王の目覚め
彼の表情にアスラは持っているお猪口を落としてしまう。
「そんな…!ありえない!本当にわんちゃんくんなのか?」
「ここまで来て偽物だと思うの?」
笑って見せるわんちゃんにアスラは抱き着きに行く。実態のある感触に涙が止まらなくなる。愛しい存在の彼が生きてこの場所にいることにこれが夢でもおかしくないと思ってしまう。
「長いこと待たせてごめんなさい。すぐに助けに行けなくて、本当にごめんなさい」
「謝るな、久しぶりの再会だ。今日はとことん飲もう!」
アスラはわんちゃんを座らせると盃を持たせる。シュンサクが持ってきた酒を注ぐと一気に飲み干す。ほっとするような顔で頬を緩ませるわんちゃんは生きていることを実感する。
「やっぱり酒はうまいな~」
「そいつはよかったな。それより、いつから居たんだ?」
シュンサクは疑問の持った声でわんちゃんに訊く。注がれた酒を飲み干しこそっと声を出す。
「今さっきだよ。俺が目覚めたのはエルピオンが自身がアデルの一族だと目を覚ました時だ」
「アデルの?それって夜桜国の時...。その時にはもういたのか?!」
「そういうことになるね。俺はダンという青年の体で目を覚ました」
「ダンの、てことはダンがよく眠ってしまうのは...君のせいなのか」
「そうだね。しかしマルジリック国では俺の中に蓄積された光の力を発動させたために、魂と体が引き剥がされてしまう事態となってしまった。そのためこの国なら、光の力を蓄積するのにもってこいだと思った。そのため君たちについていくことにした」
「ちょっと待ってくれ!ということは...!お前は!!!!!!」
「そう!お前の嫌いな、キツネちゃんだよ!!!!」
くすくす笑うわんちゃんにアーテルスは嫌がりを見せる。その態度にアスラは大笑いを見せる。
「そうだったんだね。面白い話を聞けたよ」
「そういえば、ジーナくんにも伝えないと。きっとすぐに来るね」
「サルトさん!それだけはダメ」
「どうして...?わんちゃんはジーナくんには会いたくないの?」
サルトの表情を見てわんちゃんは申し訳なさそうに声を出す。
「あいつには、まだ知られたくない。ジーナはすごい奴だから、今だけ忘れていてほしいんだ。あいつの元に戻るのは、リュウドラ全員集まっている時がいいから」
わんちゃんは酒を注ぎゆっくりと飲んでいく。
「わかった。言わないでおく、だけど必ずこの場所に帰ってきてね。また昔みたいにバカ騒ぎしようよ」
「うん、わかってる。でも心配なのは明日。最後の鏡の破片がある場所」
「鏡の破片?」
「あの場所には、不吉なものがいる。俺もできる限りのことはするけど、とても嫌な感じがある」
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