ニュリアとウルベルト
ウルベルトが優しくいうと、辺り一面にラビリンスが咲き誇る。突然の状況に理解ができないハルルカたちは口が開いたっきり閉じなくなっている。
「ベルトさん、もしかしてあなたは…」
「ニュリア…だね」
「そうだよ。ウルベルトは仮の姿。シュンには悪いことしていると思っているよ」
ウルベルト改め、ニュリアはこの姿になる前の頃を話し始める。
◆❖◇◇❖◆
妖精族の次期国王として生まれたニュリアは何の不自由なく育てられてきた。欲しいものは何でも手に入ってしまい、その簡単に手に入ることに不満を抱きながら育ってきた。お付き合いする人ですら簡単に手に入ってしまい、妖精族の住処から飛び出してしまう。右も左も分からないまま歩き回っていううちに荒廃した大地にやってくる。
「ここは…」
自分達が暮らしているような住処があったような気がするが、全滅している。しかしほとんどが焼かれて死亡している。何のためにこのような争いをしているのだろう。
「みんな、死んでいる。こんなに小さい子供まで…」
焼け焦げた子供は微かに呼吸をしている。しかし、今の自分には何もできない。このまま見捨てることしかできない。焦げ臭い匂いが充満する中、物音が聞こえてくる。焦げた大木に下敷きにされた皮膚が爛れた青年が抜け出そうとしている。
「クソが…!!!人間め、許さねぇ…!!絶対に殺してやる!!!俺らの大将を………!!!!!」
彼はまだ動けるようだが、時期に死がやってくると見える。周りに獣の気配が感じる。このまま退散するべきだが、彼に少しだけ興味が湧く。
「あの…」
「あぁん!!……?お前は…ニュリアか?」
「どうして僕の名前を⁈」
「覚えていないのか?僕だよ。ウルベルトだよ」
先ほどまで怒り狂っていたウルベルトだが、急に大人しくなり焦りを覚える。
「ウルべ…。あ!!!一度だけやってきた民族だね!!」
「思い出してくれたか…よかった」
「嫌かもしれないけど、この場所で何があったの?」
ウルベルトはこの場所に起きたことを話す。突然人間たちが襲ってきたこと、長が魍魎となり人間を滅ぼしに向かったこと、全て見たことを話す。
「そうだったんだね」
「たぶん、我に戻った時に顔見知りがいないとあいつも心細いと思うんだ。ニュリア、俺の頼みを聞けるなら、俺の姿に化けてあいつを励ましてくれ。お前からして、もう大丈夫だと思ったら元の姿に戻ってくれ。わがままなお願いだとわかっている。少しだけでいい。お願いだ」
「わかった。少しだけお前の姿になっている」
ウルベルトはその言葉を聞くと安心したかのように眠った。瓦礫をどかしてみると、彼の下半身はどこにもない。生きていたのが不思議なぐらいであった。
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その話を聞いたハルルカたちは言葉が出なくなる。
「ニュリアさんは、そうやって生きてきたんですね。シュンサクさん、どう思っていたんでしょうね??」
「彼はきっと気づいていたと思います。それよりこの花を持って急いで向かいましょう!!もう時期夜明けです!!!」
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