騎士王大会
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騎士たちの行進が終わり、いよいよヘルズとの大会が目前と迫っていた。民の声援はやがて観戦のようになって行く。
「騎士王様〜!必ず勝ってください!」
ヘルズは声は出さずに、手を軽く振って声援に答える。その仕草に、民は大喜び。中には黄色声援をあげる者もいる。
会場に着くと、鍛え抜かれた男たちがわんさかいる。だが、そんな事関係ない。自分はただ倒すのみ。この国のために、名誉の為に。
馬から降り、体の鎧を外していく。この大会はいつも身軽な服装にしてから行う。そして、軽く瞑想をする。脳裏に横切ったのはあの男。旧リオン国から来た魔王を倒すと言うあの男。ヘルズは昔にやつに負けたことがある。やつの仲間をバカにした兵士にかなり怒っていた。あの時、なんと言っていたのかはよく覚えてない。
だが、今はそんなことはいい。今は目の前の敵を何とかしなければ。
ヘルズは瞑想を止め、剣だけ持って舞台に上がる。今回は強者揃いとか言っていたが、ヘルズからしては赤子同然。全て蹴散らすだけ。
『それでは、騎士王様のご準備が整いましたので、これより始めさせてもらいます。騎士王大会、開始です!』
マイク越しで女性が開始を促す。その合図にぞろぞろと鍛え抜かれた戦士たちが乗り込んで行く。
初めに仕掛けたのは大きな斧を持った2m程の大男。ヘルズはあっさり交し、舞台から突き落とす。半月刀を持った巨乳女性は転ばせて突き落とす。
彼は剣を使わずに、次々脱落者を出していく。エルピオンはグルテスが使っているテントに入り、ヘルズの姿を見ている。
「あの男、やるな」
「君でもそう思うのかね?」
「まぁ〜ね。でも、倒せない敵じゃない」
エルピオンは不敵に笑う。
◆❖◇◇❖◆
時間が経つと、全ての戦士たちが倒され、屍のように動かない者もいる。その者達をズルズルと兵士たちが連れ去っていく。
「もうそろそろ時間だよ。武器はいい?」
「それもそうだね」
ハルルカがそう言うと、エルピオンは上の服を少しだけ脱ぐ。その姿にヘルズはビクッと反応する。
そして、やはり服の下に刃が剥き出しの状態の短剣がわんさか出てくる。
「持っているのはこれだけでいいか」
持ったのは赤い刀身の短剣。それだけを服の中にしまい、舞台に向かう。
『お次に登場するのは、組織の代表者ーエルピオン・ガーネルスーなんと、あの火山龍を倒した強者です』
その事を聞いた民はザワザワとうるさくなる。
「ほぉ〜。やつではなく君なんだね」
「よろしくね」
「エル、頑張って」
エルピオンに近寄り、ハルルカは応援していることを伝える。その姿に一人の兵士が笑う。
「そこの魔道士、あの男のパーティーにいた、弱虫魔道士じゃないか!」
その言い方に、エルピオンの眉間がピクリと動く。
「確かあいつの仲間、魔王軍に全滅されたって話だったが、お前だけ尻尾巻いて逃げてきたのかよ!意気地無しの雑魚魔道士が!」
その言い方に、ブチッとエルピオンの中にあるものがキレる。そして、炎を生み出そうとした瞬間、その男の真横に、落雷が発生する。
その男が驚いていると、バチバチと雷を起こすサンデスがいる。
「うるっせぇーよ。兵士ならば口を慎め弱味噌。お前の方が雑魚だろうが」
冷たい目線でその男に言うサンデスに、ヘルズは軽く怒る。
「やりすぎだぞ」
「ごめんよ。さ、続けていいよ。俺、こいつ連れて行くからさ」
「え?」
「行くぞ…」
彼は恐ろしい顔をしてその者の首根っこを掴んで連れて行く。その様子に、エルピオンは炎を力を弱める。
「ルカ、後であいつにお礼言わないとね」
ルカは小さく頷く。
『そ、それでは、まずエルンガーナ国にお住まいのお貴族様、ガルネリア一家の皆様です!』
姿を見せた無精髭を生やした男と、ほっそりとした女性。その間に、顔に絆創膏が貼ってある見た事のある顔。
その男がエルピオンに目を向けると、「あー!」と声を上げる。
「お前!あの時はよくもやってくれたな!父上!あいつですよ!私たちが倒した火山龍を横取りして、挙句の果てに、俺の奴隷を連れ去った女ですよ!」
その事に民はどよめき始める。
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