見下げてはいけない者
魔法道具でエルピオンたちを見つめるマニュルは大笑いを始める。
「馬鹿め!!そのまま死ぬがいい」
「死ぬのはどちらでしょうか?」
物音もせずにやってくる真っ白な衣を羽織ったもの。その異様な気配に悪寒が過ぎる。
「貴様、何者だ?どうやってここまできた」
「普通に入っただけさ、気にするのではない」
その者のただならぬ強者感に寒気すら感じる。しかし考えれば考えるほど違和感しかない。この宮殿は今は自分しかいない。国王の家臣は全て殺した。そうなると彼が家臣のはずはない。そうなるとどうやって扉を開けずに入ってこれるか。扉は固く閉じいている上に、鍵も閉めてある。そうなってくると彼が本当に生きている人なのか疑いたくなる。
「そこで止まれ、私はこの国の次期国王だぞ!!」
そういうと彼は止まり小刻みに震える。マニュルはその姿に苦笑する。この者は国王に勝てるわけないと実感しているのだろう。上面だけだが、国王とはなんと利用しやすい言葉なのだろうか。
「国王??貴様のような弱者が????」
煽るような口調のその者は面布を剥がし始める。その顔を見た瞬間顔が青ざめていく。その者を見下げることを許されない人。見下げた場合、死を迎えなければならない。
「あ、貴方様は…!!!」
腰を抜かすマニュルは椅子から転げ落ちる。
「ようやく思い出したか?だが、お前は重罪を犯しすぎた。死を持って償いなさい」
赤黒い触手が生み出され、口が開いた瞬間マニュルを一口で呑み込む。口の中で動き続けるが次第に動きが止まりマジック・コアが破壊する。所有者が亡くなると壊れるようになっているらしい。彼は振り返り無残に殺されたこの城の使用人を見つめる。
「少しの間、目を覚ませられないけど…見過ごすことはできないよね?」
彼は自らの体に魔法陣を作り出し光の粒子を生み出す。それを雨のように降らし死んでしまった使用人にかけていく。
「癒しの涙」
◆❖◇◇❖◆
返り血を大量にかかったエルピオンたちだが、突然魔物の姿が消え去る。
「一体どう言うこと??」
「生み出している本体がやられたのだろう、早く中へ!!!」
国王は急いで王宮の中に向かう。エルピオンたちもその後を追いかける。中ではメチャクチャになった建物や調度品。王宮らしい持ち物が散乱している。
「ひどい有様だね…」
「この状態って…」
「ここで働いている人は…死んでる可能性があるな…」
シュンサクは壁に血液がついた状態で残されている。しかしこの王宮からは死者の独特の臭いが駄々寄ってこない。このぐらい血液があるのなら一人ぐらいこの場所にいてもおかしくない。エルピオンは国王を追いかけるために奥に向かう。すると国王の泣き叫ぶ声が聞こえてくる。それと同時に他の人々の声も聞こえてくる。
エルピオンはそちらへ向かうと使用人たちは国王に抱きしめられている。しかも全ての人々が生きていると感じる。ではあの壁に付着していた血液は一体なんだと言うのか。
「えっと…」
「おぉ!!エルピオン殿!この王宮に住む人々が全て無事であった!!なんと言う奇跡なのだろうか!!!!」
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次回も楽しみに




