悪の王と光の王
ゼルネアスの姿を見たネーシアは本当にまずいことだとわかる。わんちゃんのアデルの一族の呼び出し。これ以上ない危険信号。
「本当にまずいな…!」
ぐったりしているエルピオンを必死にナルネスとサルトは回復薬を使って治癒を施す。
「魔法薬が足りない…!」
「もう少し数を持ってこれればよかったわね。気が利かなくてごめんなさいサルト」
「気にしないで」
すると薬草が入った薬箱が二人の前に置かれる。持ってきてくれたのがセルテ本人。
「こいつ使え、ライガが持っていた薬箱だ」
「あんたが、持っていたんだね」
「あいつが渡してきたんだよ。もしものためってな」
ナルネスは薬箱をもらい、中に入っている薬草で薬を作って行く。ぐったりしているエルピオンに液体にして飲ませていく。眠ったままのエルピオンだが、うっすらと目を開ける。遠目でわんちゃんを見つめる。
「オラァ!!!!」
ミリアの剣を軽々避けるわんちゃんはエルピオンの前にやってくる。
「エル、エデル借りるぞ」
「はい…」
エルピオンが目を覚ましていることにナルネスは安堵する。わんちゃんはエデルを呼ぶとエデルは武器化する。ミリアと剣を重ね合わせると衝撃で吹き飛びそうになる。
「わんちゃん!!!」
ゼルネアスと目が合うわんちゃんはミリアを引き剥がす。腹に蹴りが入り、後方に吹き飛ぶミリアだが口から血が出る。水のように溢れる血液に違和感しかない。
「おもしれぇな…?もっとやろうぜ!!!!」
トップスピードに乗るミリアだが、上空から来るトライデントがミリアの腹部に突き刺さる。心臓が内部から弾き出され先端に突き刺さっている。
「どうなっているんだ…てかこれは…?」
理解できていないミリア。しかしわんちゃんじたいもわかっていない。これはわんちゃんの攻撃ではない。ましてや味方の攻撃でも無い。あのトライデントに見覚えが無い。
「あれは…まさかマヌス様…?どうして」
ゼルネアスの拘束を引き剥がすネーシアはミリアの元へ走る。しかし彼の体に斬撃が入り、四肢が切断される。理解ができないネーシアは空に向かい叫ぶ。怨念を込めた、言霊を使う。
「なぜです…!!!僕は貴方様もために闘っているのに!!!!答えてください!!!“答えろ”!!」
「答えてあげる」
上空から姿を見せるマヌスにネーシアに答える。ミリアのからトライデントを引き抜くとミリアの体が崩壊して行く。ネーシアにマヌスは優しく恨みのこもった言葉を投げかける。
「お前は、殺してはいけないものを殺そうとしたからだ」
マヌスの怒りもこもったその目にネーシアは絶望する。忠誠を誓ったその人によって、殺される運命に世界を恨む。こうなるのなら初めからマヌスに忠誠を誓わなかった。だが、これも自分の運命だと感じると嫌な気はしない。かれは、世界を変える唯一の男だとかんじているから。
首が体を離れる感覚に少しだけ幸せだったと言える。欲しかった魔力を使うことができたのだから。仲間を殺したマヌスにわんちゃんは訊く。
「きみは、何を望んでいる…。自分に忠誠を誓った者を殺して、血に濡れた体で、玉座に座るつもりか?」
「僕には、何も無い。ただ、未来を変えること、世界を変えられるのは、どの時代でもアデルのみだから」
マヌスはトライデントを回収すると姿を消す。砂となって消えたミリアは、風に乗って消える。死んだネーシアは後で埋葬を考える。
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次回も楽しみに




