鏡に記された言葉
アスラの背後にいる霊体のような者。エルピオンはその人と目が合うと一瞬だけその人の記憶が見える。見かけない景色、大きく広い大地、頬を撫でるような優しい風。このままずっといたいような幸福感。
しかしそれはすぐに地獄と変わる。壁一面に赤い鮮血がついた場所。所々に体毛が付着している。人の絶叫する声。耳を塞ぎたくなるような甲高い金属の音。檻の中から見える肉にされて行く人々の姿。その肉は血肉となり、王族はそれを帆張って行く。
絶望と恐怖を煽り立ててくる。しかし、連れ出された彼は四肢の骨を砕かれ、燃え盛る火の中に放り込まれる。その人から恨みの怨念が感じられる。
意識が戻ると幼い少年に手を差し伸ばされる姿。声は聞こえないが、『おいで』と言っているように感じる。その子はどこかアスラに似ているような気がした。
「エル、大丈夫?」
背後から、ハルルカから声をかけられ意識を取り戻す。ハルルカに感謝をしなければならない。彼女が声をかけてくれなければ、いまだに戻れなかっただろう。
「うん、大丈夫」
笑いを見せるともう一度その人と目を合わせる。そのことに驚いているとアスラは不気味にも笑顔を見せる。その不気味さにドン引きしているとついには笑い出す。突然にことでその場にいる全員が変人だと思う。
「みんなしてそんな顔しないでよ。でもエルちゃん、きみは本当に面白い。見えるんでしょ?こいつが」
アスラが指差すとその者の姿は見えるようになる。そのことによりアーテルスは警戒を見せる。
「そいつは…神だな…!」
「魔王アーテルス、警戒をしないでくれ。君たちを祓えるほど力は持っていない」
「だからと言って、すぐに警戒を解くことはできない」
「だよね〜だけど、彼は僕の友人だから。ね?」
そのように言うが、アーテルスとヘルガは警戒をしたまま。神だと言われるその人はエルピオンを見つめる。その美しい瞳の下に憎悪を隠せていない。
「エルピオン・ガーネルス…だね。君は一度…死を経験していないか?」
「死?わからないけど、そうかもしれない」
死のようなものを味わったとしたらネーゲロンと戦った時。その時から何かが変わったような気がする。エデルの出現。アデルの一族。そして、このキツネ。エルピオンを中心として動かなかった歯車が動き出したような気がする。もう二度と止まれない歯車。誰かを求めているようなこの気持ち。
「この鏡は、『ある人』の出現を記した物。その者はある国を消滅させるほどの強大な力を発動させ、多くの命を奪ったとされている。その者は闇の力を操り、アデルの血が動き出したと記されている」
「アデルの血?それって…?」
「煉獄の炎のように、赤い髪をしている…エルピオン。君のことが記されている…!」
ここまで読んでくださりありがとうございます!!
次回も楽しみに




