国王の手紙
翌朝、エルピオンたちは王宮に向かって歩き出す。シュンサクたちを城の前に待たせてエルピオンだけ花に入る。しかし王宮につくとジーナがいないらしい。
「え!ジーナさんいないんですか?!」
国王だ色であるシルバスのところに案内されたエルピオンは声を荒げる。大量の書類とにらめっこをしているシルバスは申し訳なさそうにする。
「そうなんだよね、ごめん。でもあの峠に行きたいんだよね。ならこれ」
シルバスが渡してきたのはジーナの名前が書かれたこの国の模様が印された手紙。しかし中身が入っていない。
「これ、中身が」
「そう、入ってないよ。どうせ中を見て確認取らないから見せるだけで中に入れてくれるはずだよ」
シルバスはそっと笑って見せる。しかし城に入った時にシルバスのことを国王代理だといわれている。彼はジーナとはどういう関係なのだろうかと考えてしまう。
「エル、どうかしたかな?」
「あの、つかぬ事をお聞きしますが、シルバスさんはジーナさんの何なのですか?」
エルピオンの意外な言葉にシルバスは大うけする。ツボに入ったのかシルバスは笑いが止まらなくなる。その反応にエルピオンは困り果てる。
「いや、ごめんwwwww…あぁ、だめだ」
「すみません、なんか聞いたらまずいことですか?」
「そういうわけではないんだよね、だけどほとんど聞かれないんだよね。だからそのことを聞いてくる君に馬鹿みたいにうけちゃって」
「なんかごめんなさい」
「別に悪いわけじゃないんだよ。だけど一応聞かれたから答えるよ。俺はジーナの嫁だよ」
「えっ?!」
「なんてね、冗談だよ。ただの相棒だよ。あの戦場を生き抜いたただの相棒さ」
からかうように笑うシルバスにエルピオンは顔をゆがませる。
「あなた冗談を言うような人ではないでしょ」
「それアスラさんにも言われる~」
「というわけでこの手紙もらっていきますね。ありがとうございます」
「それと、エル!」
帰ろうとするエルピオンを呼び止めるようにシルバスは声を上げる。その表情はひどく恐れているようにも感じる。
「きみから嫌な気配がする。今の君は天秤に上に乗っているような感じだ。注意しろ、その天秤はどちらに傾くかわからないからね」
「そんなの大袈裟ですよ」
にっこり笑うエルピオンの後姿は戦場に向かうジーナそっくり。脳裏にあの戦争のことがトラウマのごとく感じる。あの戦争で、ジーナは瀕死の重傷を負った。頭部は潰れ、脳をきれいに戻せないといわれている。しかしその時にわんちゃんがやってきた。己の体が崩壊している姿でジーナより重傷で。
『シルバス、ジーナの脳は完ぺきに治せない。お前のことを覚えていない可能性が大だ。それでもいいか?』
『お前ならジーナを救えるんだろ!なんでもいいからやれよ!!!』
『それと、ジーナには俺のことを話すな。絶対な』
『はぁ?それどういう意味…』
わんちゃんは自分の中にある神の力をジーナに託した。そのおかげでジーナは一命をとりとめている。彼女のあの姿も、それと似ている。
「なぁ、わんちゃん。もしもお前がまだ生きているなら、ジーナのようにするなよ。大バカ者」
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