小塔の生贄
彼に呼ばれたエルピオンは前に出る。
「色々聞きたいことあるよね。今なら君の質問に答えるよ」
「あなたは…ライガ…さんですよね?」
「そうだよ。ライガ・アデル。俺も君と同じアデルの人間だよ」
「どうして騙したのですか?」
「どうして…そうだね、俺らはあいつに負担をかけなくなかったんだよ」
「あいつって…リーダーの」
「そう、あいつはわんちゃん・アデル。俺にとって大事なやつさ」
「この塔はどこにあるんですか?」
「炎の国さ、海に面している国。今はどんな国なのかわかんないけどな」
「どうしたら解放できますか?」
「わからないよ。てかお前は俺を解放しようと思っているのか?」
そのことになぜそう思ったのかわからない。ナルネスの涙を見たからとは言えない。だけど、彼らの助けがいるような気がする。
「はい。無理でしょうか?」
「無理だと言ってないだろ?だけど、かなりきついと思うぞ」
「なんとかして見せます」
「他に聞きたいことはあるか?」
「特にないです。今は」
「そうか。なら俺からも質問させてくれ。俺らが死んで、戦争はどうなったんだ⁈」
「神々の逆鱗を止めることは出来ました。しかし、人間との戦争は起きました」
「ん?なんかおかしくないか?」
「どういうことですか?」
「俺らは、人間を倒すために戦争をしていたんだぞ?」
「あれ?」
「もしかして、ラルカさんがそう言ったのか?」
「はい」
「あの人の話を間に間に受けたんだな。道理でおかしい訳だ」
「どういうことですか⁈」
「ラルカは、俺らを騙している。あいつは死んだのか?」
「死んだというより、迎えが来て、行ってしまいました」
「そういうことだな。これだけは言わせてくれ。彼女は敵だ!出来たらあの女を殺せ!!」
「えっ⁈それってどういうことなんですか⁈」
あの優しい人が敵だとは考えられない。しかし彼の目にも嘘偽りのない瞳をしている。
「今はまだ判断できないかもしれないが、必ず真実がある!お前が信じる道を進め。俺の言葉を信じるかは、考えてくれ」
ライガはそれだけ言うと意識が遠のく。その時に聞きたいことがあったが、その言葉は彼には届かない。目を覚ましたエルピオンは布団の中にいる。妙に生々しい夢。誰が敷いてくれたのだろうかと思うがものすごい胸騒ぎがあるのだけわかる。
扉を開けようと手を伸ばすと左腕が黒くなっているのがわかる。
「何これ…!闇の力が暴走しているの⁈」
エルピオンは慌てて鏡を探す。顔を写すとひび割れのような跡ができている。何度も辛い経験するのは自分だけ。この力をどうにかしなければならないのに。今の現状に悲しさがある。
「なんで、私ばっかり…!」
ナルネスの時も毒物を飲み込んだのは自分。夜桜国で重傷を負ったのは自分だけ。いや、あれは一人で勝手に行ったからそうなっただけ。アグリート国では色々酷い目にあった。もう辛い思いはしたくない。あの時のように。
「あれ?あの時って…なんだっけ?」
ここまで読んでくださりありがとうございます!!
次回も楽しみに




