晩酌
マッサージが終わり、シュンサクはイキイキとして戻っていく。その反対にエルピオンとアーテルスはぐったりしている。
「テルもこういうこと慣れてないんだね…」
「そうだな、しかしここのマッサージ師は遠慮を知らないのかよ…」
「そういえば、お兄ちゃんや他のみんなは?」
「先に部屋に戻ったよ。ヘルズは顔を真っ赤にして戻ったけど…」
「師匠のせいだね…」
シュンサクの高音はどうやら女に聞こえるみたい。よく思い出してみると夜遅くに裏路地で男と女が抱き合っている時の女の声にも似ているような気がする。
部屋に戻り、布団を敷くとみんなで団になって眠る。うまく寝付けないシュンサクは一人起きると晩酌用としてお酒を取り出す。良い景色を探そうと部屋を出ると中庭に人がいるのを見つける。チャンスだと思い、その場所に向かう。
その場所にはアスラが一人でにお猪口に注ぎながらちまちま呑んでいる。義足らしい足に目を取られる。シュンサクがいることに気がつくとアスラは手招きをしてシュンサクを誘導する。
「となり失礼」
「そんなのどうでもいいよ。そのお酒も飲んでいい?」
「どうぞ、晩酌用としてもらった酒なので」
「ラッキー!いただきます」
からになったお猪口にシュンサクの酒を注ぐ。一気に飲み干すアスラはホッとした表情をする。
「これもこれでいいものだね」
お酒の味に染み渡るアスラだが、シュンサクは彼の足が気になってしまう。
「この足、気になる?」
「すみません…。ガン見していました」
「いいんだよ。この足は戦争で無くなって、今は義足で歩いてるんだよね。重い甲冑着ている気分だよ」
笑い話のように言うアスラだが、すぐに表情は暗くなる。彼の瞳は申し訳なさが感じられる。
「だけど、本音はひどく辛かった…。死んでしまおうかと思うほどに。この足では、誰かと競いながら走ることはできない」
「あれ?別の人がいる〜」
奥からつまみやら酒を持ってくる陽気な男。その後ろをサルトとアイグがやってくる。
「よかった、多めにつまみ持って来ておいて」
「そういえば、彼の紹介がまだだったね、こいつはアイア。俺の弟だ」
「アイアと言います!」
「シュンサクです。よろしく」
「あれ?もう一人来たみたいだね」
サルトたちとは別方向からアーテルスがやって来る。少し気まずそうにしているが、来るように言うとゆっくりやって来る。
「お前も眠れないのか?よかったら一緒に飲まないか?」
「飲んでもいいなら…」
シュンサクの横に座らせるとお猪口を渡し、お酒を注ぐ。色と香りに警戒をしながらお酒を飲み干す。お酒が強いのか顔が赤くなる。
「初めて飲むが、うまい。頭がくらくらする…」
「お酒飲むの初めて?」
「そうだな、やっと成人したから飲むことができるよ」
アーテルスの意外な発言にシュンサクは目を丸くさせる。
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