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戦争の傷

 ジーナは自己紹介するとエルピオンは真顔で頷いてしまう。


「あれ?なにかおかしい?」


「いや、なんで生きてるのだろうかと思ったから」


「ジーナくんは長寿のドラゴンでね、見た目があまり変わらずに過ごすことができるんだよね」


「そうなんですね…」


「ところで、城を置いてここにきてどうするのさ。今頃探し回ってない?」


「ん?どうせここに来ているのわかってるから気にしなくていいですよ」


 ジーナはあっけらかんとした顔で言うが、玄関の方から物音がする。足音が近づいてくると扉を勢いよく開かれる。姿を見せたのは銀髪の赤い瞳をした好青年。少し怒っているようにも見える。


「ジーナ…勝手に向け出すなと…あれほど言ったのに…!」


「あれ?シルバスさん?」


「今手が空いているのが俺だけだから来たのに…!帰るぞ」


「ヤダッと言ったら?」


 シルバスは何も言わずにトンカチを取り出しジーナの脳天を殴る。ほとんど殺す勢いの振りかぶり方にエルピオンは息を飲む。


「あの…これは」


「ご安心ください。死にはしません。どうせ不死身なのでいずれ目を覚まします」


 ジーナを担ぎ上げ、シルバスは玄関に向かう。玄関で真っ白な山犬のような姿になると玄関までやってきたエルピオンに一礼すると城に向かって走り出す。


「今のは…?」


「彼はスパンクストと言う生き物なんだよね。昔から生きている生き物で、ほとんど人前には出てこないんだよね。それでなのか、姿を見たら幸福が訪れると言われているんだ」


「そうなんですか…」


「そろそろご飯できるから、食べてね」


「はい」


 ◆❖◇◇❖◆


 夕食を食べ終え、エルピオンたちは温泉に向かう。夜も遅くなり、エルピオンたちが入る時は人もいない状態。


「ネーたちの貸切みたい〜〜〜〜!」


「ネーニャちゃん、走ると危ないですよ」


 温泉に入るネールは暖かい温度にとろけそうになる。変わった匂いのするお湯にエルピオンは不信感がある。


「暖かいですね。落ち着きます…」


「そうだね。ところで、フォン私たちとでよかったの?男たちとの方が気楽だと思うけど」


『キュ〜〜〜〜』


 何を話したいのかわからないが、頭を撫でて置く。しかしここまで楽に居られるのはなんだかおかしな感じがする。今まで猛獣に襲われそうになりながら野宿をしていた。半分野宿ではないけど。


「一緒に入っても良い?」


「え?」


 エルピオンが顔を上げると、目の前にサルトが立っている。美しい見た目に見惚れて言葉を返すのを忘れてしまう。


「あ、どうぞ」


「ご飯美味しかった?」


「はい!すごく美味しかったです」


「特にお肉!!ネー故郷思い出した!!」


「うふふ、それもそうだろうね。あれは魔獣の肉だから、今朝狩って来たばっかりのやつだから」


「え、今朝…ですか?」


「そうよ、この旅館は肉類は全て狩に出て持って来てるやつだからね」


 サルトは髪を束ねると肩に火傷の跡ができている。それをガン見してしまうエルピオンの目線にサルトは勲章の証のように撫で始める。


「これ、戦争でできた傷なの。ひどい傷でしょ?アイグが守ってくれなかったら、顔までも大火傷していたと思うの」


「それって…」


「アイグの背中は大火傷で酷い痕になっているの。でもアスラ様よりはまだマシ、あの人は、両足が無いの。今は義足でわからないようにしているけど、あの人の足を見るたび、ひどく人間を恨む。わんちゃんたちが命からがら守ってくれたのに」


 サルトは苦しそうに恨んだ目をしながら言う。その姿にエルピオンは今の記憶にある魔族によって滅ばされた自分の出身国を思い出す。あの時と同じ気持ちなのだろう。誰かを憎み、争いを起こし、亡くなった人からまた新たな憎しみが生まれる。この負の連鎖がいつ止まるのだろうかと考える。

ここまで読んでくださりありがとうございます!!

次回も楽しみに

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