息のような声を漏らす。その後にアーテルスとヘルガは目を覚ます。ひどい癖毛にアホ毛のようになっているアーテルスは整えるために風呂場に向かう。
「お風呂行く?」
「だけど、こいつらを置いて行くのは…」
「私が見ていてあげるから、行ってきな」
ナルネスは隣の部屋を宿として泊まっているため、シュンサクたちの声が聞こえていたよう。ナルネスに任せてシュンサクたちも風呂に向かう。
◆❖◇◇❖◆
「やっぱりここの風呂は最高だ〜〜〜〜」
本音が漏れるシュンサクは身体の疲れを温泉で洗い流す。
「俺も温泉に入るのは久しぶりだけど、懐かしく感じるよ」
お酒を飲みながら湯船に浸かるわんちゃんを見てシュンサクもお酒が飲みたくなる。しかし湯船に入りながら酒を飲んでいたらそのまま酔い潰れてしまい介護されたことを思い出し飲まないことにする。
「シュン、よかったら一緒に飲まないか?」
「いや、昔に飲み過ぎて酔い潰れた時があるからやめておく」
「少しぐらいなら大丈夫さ、酔い潰れたら介護ぐらいしてやる」
「それが嫌なんだが…」
「それなら自分が」
そっとやってきたヘルガはわんちゃんからお酒をもらう。ほっこりするお酒の味に日々の疲れが一気に抜ける。
「あ、美味しい…」
「アスラさんからもらったんだよね。このお酒はかなり美味しいやつだから」
「そうなんだ…」
「……。それより今思い出したが」
アホ毛を治してきたアーテルスは湯船に入ると、あることを思い出す。
「わんちゃんさんは、エルたちと女子風呂入っていたけど、なんとも思わないのか?」
そのことを思い出しシュンサクは異様なオーラを放つ。怒りとも思えるそのオーラにわんちゃんは言葉を失う。
「いや…俺、女に発情しないんだよね。これと言って女に興味無いし」
「その言い方だと、男には発情するのか?」
「さぁ?どうでしょうか?」
にっこり笑うわんちゃんにシュンサクたちは自身の身を守ることを考える。先に湯船を出るシュンサクは自身の服は無く、浴衣しかないことに気がつく。土で汚れていたため水洗いしようと考えていたが、誰かに持ち去られたことになる。廊下に出るとサルトが汚れた服を持って小走りで走って行くのが見える。彼女なりの気遣いにシュンサクは感謝しかない。
ここまで読んでくださりありがとうございます!!
ここでわんちゃんについての補足。わんちゃんはアデルの一族でありゼルネアスの息子です。わんちゃんは人の姿をしておりますが、魔獣で大型ドラゴンです。そのドラゴンは成長するにつれ、性転換があります。見た目は産まれた性のままですが、メスの子宮を持ったり、女だけど、男のシンボルが生えたりします。そのためどちらでもあるのです。ゼルネアスも同じようにドラゴンですが、性転換でメスになりわんちゃんを産んでいます。父親のことは名前だけ出てきていますので、探して見てください。
次回も楽しみに




