追いかけたい者
爆発音と共に火花散る闘いに息を吸うのすら忘れてしまう。エデルとミリアは一度離れるがすぐに剣を重ね合わせる。
「こんなの、俺らいるのかな…?」
「それわかる…」
衝撃波と共に離れたエデルはエルピオンたちの元にやってくる。酷い息切れをするエデルだがミリアは疲れている様子がない。
「エデル…!大丈夫なの⁈」
「こいつは、エル様と闘わせる訳にはいきません!!!もう二度と闘えなくなる可能性があります。やつは気に入らない奴はみんな殺した奴だから」
「でもこんなに強いのにどうやって空中監獄に入ったの⁈」
「気になるか?お前になら教えてやってもいいぜ、どうせ死ぬだろうがな」
ミリアは顔にできた古傷をなぞる。遠い昔、ミリアが唯一負けた相手、同じ魔族でありながら、人のように優しい心を持った魔族の中の王族。だが、誰一人として認めなかった、いや認められなかった強き者。彼が魔王になるのなら俺はその人に忠誠を誓う。しかし奴らは認めなかった。人間に汚された、王族としての自覚がないと罵倒し、やつの弟と共に魔界を追放された。しかしやつが出て行く際、ミリアは空中監獄に幽閉された。死ぬまでこのまま。
しかしもう一度闘いたい。そいつと、そいつに殺されてもいい、そう思いながら空中監獄を脱獄、武器となれる悪魔を探し続けた。奴に負けない、強き武器。しかし契約の際に起きる力比べ、それに耐えきれなければ相手は破裂し消滅。それを何回も繰り返してきた、それに唯一耐え切ったのはエデルのみ。しかしエデルはすぐに魔界から旅立ち、姿を消した。奴と戦うにはエデルの力が必須。
だが、ミリアは魔界の者たちに捕まり、もう一度空中監獄の囚人となってしまった。
「そして魔界は機能を持てずに荒廃した世界となった。その時にマヌスがやってきて俺に生きるチャンスをくれたと言うわけさ!」
「お前が探している魔族って誰のこと⁈」
「そんなもん、教える気ねぇーよ」
残像を残しミリアはエルピオンの前に現れる。瞬時のことに体が動かない。このまま行くと確実に殺される。逃げろと脳に信号が届くが体が動こうとしない。彼の持つ剣が首元までやってくる。死を覚悟するが、フォンの鳴き声が聞こえる。エルピオンの前に出ると光り輝くフラッシュのような光で視界を包む。
目眩しのような光に目が眩み、ミリアは動きを止める。光が消えるとミリアの体が少しだけ朽ちている。
「この光は…!神の力か」
しかし朽ちている身体は徐々に回復していく。このチャンスを逃していけないと直感で体が動く。先ほどまで動かなかった体が嘘のように感じる。いつもより動きやすい。
「いよっと!!!」
エルピオンは短剣でミリアの肩に斬り込みを入れる。重症まで行かないが、回復が遅くなればと考える。
「首を狙わないなんて、お子ちゃまだな!!!!!!」
顔を殴られるエルピオンだが、ミリアは違和感を感じる。当たる感触がない。柔らかいマシュマロのような感触が無い。あるのは硬い壁を殴ったような痛みだけ。
「どうした?痛いだろ?バリアを殴った感触は!!!」
エルピオンの顔の前には何重にも重なったバリアが張られている。いつ張ったのだろうか感がてくる。しかし記憶にある。このようにバリアを張り顔に殴られるのを回避した者。あの時の魔族。
ここまで読んでくださりありがとうございます!!
次回も楽しみに




